No.64『地域振興と観光産業のかかわりについて 2013』5月号
【TPP】
TPPリスクの代表格として、日本の農業は、後継者難も含めて国際競争力がないから自由競争に晒されると負けてしまうときく。が、これは大方の消費者にとっては産地エゴにしか映らないようだ。なぜならば、安全で新鮮な食材が安く買えるのならば、生活防衛の観点からみて、それに越した事はないからである。浮いたお金は食料以外の製品やサービスの購入に充てられ日本経済の一部として還流し、先進国中最も高く、米国の倍だとも云われる日本のエンゲル係数も下がる事になるだろう。
だが、貿易とは相互補完による国対国の商いであり、自国に有る物を売り、無い物を買うのが大原則である。そこを敢えて農業に多大なダメージを負わせてまでして進めるというのであれば、一体何を売れば犠牲と引き合うのかが焦点となってこなければならない。はたしてそれは医療機器なのかiPSなのか、あるいはMRJか、車か。(No.60正月号参照)
しかしそれが20世紀同様、未だ工業製品しか選択肢がないとすれば問題だ。なぜならば必然的に加盟国間の競合では、物価の高い国ほど人件費とエナジーコストの分、不利になってくるからである。これは行き過ぎた技術移転のおかげで、大方の工業製品は何処の国でも製造できるようになったからでもあるのだが、こうなると白物家電や薄型テレビ、ソーラーパネルのように、これからのハードウェアが必ずしも日本製でなければならない理由は、何処の国にも見つからないと云える。 技術革新も、必ずしも日本の専売特許ではない。
つまりTPPの参加に際しては、何処の国にも真似のできない別次元にある、外貨獲得商品を用意する必要があるという事である。
これが日本文化そのものを観光コンテンツとする、インバウンド産業の勃興が待たれる所以だ。日本の小規模農業にしても、地産地消の希少価値を以って、ここに活路の一つが有るに違いない。 何しろはるばる日本の食文化を求めて訪れたインバウンドに、自国産の農産物を食べさせる訳にはいかないからである。
【日本の世界文化遺産はまだ若い】(4/15夕刊三重 掲載の全長版)
1950年(昭和25年)に焼失、その五年後に再建された『金閣寺』は、それ自体国宝ではない。しかしUNESCOは世界文化遺産『古都京都の文化財』の構成資産として、世界文化遺産に登録した。
そういえば、1998年に復原された『朱雀門』や2010年に復原された『第一次大極殿』のある『平城宮跡』も、『古都奈良の文化財』の構成資産だ。国宝指定にはない。
では、先日開館10周年目を迎えた『松阪市文化財センター』に在る『船型埴輪』はどうだろうか。国宝を目差す国重文ならば世界遺産にも相応しいのではないか。
だが、結論から申せば駄目なようである。何故ならば、世界文化遺産は移動ができないものに限られているからだ。全長4.6フィートの『船型埴輪』をもってしても、これ単体では不可能なのである。
ならば、これが出土した『宝塚古墳』ごとならばどうだろう。国史跡の指定が1932年(昭和7年)だから資格は充分だ。追加指定も合わせると、 26767.4平方メートルはある。
それでも、街なかだから反対意見も多いだろうか。
されど、未だ日本では5世紀初頭、1600年前の国史跡は一件も世界文化遺産登録がない。最古のもので1300年前の平城宮跡である。
だから、1992年から始まった我が国の世界文化遺産を、世界史の視点から客観視してみると、まるでそれ以前の日本が文化不毛の未開の地のように見える。古事記を知る外国人も殆どない。
世界遺産登録最大の原動力は、官民一体の熱意であるという。手をこまねいていると、いずれ他所の同種史跡が世界文化遺産になる。そしてUNESCOは、一国同種の登録は歓迎しないともいう。
ならば国宝指定の期待も上がる『船型埴輪』だが、ここはもう一つ、日本の為にも欲を出してみてはどうかと思う。
【三本目の矢】
手っ取り早い観光振興策として、テーマパークや遊園地を誘致するのが流行った時期があった。 しかし人工的な観光コンテンツというものは、資本さえ許せば何処にでも建てる事ができるので類似性が強く、流行り廃りもある。飽きられない様にする為には常に変化も必要だ。
だが観光の価値観は、グローバル化の波と共に上陸した世界遺産の価値観以来大きく変わった。 本物志向、つまり住民にとっての何気ない日常世 界も、都会や外国に暮らす者にとっては非日常的世界足り得る、観光資源になるという事である。 これは目から鱗のパラダイムシフトだったと云える。
だからといって没個性では駄目だ。他所には真似のできない本物のコンテンツを訪ねてもらう必要がある。これ即ち町の光を観る、観光客の指向性である。
この点において松阪は、戦災による消失を免れたおかげもあり、神社仏閣も含め、本物の文化力の多くが残っている。問題は、それが余りにも日常的過ぎて、そうは感じさせない事にある。たとえば本居宣長記念館にある国重文467種の中には、 古事記伝も含めて幾つも国宝クラスが当然のように収蔵されているだろうし、文化財センターにある巨大船型埴輪が出た宝塚古墳は、堺市と藤井寺市、羽曳野市が目指している古墳群世界文化遺産よりも更に1世紀ほど古いものでもある。
しかし、この意識が市民にあるかどうかは疑わしい。何故だろうか。
それは、人間を人間たらしめるものは教育と文化であるとの認識が足りなかったからだ。観光客はそれを観にくるのである。
ならば今からでも遅くはない。子どもたちの未来の知情意と地域経済を育む為にも、忙しい中間世代をも巻き込んで、今から意識付けする必要があると思う。これが、文化観光による外貨獲得地域経済を提唱する所以である。
そうすれば地銀はここに投資先を見いだすだろうし、更に国家規模の外貨獲得政策になれば世界の投資家たちも安心するだろう。何故ならば、TPPが北米主導の南米振興策でもある以上、国際観光こそ、先進国中唯一我が国だけが手つかずだった国の経済の柱の一つからである。
だが、いまだに古い観光客の概念に捉らわれた、しょぼい意見も耳にする。観光は単なる余暇活動であり、旅の恥もかき捨てとばかりに、喧騒、横暴、ポイ捨てをもたらす云々などである。 はたして今どきそんなマナーの悪い客がいるのだろうか。もしそうならば高速道路は空き缶だらけ、駅や空港も毎日酷いありさまだろう。だがそうではない。当然クリンリネスも行き届いているが、今は衣食足りて礼節を知る21世紀日本だからである。
話がマクロに触れたが、世界の中の日本、日本の中の紀伊半島、紀伊半島の中の三重県、三重県の中の歴史回廊松阪を意識する事は、自らの立ち位置を知る為にも重要である。同時に、常に世界市場を意識していくという事もである。その為には大きな風呂敷を広げる事が必要だ。これは、遠来の観光客ほど大きく移動する事に起因するのだが、同じ広げるのならばハンカチよりも風呂敷の方が外貨獲得も多いからである。
すなわち、目指すべきは紀伊半島文化観光圏構想という事になる。その歴史や文化、自然は、どちらかといえば地球の反対側の人間にとって、極めてエキゾチックなものに映る事だろう(立場を逆転させて考えてみれば想像は容易である)。そして、外人が沢山来るところには何故か日本人も沢山来るし、メディアまで来る。視察も来れば、雇用につながる産業も生み出されるだろう。そのプラスの連鎖は地価をはじめ、大きく波及する事になる。儲かるのは飲食店だけではない。
【 技あり一本!】
『道の駅』旅案内創刊号の中部版を入手した。このA4版24ページのフリーペーパーは、中部圏にある各地の道の駅や観光協会に設置されているものだ。
ただしこの中にある4つの地域別ロードマップは、広告配置の都合から隣接圏外へのアクセスが全く読めない、ブロック毎の紹介地図にとどまっている。
おかげで、紀伊半島東部文化圏にある三重県の近畿圏側とのつながりは完全に絶たれており、たとえば世界遺産『紀伊山地の霊場と参詣道』も圏外である和歌山県側の表示のみとなっている為、 来年10周年目を迎える熊野古道伊勢路の記載が ロードマップ4には全くない。従って和歌山県側に在る『道の駅なち』も、併設の『世界遺産情報センター』もない。つまり中部管内唯一の世界遺産は、ロードマップ1の『白川郷・五箇山の合掌造り集落』だけだという事になる。しかも、ここに至るルートであるロードマップ3記載の施設はマップ1との重複も多く、『昇龍道』の想定ルートも含め、管轄外でも岐阜県直結ルートだけは記載がある。かと思えば、岐阜県に直結しない長野県の北部は広告で埋め尽くされてもいる。
さもありなん、奥付を見れば道の駅中部ブロックの連絡会は岐阜県にある。どうりでドライブ客以上の観光客集客に、ここが一番利便性が高い設計になっている筈である。しかも、国道を使っても旧街道沿い隣接近畿圏へは到達できない為に、津市、松阪市、東紀州への能動的誘導には殆ど役に立たないという事になる。この会の会長は熊野市の市長なのに、一体どうした事だろう。
ちなみに松阪市所有の四公営施設の指定管理業者は、このフリーペーパーに広告協賛まで入れている。関西からの導線が、自らの広告で埋められているにもかかわらずである。
【旅行業界売上高分析2012】
2012年1月から12月までの旅行業主要58社の取扱高が出揃った(2社減ったのは、ジャルパックとジャルツアーズの統合と、京阪交通社の営業廃止による)。これは観光経済新聞に毎月二ヶ月遅れで掲載されているものを、O.H.M.S.S.で積算およびグラフ化したもの一部である。 ただし、例年5月の末か6月の頭に報じられる総集版の積算値と、必ずしも一致するものではない。若干の修正や微調整がある為だ。しかし推移は充分読み取る事ができるので、今年もこれを用いて分析を試みる事にした。 これにより、日本の旅行業者にとって、いかにインバウンドが儲からないかという事も、グラフからお分かりいただけるかと思う。横軸に沿う細い線がそうである。
さて、2012年の特色は8月のロンドン五輪と竹島問題の顕在化、9月に発生した尖閣問題に関連した暴動の影響である。だが、8月の国内旅行全体は 4386億1479万6000円で、前年よりも91億7591万2000円の増収、海外旅行全体は2746億2724万5000円で286億9248万9000円、インバウンド全体は51億8618万3000円で16億6744万5000円の、いずれも増収となっている。これはアナログ放送終了が前年の7月だった為に、五輪の年の名物だったテレビの買い替え需要が無かった事と、まだこの頃は領土問題の影響も殆ど無かったからである。
ところが9月は尖閣問題暴動の影響をモロに受け、海外旅行全体は2159億1125万2000円となり、前年よりも134億9254万5000円の減収となっている。国内旅行全体も3268億5158万8000円で105億5425万1000円の減収、インバウンドは52億2757万3000円で8億8207万8000円の微増にとどまっている。
この事から、この秋以降に顕著となった海外旅行全体の減少原因が中・韓への過度の依存と、慌てた業界がインバウンドと11月の国内旅行で取り返そうとした事が、グラフからも読み取れる。
だが、12月の国内旅行全体は44億1516万8000円の減収となり、海外旅行全体も52億9357万6000円の減収となっている。衆院選の為だ。インバウンド全体だけは782万9000円の微増である。
2012年の積算売上高は6兆3456億1285万4000円。昨年は5兆8582億126万4000円だから4874億1159万円の増収という事になる。これも8月までの海外旅行取扱高1兆5848億2868万9000円で、貯金ができていたおかげである。前年の同期間と比べ 2182億3554万7000円の増収だ。この市場の海外流出で、多くの国内観光施設は苦戦した。
ところで、グラフをプリントアウトしてみて気づいたのだが、業界全体の推移とJTB14社合計のパターンが非常に酷似している。まるでグループ企業で、旅行業界全体を取り仕切っているかのようである。これが独禁法に抵触するかどうかは知らないが、代理店を置く旅行商品の取引相手として一国一国営企業制を採る中国が、同社を国営企業とみなして契約している事からも、疑問である。
[2011年1月から12月までの積算値]
国内旅行 3637152377千円
海外旅行 2174609719千円
外人旅行 46439168千円
合計 5858201264千円
[2012年1月から12月までの積算値]
国内旅行 3919937920千円
海外旅行 2362966211千円
外人旅行 62708723千円
合計 6345612854千円
【Advice to Foreign company】
There are a lot of business opportunities in Japan tourism. so if your company can, then the arrange ticket and proposed course.
Because, on the inbound, travel agents in Japan, unprofitable.
I recommended. "Kii Peninsula" which lies between the Central Japan International Airport and Kansai International Airport. here, is a treasure trove of Important cultural properties.
【インフルエンザ】
4/12政府は、鳥インフルエンザH7N9型について、新型インフルエンザ特別措置法施行を閣議決定した。
想起するのは、4年前の新型インフルエンザH1N1型騒ぎである。
2009年。観光業界は年末年始の出控えと、相次いだ春の団体旅行、修学旅行のキャンセルに喘いでいた。
ところが、盆まで続いた雨季のおかげか、とうとう我が国ではパンデミックは起きなかった。そればかりか、感染者の症状も極めて軽く、夏休み前には既に安堵感すら広がっていた。
それが8月半ばになって、既往症の合併症で死者が一人沖縄で出た途端、大騒ぎになった。
おかげで、既に弱毒性が明らかになってきていたにもかかわらず、品薄だったワクチンが既に大量発注済みだった事もあるのか、時の厚労大臣はしきりにメディアを通じて危機感を煽っていた。
しかし、そのワクチンが出回りはじめたのは、結局、年の瀬近くになってからの事となり、在庫消化は春先まで続いた。
そして大量に余った不良在庫は期限切れと共に廃棄処分となった。
なお、WHOのチャン事務総長が"フェーズ6"をひっそりと取り下げたのは、上海万博が開幕した5月に入ってからだった。それもジュネーブ発ではなく、香港発の外電からである。
4/23の中日新聞では、ワクチン評価における産学間の不透明な関係を報じていた。メディアには、今回のインフルエンザについても、2009年の時と同じ轍を踏まぬよう、冷静かつ科学的な報道を望みたい所存である。
【O.H.M.S.S.備忘録】
中日新聞社宛2010年4月26日
http://www.kankokeizai.com/FS-APL/FS-BBS/index.cgi?Session=S4d54f98e6ebc61454&Code=hiroba01&Mode=View62&Mess=01725
4/24の報道、09年度の国内宿泊数調査によりますと全国平均前年比5.4%のマイナス、中部地区がマイナス 8.5%、三重県はマイナス17.3%で、全国一の落ち込みとの事です。 記事ではその原因を、景気悪化と高速割引による導線変化としており、新型インフルエンザ禍についての言及が不自然なほど全く触れられていません。
O.H.M.S.S.では過去10年間の主な観光関連記事をストックしてあります。 昨年5/11の報道では鳥羽水族館における春の遠足や修学旅行の相次ぐキャンセルや延期の記事が出てました。 続く5/22には、神戸で36万人、京都の修学旅行も15万人の宿泊キャンセル、5/23では743億円の経済損失額も報じられています。 また、感染動向の急速な減少を受け、6/6の報道には観光産業への懸念から終息宣言を求める国交省に対し、厚労省は慎重姿勢を示していました。きのう(4/25)の余剰ワクチン問題については朝日より 遅くとも、フロントページに置いた点で評価できると感謝する次第です。 が、メディアの責任という点に於いては、まだまだ甘いのではないかと思う次第です。
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東京新聞社宛2010年6月5日
http://www.kankokeizai.com/FS-APL/FS-BBS/index.cgi?Session=S4df0946b2332214b1&Code=hiroba01&Mode=View62&Mess=01833
人は忘れ易いのか、それとも…。
昨年6/14の報道で国民は、WHOが新型インフルエンザの警戒水準を最高の 『フェーズ6』に引き上げ、世界的大流行(パンデミック)を宣言した事を知りまし た。 このフェーズは、1~3が鳥インフルや豚インフルに感染して死者が発生する段階であり、この時点でワクチン製造、供給の為の体制整備や情報収集といった対応 がとられ、4~6で新型インフルエンザと認定、対策本部の設置、日本人の退避・ 帰国支援と渡航の自粛要請、検疫強化、入国ビザの審査厳格化、そしてワクチンの開発と製造の開始となります。
ところがです。既に日本では6/4の感染者0人の時点で感染拡大は終息局面にありました。「日本は危険な国だ」と、中国からのインバウンドの大量キャンセルを受けた当時の国土交通相金子氏も、6/5には観光産業への影響を懸念して『終息宣言』を政府に要請しています。 にもかかわらず当時の厚生労働相増添氏は、WHOが近くフェーズを6へと引き 上げる検討に入った事を理由に(カメラの前で怖い顔をして)それを見送りました。 その根拠は、WHOで感染症対策を担当していた東北大学の押谷教授の「日本で半年以内に新型インフルエンザの大規模な感染拡大が必ず起きる」との警告を受けての事です。 蛇足ですが当時、発生源を中国の豚と疑っていた麻生元首相は、同国で公表された感染者数の少なさに疑問を投げかけてもいました。
ところで、修学旅行や団体旅行の相次ぐキャンセルで各地の観光業界は多大なダメージを受けました。 バス会社や海上アクセス、航空運輸も例外ではありません。 しかしながら、伊勢湾フェリーの9月末の撤退(※)理由が、土日祭日の高速割引の影響とされ、インフル禍には一言も触れていないのは不思議です。 利用者数が稼げる修学旅行や団体旅行は、むしろ平日の方がウェイトが高い筈です。 また、欧州でいわれるWHOと製薬会社との癒着疑惑(1/20付)の続報が出ない事、本日(6/4)のフェーズ6の継続の記事等、今回のインフルエンザ禍については メディアの報道姿勢についても府に落ちないところがあります。 折しも機密費で世論誘導と題された外交機密費の使われ方が報道される(5/18付元官房長官野中氏暴露)に至り、インフル禍の検証特集がそろそろ求められるのではないかとも思います。 宮崎の観光業界が風評被害にさらされる前に。 或いは、上海万博はパンデミックを助長するのではないかとの懸念の為にも。
※その後、撤退は回避されました。
【古墳の世界遺産一番乗りは?】(5/1付夕刊三重掲載オリジナル全文)
現在、古墳遺跡の世界文化遺産暫定リストには、大阪府、北海道・北東北、奈良県がそれぞれ登録されているが、このたび福岡県古賀市の谷岡遺跡群から出土した金ピカ馬具は、その保存状態の良さや、文化コンテンツとしての受けの良さから見ても、もし名乗りをあげるとすれば強敵アイテムとなるだろう。
むろん国宝指定に関してもである。ひょっとしたら高松塚古墳の壁画のように、僅か数ヶ月で国宝に指定されるかもしれない。
4/16の報道によると、時代は7世紀初頭前後とある。西暦600年代、今から1400年前のものだ。つまり高松塚古墳とほぼ同時代か、ほんの少しだけ前だという事になる。ならば、もしも国宝指定の次に世界文化遺産も目指すとすれば、同古墳は国内最古の文化遺産になるだろう。
だが、松阪市の宝塚古墳から出土し、今は文化財センターに鎮座している全長4.6フィートもの船型埴輪は、更に200年ほど前のものである。5世紀、西暦400年は今から1600年前だ。
問題はそれを意識する市民県民が、余りにも少ない事である。
【国際映画戦略】
長崎の軍艦島は2009年に近代産業遺産として世界遺産暫定リストに入っている。だが、映画"007/SKYFALL"に登場したのは洋上から眺めた外観カットだけだった。これではシリーズ第10作の沖縄の海と同じく風景の一部に過ぎず、シティプロモーションや観光客誘致としては失格である。国名や地名が全く出ないからだ。
実はこのような事例は以前からあった。三重県紀伊長島町(今の紀北町)に、Paramount-TVがオープンセットを組んで長期ロケを敢行した"SHOGUN"も、ドラマ上の地名が現地のそれではなかった為に、外客誘致には至らなかった。1980年の事である。※
さて、このシリーズ50周年記念を飾る007のロケ地は、当初ドバイだと云われていたが、一足お先に別の大作映画がドバイロケを敢行した為に、舞台はいつの間にやら上海へと変更されていた。だがそれは『起承転結』の『承』の部分の僅かなシーケンスに過ぎず、主舞台となる肝心の『転』『結』は、ロンドン市内とスコットランドとなっていた。
これは、元々このシリーズが、世界(遺産)巡りを売りにしてきただけに異色の展開である。何故だろうか。
つまりこの映画は、ロンドン五輪による昨年のインバウンド増加に対する今年の反動対策であり、ロケ地巡りができる筋立てにして、今年のインバウンド減少に歯止めをかける英国の観光戦略映画だったのである。
さすがは"Beatles"以来、ソフトコンテンツ輸出に長けた国だ。
映画のシリーズ構成は、終盤の女性Mの死をもってイアン・フレミング原作の第2作以前の世界へと一気に戻る。そこにあるのは、昔なつかしいオフィスのセットに、新任の男性Mとその秘書の登場だ。これはシリーズそのものを振り出しへと回帰させて、リニューアルシリーズのスタートを予感させる作りなのだが、それが原作に沿った21世紀版の"Dr.No"や"GOLDFINGER"の再来を期するものなのであれば、早晩日本が舞台となる"You Only Live Twice"も巡ってくる事になるだろう。
この作品、特筆すべきは、来日したフレミングが大きく筆を割いたのが、伊賀、松阪、伊勢、鳥羽の描写であるという点である。
※"SHOGUN" もリメイクで、今年クランクインとの事。空前の日本ブーム、再来なるか?
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No.65『地域振興と観光産業のかかわりについて2013』6月号
【GW2013の松坂城址】(5/10夕刊三重で報道)
[4/27(土)松阪市営駐車場12:25(メーデー終了後)89台+事故処理車1台]快晴
三重ナンバー78台、名古屋3台、和泉2台、鈴鹿2台、尾張小牧、静岡、京都、奈良、各1台
県外車比率11%
[4/28(日)松阪市営駐車場12:35 160台]快晴
三重ナンバー131台、名古屋6台、尾張小牧3台、奈良県3台、京都2台、大阪2台、鈴鹿2台、岐阜、群馬、滋賀、鳥取、香川、堺、横浜、和歌山、岡崎、神戸、習志野、各1台
県外車比率18%
[4/29(月)松阪市営駐車場12:35野球終了後146台]快晴
三重ナンバー125台、名古屋4台、尾張小牧3台、鈴鹿3台、奈良2台、福山、岡崎、富山、三河、宇都宮、京都、神戸、岡山、姫路、各1台
県外車比率14.4%
[5/3(金)松阪市営駐車場12:20 152台]快晴
三重ナンバー123台、名古屋4台、多摩3台、奈良3台、岐阜2台、鈴鹿2台、京都2台、品川2台、尾張小牧、滋賀、千葉、長野、なにわ、山梨、浜松、横浜、和泉、習志野、和歌山、各1台
県外車比率19.1%
[5/4(土)松阪市営駐車場12:25 145台]曇り
三重ナンバー104台、神戸6台、横浜5台、名古屋4台、鈴鹿3台、大阪3台、奈良2台、京都2台、沼津3台、石川、群馬、尾張小牧、岐阜、湘南、堺、とちまき、長岡、多摩、和泉、千葉、各1台、福井ナンバーのキャンピングカー2台
県外車比率28.3%
[5/5(日)松阪市営駐車場12:25 144台]快晴
三重ナンバー121台、和泉3台、奈良3台、鈴鹿2台、尾張小牧2台、名古屋2台、大阪2台、大宮、なにわ、群馬、三河、湘南、神戸、京都、滋賀、松本、各1台
県外車比率16%
[5/6(月)松阪市営駐車場12:25 98台]快晴
三重ナンバー84台、名古屋3台、奈良2台、鹿児島(軽)、姫路、岐阜、金沢、大阪、京都、浜松、久留米、沖縄(軽)、各1台
県外車比率14.3%
[七日間集計934台]
三重766台、名古屋26台、奈良16台、鈴鹿14台、尾張小牧11台、京都10台、神戸9台、大阪8台、横浜7台、和泉7台、岐阜5台、多摩4台、滋賀3台、沼津3台、群馬3台、
姫路、浜松、品川、堺、湘南、和歌山、岡崎、習志野、千葉、三河、なにわ、福井、各2台、
静岡、岡山、金沢、山梨、鳥取、香川、とちまき、富山、福山、宇都宮、石川、長野、長岡、大宮、松本、鹿児島、久留米、沖縄、各1台
備考[過去のGW松坂城址 県外車比率]
No.53『地域振興と観光産業のかかわりについて2012』6月号から
4/29(日)136台の17.65% 5/3(木)141台の17.7% 5/4(金)127台の25.2% 5/5(土)111台の21.6% 5/6(日)76台の13.2%強風と大雨
No.41『地域振興と観光産業のかかわりについて2011』6月号から
4/29(金)180台の5.6% 5/1(日)171台の8.2% 5/4(水)204台の17.2% 5/5(木)168台の8.4%
例年5/4の県外車比率が最も高まるのは、前日迄に伊勢志摩泊まりだった帰路車と当日の往路車が、日帰り車も含めて行き交うからで、連休なか日の街道の要ならではと云える。しかし、お昼どきとあっても満車とはいかず、県外車比率も30%には届かない。これは松阪市が、依然としてディスティネーション化していない証しである。つまり、いつまでたってもシティプロモーションが脆弱なのである。
なお、No.28『地域振興と観光産業のかかわりについて2010』5月号O.H.M.S.S.レポートGW2010の広域抽出調査については、以下(観光経済新聞社)をご参照下さい。
http://www.kankokeizai.com/FS-APL/FS-BBS/index.cgi?Session=S4be22ab03f5761640&Code=hiroba01&Mode=View62&Mess=01740
【トップページ】
自治体が発行するパンフレットやチラシなどの到達範囲は狭い。せいぜい市内か県内が限界だ。だから、テレビ電波も届かない経済圏には、たとえそれが隣県であっても、そこに到達する情報はごく僅かである。
ここに、現地メディアが取り上げてくれる圏外プロモーションの必要性がある。だが、ビッグイベントでもない限り、頻繁にプロモーション・キャラバンを繰り出していては費用対効果が危うい。メディア広告も高価である。
そこで各自治体のシティプロモーションは、もっぱらホームページで競う事になる。これは、圏外から来るお客さんの宿泊先選定の、既に七割以上がネット媒体からとなっている以上、合理的な考えだと云える。興味の対象として検索にかかれば、市外県外はおろか遠く外国人にも到達するからである。
ところが先月末に改修された松阪市のそれを見ると、単なるコンテンツの羅列紹介にとどまっており、イベントカレンダーも『松浦武四郎記念館』のスケジュールだけとなっている。そこに白々と目立つ空欄は、あたかもここ以外には何もないとの第一印象すら、外部の人間に植えつける。
お客さんが求めるのは、ローカル自慢や消化不良のカタログ情報ではない。必要なのは、初めて松阪市に興味を持った人が『行ってみたい』と思うトップページである。
だが、それが結構難しい。訪れなければ損、あるいは、行かない事には時流に乗り遅れる、連休明けに自慢ができない、というものでなければならないからだ。
この点において、例えば食文化の紹介として、どこにでも似たようなものがあるB級ものを前面に推すとすれば失格である。そんなものはコンビニやスーパーのフードコート、おかげ横丁にもいくらでもあるからだ。なにしろ観光客はトップギアーのハレの日である。一食あたり数千円から1万2万でも、欧米旅行と比べたら安いものである。やはり松阪で食文化を問うのならば、世界に名だたる松阪牛であるべきだ。
ただし、おなかがいっぱいになったらサヨナラでは勿体ない。特に上客には知的好奇心も満たしてもらわなければ片手落ちだからである。
さいわいにして松阪は戦災を免れた城下町だ。残っている風情の値打ちを知る町なのである。したがってここを訪れたからには、本居宣長の探究心に触れて学業やビジネスに生かしてもらうもよし、5世紀の巨大船型埴輪から、同時代のローマ遺跡との文化比較に思いを馳せてもらうのもよし、あるいは流行りの戦国時代探訪を望む向きならば、国史跡松坂城址だけでなく、寺社巡りを勧めるのも情緒風情があるに違いない。
要は歴史文化都市イメージ作りの為のイマジネーションを喚起する、センスの問題なのである。
【奈良ならレポート2013.0508】
8:30に松阪を出て、10:45には針trs.にて大宇陀温泉の支配人と合流。大阪からの修学旅行生で賑わう『平城京歴史館』に到着したのは12:30。15分ほど遣唐使船の上で、仕事を中断して駆けつけてくれる大宇陀観光協会顧問の到着を待ち、課長さんの案内でVRシアターの新作『安らけし都』を鑑賞。
平城京の成り立ちそのものを題材とした前作『はじまりの都』とは違い、今回のヴァーチャルソフトはNHKドラマ『大仏開眼』でもお馴染みの孝謙天皇(阿倍内親王)を主人公に置いて、大仏造像から開眼法要に至るまでをヒューマンタッチで描いたアニメーションだ。
http://www.youtube.com/watch?v=fpovwt-nvn8&feature=youtube_gdata_player
後から聞いたお話しだと、平城京の全景などは前作の使い回しとの事だが、どうしてどうして陰影に富んだ優れたバージョンアップ映像であり、人を描くストーリーと相まってロマンチックな仕上がりとなっている。交互上映で『はじまりの都』も公開しているので、続けて両方を見比べるのも視点が変わっていいだろう。
なお、夏の天平祭は8/30から9/1との事である。みんなで行きましょう。
『奈良県ビジターズビューロー』に到着したのは13:30。『奈良はおもしろい夏号』には宇陀方面も入るとの事で、部長さんは吉野行きで留守。書記さんに私共のパンフレット補充を託すと、仕事に戻る顧問を見送り、国連世界観光機関UNWTOに到着したのは15:30。ここは、昨年末に大阪から奈良へと移転してきた国連機関である。
アジア太平洋交流センターAPTEC支援のそのオフィス入口には、支援自治体や企業名が掲げられている。意外だったのは大阪府が無い事と三重県が入っている事だ。来年の熊野古道世界遺産10周年、或いは日台観光サミット(5/30から6/2)が三重で開催されるからだろうか。セントレアの名はない。
さて、こと観光政策において、国、県、市町村、皆バラバラなのが問題であるとは、初代観光庁長官の本保教授や二代目長官溝畑氏のかねてからの言だった。しかし本来その調整こそは貴方がたの仕事だったのではなかったか。おかげで、自治体間における観光経済の概念は未だ温度差が大きいままである。
国際観光に必要なのは、世界の中のアジア圏、アジア圏の中の日本、日本の中の紀伊半島圏、紀伊半島圏の中の各県、各県の中の各市町村が、自らを客観視する視点とグローバルな指標なのである。
だが、これを内部から見い出すのは極めて難しい。単一言語の島国の上に、近視眼的ローカリズムや経済圏区分が乗っかっているからだ。
国連機関は、これに一つの『解』を創出しようとしている。それが『海のシルクロード』である。今回ご案内いただいた国際部長さんからは、1時間強の時間を割いて、この構想をお話しいただいた。
すなわちそれはエメラルドルートをアナロジーにとり、アジア文化圏をその拡大版として歴史海路に沿い、点から線、線から面へとつないで広域アジアン観光圏を描くものである。
その利点としては、陸路と違って海路には国境線が無いためナショナリズムが緩衝できる事、文化圏における日本の立ち位置と個々の自治体の役割が、自ずと明確化してくる事にある。これは、経済圏ローカリズムを緩衝する紀伊半島文化観光圏とセオリーは同じなのだが、更に『海のシルクロード』の方は、交通政策や旅行業者観光業者すら付随するものとして脇に置き、アジア文化圏コンテンツの主幹形成に尽力するという。つまり、アジア文化圏における観光スタンダード、グローバル指標の確立だ。世界遺産同様、国際的共通価値観の創出なのである。
日本を内包するそのエリアは、遠く中央アジアやインドから、東南アジア、そしてオセアニアと広範囲に渡る。この中から、例えば紀伊半島への導線を問うとすれば、恐らくそれは仏教伝来ルートが最もポピュラーなものになるだろう。
しかし客観的評価は、アジア圏の外にこそ求めるべきものである。
話は尽きない。政治、経済、宗教などの干渉といった国家間の温度差等も知りたい。だが、このあとのアポイントメントもある。私達は翻訳資料と国際観光統計を頂戴し、私共のパンフレットを置いて国連機関を後にした。日帰行脚のつらいところである。
17:00奈良市観光センター到着。天平衣装を展示中。事業課長さんによるとGWの稼働率は概ね満館だったとの事。専務理事も戻られていたのでご挨拶。私共のパンフレット補充を託して帰途につく。
支配人、そして皆様、連休対応疲れのところ有難うございました。
松阪への帰着は21:00でした。
【世界観光統計資料集から】
アジア太平洋交流センターAPTEC発行、国連世界観光機関UNWTO資料の『世界観光統計資料集』とは、海外主要29ヶ国の、目的地別アウトバウンド旅行者数が分かる最新データ集である。
発行は2013年3月。2007年から2011年までの5年間の確定数値と、前年比を添えたものである。
はたして、目まぐるしく変わる国際情勢の中、この2年遅れの統計資料に、どれだけの価値があるのかとの声もあるだろう。しかし、国内プレスリリースに同調し易く、海外情報の収集能力や外交力の弱い単一言語の島国に住む日本人には、それゆえに、この客観的統計からは単に過去の検証のみならず、他国との比較よって見えてくる『自らを知る座標』としての価値があると云える。たとえば2011年の『大震災に起因する原発事故』で、29ヶ国の日本行きは総じてマイナスとなったが、悲しみに暮れた筈の日本人の海外旅行には、微塵の翳りもなかった。この事が、数値で裏付ける事もできるのである。
政変、戦乱もそうなのだが、安心安全が大前提となる観光客の動向は、その時々の国の事情を反映する。記録に残された数字の価値は、検証され、後々に活かされる事にあるのである。
[中国の数字から]
上海万博に沸いた2010年は、同時に中国からのインバウンドもピークに達していた。大挙して団体ショッピングツアーが押し寄せていたのである。この年間141万2875人は新記録だ。
日本からの万博送客も頑張っていた。頑張り過ぎて国内旅行が危機に瀕するぐらいだ。当時、日本の旅行業界は100万人単位の送客目標を掲げ、上海万博への送客を着々と進めていたのである。多くのメディアは伏せていたが、奏功した実績は373万1200人。これはリーマンショック以前2007年に次ぐ数字である。
しかし当時の業界紙には、もっと(日本人を)よこせ(原文まま)との辛辣な報道が載っていた。奇怪な話である。まるで大局的観点に立ったとされる、両国間の送集客目標に何らかの約束事でもあったかの如くである。内外の一般報道だけでは分からない。
だが国連の数字を洗ってみると、知ってか知らずか日本が、中国の確信的利益を侵害していたのでないかという事が浮き彫りになる。
2007年 2008年 2009年 2010年 2011年
中国から日本へ 942439人 1000416人 1006085人 1412875人 1043246人
日本から中国へ 3977479人 3446117人 3317459人 3731200人 3658169人
4.2倍 3.4倍 3.3倍 2.6倍 3.5倍
つまりこの規則性からみて、もしも早い時点で出入国差が3倍を超えていたら、尖閣における漁船衝突事件もフジタ社員の拘束事件も、起こり得なかったのではないかと思うのである。即ち、物価差約10倍国への団体ショッピングツアーが中国人アウトバウンドの主流である以上、日本人インバウンドとの格差縮小は、観光経済を貿易の一種と見なせば赤字幅の拡大であり、とうてい看過できない問題となるからだ。
この事から、とりわけ相手国が計画経済で、観光も外貨獲得の為の国家戦略である場合、思いもよらない政治的判断が働く事もあり得る事と、心してかかる必要があるといえよう。
[韓国の数字から]
韓国からの日本行きも、2010年が2007年に次いで多い。だが、多いといってもたかが243万9816人である。韓国からの中国行きは407万6392人もあるのだ。この韓国人の中国行きは、5年間平均でみても403万9294人もあり、新型インフル年の2009年を除いて安定的である。從って昨今の、外交問題で日本行きが減り、中国行きが増えたとの国内報道は正確ではないと云える。元々多かったのだ。
一方、2010年の日本からの韓国行きは302万3009人、『大震災に起因する原発事故』年の2011年も328万9051人へと増加している。
これにより、ソフト輸出による韓流ブームに乗った集客戦略が、2009年より結実した事が分かる。
JNTOによると、2010年の日本人海外旅行者数は1663万7224人で、前年よりも119万1540人も増えている。同年の一時的な3万人程の減少は、おそらく中国へと流れた為であろう。
2007年 2008年 2009年 2010年 2011年
韓国から日本へ 2600694人 2382397人 1586772人 2439816人 1658073人
日本から韓国へ 2235963人 2378102人 3053311人 3023009人 3289051人
1.16倍 ほぼ同数 1.92倍 1.24倍 1.98倍
[日本の数字から]
震災で沈滞した国内経済を回しましょう。国際支援に対するお礼として、海外旅行を推進しましょうと、国と『日本旅行業協会』が、空前の海外旅行ブームを仕掛けた2011年。メディアもしきりに円高メリットを喧伝していた。被災地の人達は旅行どころではない、にも関わらずである。
JNTOによると、この年の日本からの海外旅行者数は、『上海万博』のあった前年よりも更に36万6976人多い1699万4200人へと増加。おかげで未曽有の災害の中にあってもJALの再上場は予定通りとなった。
ちなみに29ヶ国中、100万人単位の日本人アウトバウンドがあった2011年の上位五カ国は、中国行きの365万8169人、韓国行きの328万9051人、米国行きの324万9569人、台湾行きの124万2652人、タイランド行きの110万3073人の順である。既にこれだけで1254万2514人にのぼる。
[米国の数字から]
人口約3億1200万人の、米国人の日本行きは五年間平均で年71万5453.4人。日本からのアウトバウンドは、五年間平均で年326万6996人。その出入国差は中国を凌ぐ約4.57倍もある。
[台湾の数字から]
韓国の半分にも満たない人口約2300万人の、台湾人の日本行きは五年間平均で年121万2405.4人となる。意外な事に、これは人口約13億5000万人の中国からの日本行き五年間平均よりも年13万1394.2人も多い。
だが、台湾人の中国行きの五年間平均は更に年478万0216.2人もある。これは日本行きの実に四倍である。これをビジネス絡みとみるか帰省とみるかはデータ不足だが、もしも純粋に観光ならば、日本にとって大きな市場性があると云える。
ちなみに日本からのアウトバウンドは、五年間平均で年109万5077.2人である。出入国差は殆どない。
[タイランドの数字から]
人口約6950万人のタイ王国人の日本行きは五年間平均で年17万9350.6人。日本からのアウトバウンドは、五年間平均で年108万5106.6人。出入国差は約6倍である。
[シンガポールの数字から]
韓国の十分の一の人口約518万人の、シンガポール人の日本行きは五年間平均で年15万1458.4人となる。日本からのアウトバウンドは、五年間平均で年56万8181.8人(日帰り含む)である。出入国差は約3.8倍である。
[マレーシアの数字から]
人口約2886万人の、マレーシア人の日本行きは五年間平均で年9万8419.4人。日本からのアウトバウンドは五年間平均で年39万9926人。出入国差は約4倍である。
[香港の数字から]
人口約707万人の、香港からの日本行きは五年間平均で年46万1071.2人。日本からのアウトバウンドは五年間平均で年81万0639人。出入国差は約1.76倍である。
[インドネシアの数字から]
人口約2億4200万人の、インドネシア人の日本行きは五年間平均で年6万7386.2人。日本からのアウトバウンドは五年間平均で年47万2578.6人。出入国差は約7倍である。
[ロシアの数字から]
人口約1億4200万人の、ロシア人の日本行きは五年間平均で年5万2543.2人。日本からのアウトバウンドは四年間平均で年8万0551.25人。出入国差は約1.5倍である。
[英国の数字から]
人口約6264万人の、英国人の日本行きは五年間平均で年18万6822.6人。日本からのアウトバウンドは五年間平均で年24万8402.8人。出入国差は約1.3倍である。
[ドイツの数字から]
人口約8200万人の、ドイツ人の日本行きは五年間平均で年11万3444.8人。日本からのアウトバウンドは五年間平均で年60万9040.8人。出入国差は約5.37倍である。
[フランスの数字から]
人口約6540万人の、フランス人の日本行きは五年間平均で年13万4613.4人。日本からのアウトバウンドは五年間平均で年65万7303.6人。出入国差は約4.9倍である。
[イタリアの数字から]
人口約6077万人の、イタリア人の日本行きは五年間平均で年5万3260.2人。日本からのアウトバウンドは五年間平均で年31万5908人。出入国差は約5.9倍である。
[オーストラリアの数字から]
人口約2262万人の、オーストラリア人の日本行きは五年間平均で年21万2907.4人。日本からのアウトバウンドは五年間平均で年42万3286.6人。出入国差は約2倍である。
[インドの数字から]
人口約12億4000万人の、インド人の日本行きは五年間平均で年6万3999.4人。日本からのアウトバウンドは五年間平均で年15万5432.6人。出入国差は約2.43倍である。
[カナダの数字から]
人口約344万3000人の、カナダ人の日本行きは五年間平均で年14万8331.6人。日本からのアウトバウンドは五年間平均で年25万0269.2人。出入国差は約1.69倍である。
[オーストリーの数字から]
人口約842万人の、オーストリー人の日本行きは五年間平均で年1万2666.6人。日本からのアウトバウンドは五年間平均で年21万5797.6人。出入国差はなんと約17倍である。
[オランダの数字から]
人口約1億6693万人の、オランダ人の日本行きは五年間平均で年僅か3万1050人。成田と関空に続いて、この春からは福岡便も就航したKLM直行便があるにもかかわらず、日本からのアウトバウンドは何処にも載っておらんダ。出入国差は不明である。
[スイスの数字から]
人口約791万2000人の、スイス人の日本行きは五年間平均で年2万2773.2人。日本からのアウトバウンドは五年間平均で年29万0240.2人。出入国差は約12.7倍である。
[ブラジルの数字から]
人口約1億9700万人の、ブラジル人の日本行きは五年間平均で年1万9319.2人。日本からのアウトバウンドは五年間平均で年6万6859人。出入国差は約3.46倍である。
[メキシコの数字から]
人口約1億1500万人の、メキシコ人の日本行きは五年間平均で年2万0235.8人。日本からのアウトバウンドは五年間平均で年6万6348人。出入国差は約3.28倍である。
[ニュージーランドの数字から]
人口約440万人の、ニュージーランド人の日本行きは五年間平均で年3万1208.6人。日本からのアウトバウンドは五年間平均で年9万1851.6人。出入国差は約2.9倍である。
[ポルトガルの数字から]
人口約1060万人の、ポルトガル人の日本行きは五年間平均で年9726.8人。日本からのアウトバウンドは五年間平均で年6万1551人。出入国差は約6.3倍である。
[南アフリカ共和国の数字から]
人口約5060万人の、南アフリカ人の日本行きは五年間平均で年4899.4人。日本からのアウトバウンドは四年間平均で年2万6557.25人。出入国差は約5.4倍である。
[スペインの数字から]
人口約4600万人の、スペイン人の日本行きは五年間平均で年3万6340.8人。日本からのアウトバウンドは五年間平均で年29万6128人。出入国差は約8.15倍である。
[トルコの数字から]
人口約7400万人の、トルコ人の日本行きは五年間平均で年8395.2人。日本からのアウトバウンドは五年間平均で年15万9008人。出入国差はなんと約18.9倍である。
[アラブ首長国連邦の数字から]
人口約800万人の、アラブ人の日本行きは2009年から2011年三年間平均で年1466.7人。日本からのアウトバウンドは未掲載。出入国差は不明である。
[JNTO統計にみる観光出入国差]
2009年1月から12月(新型インフルの年)
インバウンド 678万9658人
アウトバウンド 1544万5684人 約2.27倍
2010年1月から12月(上海万博の年)
インバウンド 861万1175人
アウトバウンド 1663万7224人 約1.93倍
2011年1月から12月(震災と原発事故年)
インバウンド 621万8752人
アウトバウンド 1699万4200人 約2.73倍
2012年1月から12月(領土問題顕在化年)
インバウンド 836万7872人
アウトバウンド 1849万0638人 約 2.2倍
【発地への情報発信】
先日の松阪縞に、ベルライン存続問題が載っていた。
昨年の利用者数は約2万人。これは、大震災と原発事故の2011年を挟んで、上海万博の年だった2010年と比較して半分以下との事である。
その原因として考えられるのは、今の中部国際空港の就航便の殆どが中韓アジア便で占められ、どちらかといえば先進国の富裕層向きである松阪肉や、松阪市の歴史建造物に興味を持つヨーロピアンが殆ど来ていない事にある。つまり、松阪コンテンツと需要とのギャップが原因なのだ。国内便のお客さんも、陸周りや津港の方が便利がいい。
では、どうすればいいか。もちろんそれは発地への情報発信に尽きる。
たとえば、パリ行き直行便を失ったとはいえ、まだ同空港からは毎日ドイツやフィンランドへの往復便が出ているではないか。情報発信もなく、ただ腕組みしているだけで、お客さんが来るわけないという事である。
ちなみに世界観光統計によると、2011年の邦人観光客のフィンランド行きは7万5680人。ドイツ行きも64万2542人ある。
国連世界観光機関資料からO.H.M.S.S.計算【台湾の観光出入国差】
台湾からのアウトバウンド 同国からのインバウンド 出入国差
(五カ年平均)
①中 国478万0216.2人 296万3734.7人(三カ年平均) −1.613
②韓 国152万8089.6人 21万1436.4人(五カ年平均) −7.227
③日 本121万2405.4人 109万5077.2人(五カ年平均) −1.107
④香 港 69万2242.8人 66万1742.8人(五カ年平均) −1.046
⑤タ イ 40万3435.6人 4万4739.2人(五カ年平均) −9.038
⑥ベ ト ナ ム 31万7520.0人 データなし
⑦米 国 28万5375.6人 36万1790.6人(五カ年平均) +1.267
⑧インドネシア 21万8067.6人 4万9391.0人(五カ年平均) −4.415
⑨マ カ オ 19万7717.8人 データなし
⑩シンガポール 19万4103.0人 22万3270.8人(五カ年平均) +1.150
【各地方自治体へ】
5/17の時事通信によると、政府はアベノミクスの三本目の矢の成長戦略として、放送コンテンツの輸出とインバウンド2000万人の誘客も掲げた。
だが、前者こそ500億円規模との具体的目標があるが、後者については東南アジア諸国へのビザ発給要件の緩和だけで、経済目標はない。とりあえず1000万、続いて2000万人との人数だけの集客目標も、もともと震災前からあったものを引っ張り出してきたものである。
つまり対中韓政策のとき同様、まず製品輸出ありきの経団連主導型の踏襲であり、観光政策は面倒が起こらないようにとのソフト外交的役割にとどめ、諸外国のように外貨獲得の為の国家経済の柱に据えるつもりはないという事が読み取れる。
これでは、先般配信した世界観光統計の分析結果からみても国交省は、2000万人集めるのに4000万人の日本人観光客を差し出しかねず、ゴールデンルートにない多くの自治体にとっては、安価インバウンドと国内観光客の減少で、再び深刻な業界デフレを呼ぶ可能性が極めて高い。
それゆえ人口減少下における今後の町おこしは、各市町村個々による世界に通じる文化コンテンツの整備と、情報発信能力いかんによる事になるであろう。目標とすべきは名目GNIの高い国である。(詳細『地域振興と観光産業のかかわりについて2013』3月号補足を参照)。
ちなみに日本の人口なみのインバウンドが来て、一人あたり25万円を使っても年30兆円にはなる。
【ゴールデンウィークの出雲大社70万人】
好天に恵まれ、国内旅行も復調傾向にあったGW。
だが、5/10付夕刊三重でも報じてもらったが、O.H.M.S.S.県外ナンバー定点観測では、関西ナンバーの減少を認めていた。
この事は、5/16付中日新聞も裏付ける。即ち、主に中部圏からの入り込みの足であるJRの前年比が42.7%の伸びに対し、主に関西圏からの入り込みの足となる近鉄は、僅か2.9%の増加にどどまっている。着地点鳥羽市への入り込みに関してである。
そういえば奈良市も、若干の取り漏れがあったと言っていた。
はたして関西以西のマーケットは何処へ行ったのだろうか。
その答えは、島根の5/10付朝日新聞が報じていた。
記事によると島根県では、GWの4/28、5/4、5/5の正午に、出雲大社周辺4駐車場のナンバー調査を実施したそうだ。対象は1109台、最も多かったのは広島の18%、次点は地元島根の15%で、兵庫と大阪はどちらも10%、岡山8%、福岡5%、愛知、鳥取、山口はそれぞれ4%程度としている。
空前の出雲ブームとなったGWの入り込みは約70万人(前年は約37万人)を数えたそうだ。これも関西からつながる鳥取自動車道の全線開通のおかげである。その効果は出雲大社だけでなく、鳥取砂丘(前年比23%増)、松江城(25.1%増)にも及んだとある。
こういった情報が一切こちらで報じられない事は、経済圏ローカリズムに与する悪しき例である。だから疑心暗鬼になる。
ちなみにGWの伊勢神宮は、内宮外宮と重複カウントしても、たった約55万6600人しか来ていない。しかもこれは、今年の正月三が日と殆ど同じ数(約55万6500人)でもある。※
※前回の国勢調査の三重県民数185万4724人に0.3を掛けると約55万6400人になる。これに100を足すと正月三が日、更に100を足すとGWの伊勢神宮(内宮+外宮)入り込み数になる。偶然か?
【紀伊長島2013.0519】
10:30に紀勢大内山ICから紀勢道に入り、紀伊長島ICを出たのが9分後。殆どトンネルばかりの新開通区間である。料金は350円。
途中で沢山の警察車両と対向したが、どうやら午前中に紀北町の熊野灘臨海公園であった、『みどりの愛護』のつどいに出席の、皇太子さま警護隊のようである。
殿下は『馬越峠』ウォークだそうだ。
道の駅マンボウでは11:45から12:15にかけて、名鉄観光バス24台が次々と到着。マネージャーによると、『荷坂峠』を800人が歩くウォーカー団体だそうで、明日も25台来るとの事。
来年は『熊野古道伊勢路』も世界遺産10周年である。
TV program of this 20th Century Fox has sparked a boom of unprecedented Japan to the United States. The remake of broadcasting next year, Where will you shoot?
【観光報道と株価、地価】
先日たいへん象徴的な出来事があった。富士山世界遺産登録に関する株価の大幅なアップである。5/2付東京新聞朝刊によると、JR東海をはじめ地元交通機関や旅行会社、アウトドア用品店等の株価が軒並み上昇したとある。ならば報道にはないが、おそらく地価にも今後反映される事になるだろう。高値安定で推移するおかげ横丁開業後の内宮前地価のようにである。
いわば、これは裏の観光経済といえる。
そういえば、5/30に中日新聞が報じた東京三菱UFJリサーチの調査によると、長島リゾートの2012年の年間入り込み数は1575万人で、前年比9.3%の増加とある。この数字は、同社の大株主(※)にとって朗報であることは吝かでない。なにしろ5/23の読売新聞や5/24の毎日新聞では、その半分しかない三重県の推計値である704万9000人が報じられ、増加率も僅か0.9%とされていたのだから。ちなみに中日新聞三重版は、更に9000万人省いて704万人とも同じ時期に報じていた。統計法上の罰則がない(?)観光数字は実にいい加減なものである。来年11月に奈良で開催される、国連の観光統計会議に提起したいものだ。実体経済を反映しない虚数に、投資があるわけないからである。
そもそも三重県は、常に伊勢神宮の入り込み数が一位になるようにと、2002年度からは外宮の参拝者数も内宮のそれに加えてもいい事とした。その理由は2003年7/7付中日新聞によると『伊勢神宮は三重県の目玉となる観光地。一位で数字にボリュームがあったほうがいい』(原文のまま)からだそうだ。つまり、貴方が外宮と内宮両方へとお詣りしたら、それは一人ではなく二人になるのである。ゆえに2012年の観光入り込み数一位は伊勢神宮の803万1000人となり、二位は長島リゾートの704万9000人となって、めでたしめでたしである。これがホントの『それ、全部見栄なんです』だ。
しかし、いつまでもこのような実態を反映しない数字の独り歩きをメディアが黙認していては、我が国の観光経済は一向に発展しない。現に県下最大の旅館街は前年比マイナスのままである。これでは地域経済への波及もなければ、雇用促進にもつながらない。何度も書くが、日本の観光GDPは1.9%、雇用も2.6%で先進国中最下位のままなのである。
(※)名鉄、近鉄、大谷天然ガス、三井不動産、三重交通、松阪屋、みずほ銀行
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O.H.M.S.S.
(大宇陀・東紀州・松阪圏・サイトシーイング・サポート)代表 井村茂樹
ohmss700@gmail.com