2013年2月23日土曜日

No.62・63『地域振興と観光産業のかかわりについて2013』3・4月号

No.62『地域振興と観光産業のかかわりについて2013』3月号

【奈良ならレポート0131】

 早いもので宇陀市訪問から始まりました奈良ならレポートも、今年から五年目に入りました。
 今回は津市観光協会の専務理事と次長が、急遽クルマを用意して下さる事になりましたので、集合場所を津市駅前に変更、松阪市観光協会の監事と共にJRで津市入りしてから三重県の観光連盟にも寄り、ここの専務理事からは『観光三重』をお預かりしての出発となりました。
 先方のアポイントメントは、奈良県の観光所轄部署が管理している平城京歴史館の責任者と、同じく県ビジターズビューローの部長と書記、そして奈良市観光協会の専務理事と事業課長です。
 伊勢別街道から名阪国道へ。幸い出発時間が当初の行程よりも1時間程早まった為に、道中、名阪上野ドライブインの支配人と伊賀上野城の専務理事も訪ねる事ができ、情報交流の後、ほぼ予定通りの時間割りで奈良県入りする事ができました。
 0131の目的は三つ、一つは昨年暮れから動き始めました三市連携の『城郭めぐり』の宣材紹介、もう一つは日本の地域観光産業が抱えている原状認識と打開策の共有、そして、その一つの提案となる『紀伊半島文化観光圏』の話です。
 (蛇足ではありますが、大陸から流れ込んだ大気汚染物質で、古都の空が霞んで見えた事もここに記録しておきます。三重県に帰ってから調べてみたところ、標高の高いところには比較的濃度の高い飛来もあったようです。これが21世紀の大陸伝来とは皮肉です。)
 さて奈良入り後、先ず私達は平城京歴史館を訪問、開催中の『古代の衣食文化企画展』を拝見し、VRシアターを御案内いただきました。この、天平祭でも目にした、時代考証とイマジネーションで再現された衣装の数々は、サンプル展示された宮廷料理と共に、他にはない魅力的な大和コンテンツだと思います。料理は奈良パークホテルで実際に食する事も可能だそうで、遷都1300年以来すっかりお馴染みとなったシアターのソフトも、いよいよ新年度からは新作が上映されるとの事でした。
 手入れの終わった遣唐使船も見て、私達はビジターズビューローへと移動し、こちらには企画書の形で(『地域振興と観光産業のかかわりについて2013』2月号掲載)、津市の参加も前提にして『城郭めぐり』の発展案を紹介し、同時に奈良県側にも立ち上げを投げ掛けてもみました。
 幸いにしてここの部長さんは以前、遷都1300年事業協会の室長だった事もあり(その折は有難うございました)、日本の歴史文化観光の対象となる国には自ずと制限がある事もよくご存知で、(つまり大陸からのお客さんは不向きの上に値も切られる)それだけに、欧米圏からの集客をも念頭に置く事もできる地域の歴史文化紹介コンテンツとして、近年脚光を浴びるている『山城』を用いる事についても、社寺仏閣とはまた違う新機軸として捉えていただけたようでした。おかげ様で情報の連携と共有につきましても大いにご理解いただき、ビル1階にある物産協会横のパンフレットコーナーの一角までご提供下さった次第です。O.H.M.S.S.では遷都1300年事業のプレプロモーション以来、ワンシーズンあたり1000部以上の奈良宣材を三重県内に広域配布してきましたが、今回もまた追加分として200部お預かりして、旧友の待つ奈良市の観光センターへと移動いたしました。
 なお、この4年間を主観的に見る限り、東大和・西三重の協議会は年に一回大門商店街で見かけるだけであり、津市内でも活動実態が殆ど知られていない事にも少し触れておきました。津市や私達と共にセントレアや津エアポートラインを二日間借り切って汗をかいてくれたのは『京・伊賀・大和広域推進協議会(けいなの里)』の方でもありましたので。
 その主体である奈良市の観光協会では、今度はパンフレットコーナーの提供どころか、観光センターへの什器の設置もOKとの申し出が課長さんからありました。こちらの専務理事は流石に業界出身だけあり、関西側では殆ど知られていない『昇龍道』の事も御存知でした。ならば当然このルートが、セントレアからの名鉄ルートがメインであり、紀伊半島の歴史文化とは殆ど無縁であるという事もお気づきの事かと思います。

【畳に布団】

 たくさんの観光ホテルが立ち並ぶ伊勢志摩は、その殆どが和室中心の設計であり、寝床も『畳に布団』です。
 一方、洋室が中心のビジネスホテルや都市型のホテルも、そのベッドサイズの多くは身体の大きな外国人には窮屈だと言われています。
 そういえば奈良県も、遷都1300年祭の際に招いた外国からの要人の多くが、京都泊りになってしまったとの事でした。そこで・・・と言う訳でもないとは思いますが、新年度の奈良県の重点目標が、規模の大きな国際会議も呼べる、インバウンド対応ホテルの誘致となるのも頷けます。
 しかし1994年のコンベンション法の制定以来、国際情勢は大きく変化しました。『地域振興と観光産業のかかわりについて2013』正月号補足  にも書き留めておきましたが、今やアジア主要国の中に占める国際会議の日本のシェアは、悪化こそすれ伸びる理由が思い当たらない状況です。ならば、ライバル県も多い中、建設費や稼働率、維持管理費の担保の為にも『中核となる転用策』を立てておく必要が有るのではないかと思います。 
 それにしても我が国は、何故『畳に布団』を『日本へ来たら一度は体感して欲しい日本文化』として、自信を持って海外へと紹介する事ができないのでしょうか。戦後のSUKIYAKIに始まり、SUSHI、TATAMIと、昔と比べますとジャパネスクの認知度は飛躍的に向上しており、箸の使い方を心得た外国人も今や当たり前、遂には『和食』そのものを世界文化遺産にとの声すら聞かれる、この時代にです。
 ならば国際会議のような緊張感の伴うビジネスユースこそ、もてなしの点に於いても『畳に布団』は効果的なのではないかと思います。落っこちる危険もありませんし。
 その為には、先ず畳と布団の有益性と合理性を、世界へ向けて発信する必要がありますが、幸い、輸出された多くのアニメーション映画が、既にその下地を作ってくれてもいると思います。

【物価の差】

 日本経団連は今月4日から、ミャンマーとカンボジアに、米倉会長を団長とする140人もの大型訪問団を派遣した。これは安価な労働力を求める日本企業の、両国への進出を円滑にはかる為の地ならしのようで、ポスト中国とも読み取れるが、ニュースによると幹線道路などのインフラ整備も条件にあるときく。
 一方、その二日前の報道によると、ついに日本の製造業従事者の数が1000万人を下回ったとある。なんでも昭和36年の6月以来の低い水準だそうで、その主な原因は企業の減産や海外移転に伴う人員削減とされ、今後は更に減少の見込みともある。この件につき厚生労働省大臣は、国内に製造業が残る為にはどうすべきなのかを、内閣をあげて考えるそうだ。
 だが今の日本は自国よりも遥かに物価の安い国へと売る為の製品を、これまた自国よりも賃金の低い国との間で競争を繰り広げている状態である。この事は、それらの国との物価差が均衡に近づくまでは、国内製造業による雇用と景気の回復など無理なのではないかと思われる。
 ならば日本も欧米先進国のように、新産業としての国際文化観光を本気で推進し、物価の近しい国から外貨を獲得すると共に、裾野の広い観光関連産業の活性化で、雇用と経済を浮上せしめる事が、いよいよもって必要なのではないかと思う次第である。

【本物と偽物】

 外国を模したテーマパークが廃れた原因の一つに『本物志向』がある。たとえば大型連休にオランダへ行った人の撮った風車の写真と、ハウステンボスに行った人のそれとの間には、明らかな格の違いがある事を感じない者はいない。これは、すっかり海外旅行慣れした今の日本人の目には、どんなに精巧に再現されていたとしても所詮は偽物としか映らないからである。
 では、何故偽物は駄目なのだろうか。この場合、ただ単にダイヤとジルコンを比べ、ダイヤは天然希少だからといった価値観に則ったものではない。多い少ないを問うのならば、本物の風車の方が圧倒的に多いに違いないからだ。
 つまり本物の風車には、その土地の気候風土と生活に調和して、今も灌漑といった仕事をしているという存在意義が、写真にも表出するからである。
 この事は、重要文化財イコール本物である『御城番屋敷』に、土産店コンプレックスである『おかげ横丁』のビジネスモデルを導入してはどうかとの、一種子供じみた議論に一つの答えを導く事にもなるかも知れない。ただしそれは、騒がしい、ゴミが出るなどといった地域エゴの話ではなく(そんな話は、本物先進地奈良市内でも、四年間ほぼ毎月通っていても聞いた事がない)。云わば『格』の話としてである。
 ご存知の如く、土産とは『記念の品』もしくは『楽しみのお裾分け』、或いは『自慢』でもある。
 したがって、地域コンテンツと店との主従関係を逆転させて、店さえ設ければ地域経済が活性化する等と短絡的に考えるのは大変危険であるといえる。何故ならば、地域コンテンツが集客してくれなければ、モノも売れないからである。
 私は若い頃に観光土産の製造卸に10年いたので、その掛率もさる事ながら、あくまでも土産というものは地域観光の副産物であるという事を熟知している。が、それだけに20年前にできた江戸 時代を模した商業施設を羨み、御城番にもと願うのは愚行であると断言もできる。
 松阪市はあくまでも本物の格にこだわり、それを評価してくれるお客さんにのみ愛されてもいいと思う。世界遺産を抱える多くの国の、多くの地域がそうしているように。
 そして対外評価的にもその方が、はるかに地域にとっては得るものも多い事と確信する 。

【供給面と需要面におけるデフレ要因】

 かつて、日本各地で栄えた大規模な紡績工場を例にとるまでもなく、後進国の追い上げによって国際的な価格競争に晒された国内メーカーは、一時的にこそコストダウンを重ねる事ができたとしても、結局のところは業態転換や工場の撤退を招く事になってしまう事は既に御存知だと思います。
 そうやって日本での役割を終えた産業は、順繰りに低賃金国へとバトンタッチされて輸入品として日本にやってきますが、その価格は先進国日本における国産品価格を脅かす程に安価なものとなって現れます。これが国産品の淘汰に拍車をかける原因である『供給面におけるデフレ要因』である価格破壊です。
 私も昔、製造、販売まで取扱っていた民芸提灯が台湾製に取って代わられた苦い思い出がありますが、今や、こういった国内生産撤退の波は雑貨や日用品、衣料品にとどまらず、白物家電や液晶テレビ等にも広く及んできている事が分かります。
 また、少子高齢化社会の進捗に伴う人口減少も、租税や社会保険等の負担割合が増えて可処分所得が減り国内市場の更なる減少を招く事になりますが、こうなりますと、いわゆる大手企業が内外投資家の意向に沿い、成長著しいとされるアジア圏へと競って進出しようとするのも、企業の存続をはかる上では至極当然の成り行きだと思います。
 しかし、その結果として失われる国内雇用は、モノづくり大国の教育の中で奨励されてきたブルーカラーの可処分所得を確実に減少せしめ、これが『需要面におけるデフレ要因』に拍車をかける事になると思います。価格形成というものは、常に需給バランスの上に成り立つものだからです。
 という事は、仮にアベノミクスの三本の矢(財政、金融、成長)が的を射て、日銀も金融緩和に踏み切ったとしても、今のところ救われるのは投資ファンドと世界が求める金融界の積み増し分だけであり、仮に設備投資を企業に促そうにも、国内生産で安定的に世界に『言い値』で大量に売れるモノでもない限り、経済再生、国内雇用の復旧も遠く、延いては日本人口も増加に転じる事はないと言えるでしょう。
 つまり、いつ何時レイオフに遭うかと思えば、貯蓄率こそ増えても消費には回らず、景気回復からインフレ誘導までに必要とされる可処分所得の増加など、後進国の追い上げてと先進国、後進国の予測される先進国の自国貿易保護の元、20世紀型モノづくり産業頼みでは不可能だという事です。

【新産業としての国際観光(インバウンド)】 

 では、国内生産で安定的に世界に『言い値』で大量に売れるモノ。果たしてそんなモノが、まだ今の日本に残されているのか否か。もし無いと分かれば今の株高・円安も長くは続かず、またデフレに逆行です。
 航空産業はどうでしょうか。中部経済圏では期待の声も大きいようです。
 しかしNo.60正月号にも書きましたが、官民折半1200億円以上の開発費を投じたMRJが仮に一年で、目標である1000機もの受注達成ができたとしても、その売上は3兆5000億円にとどまります。これは年間の自動車産業界全体の売上の僅か12分の1以下、フランスの外国人観光客による外貨獲得年間4兆4100億円の8割にも満たないものです。
 この4兆4100億円は、ATF(フランス観光開発機構)の2009 2010の訪仏外国人による年間売上高490億USドルを、私が1ドル90円で換算したものですが、この国の海外からの旅行者数は日本の10倍近い年間7900万人もありますので、割り算しますと平均客単価は620USドル、5万5800円に換算されます(金額からみて航空運賃は含まれてはいない事がわかります)。観光産業の直接雇用は100万人、間接雇用も100万人、名目GDPに占める観光GDPは6.3%です。
 その観光GDP割合を先進国中多い順に並べてみますと、スペインが11.0%、オーストリア6.4%、フランス6.3%、スイス5.1%、ニュージーランド4.8%、オーストリア3.9%、イギリス3.4%、ドイツ3.2%、ノルウェー3.1%、アメリカとスウェーデン2.6%、フィンランド2.4%、カナダ2%で、日本は僅かに1.9%、更に外国人観光客受け入れの国際順位は後進国にも抜かれて30位です。
 つまりこの事は、いつまでもモノづくり競争に固執するよりも、日本にしか無いジャパネスクを生かして訪日外客を増やす外貨獲得政策の伸びしろが、まだ残されているという事であり、これがサスティナブル(持続可能な)税収源と地域雇用にも結びついてゆくという事です。こうなりますと、首都圏からの週末や連休誘客、安近短日帰客の人数ばかりを数えて喜んでいるレベルではなくなってくると思います。
 その為に必要なのは、一にもニにも、物価水準の近しい国へのプロモートですが、その戦略としては、たとえは半世紀前の英国のように映画やテレビシリーズの積極的な輸出政策が奏功すると考えられます。ソフトコンテンツには、自治体だけでは作成困難な『ストーリー性』があるからです(韓国がその実践レベルにある事は、昨年の教授のセミナーにもあった通りです)。
 はたしてアベノミクスが限界点を迎える前に、日本経済を支える新産業としての国際観光が立ち上がるか否か。
 考えるべきは、如何にして邦人の海外旅行者数の倍以上のインバウンドを誘致するかの方法論に尽きると思います。

【奈良ならレポート0221】

 小春日和だった先月末とは打って変わって今回の奈良行きは、小雪舞うなか耐寒遠足となりました。御同行は紀北町観光協会局長と本居宣長記念館館長、そして松阪市観光協会の監事。会見は既に20日前に済ましていますので、今回はパンフレットの補充と市内ウオッチです。
 ただしその前に今回は、三重県庁に寄って『美し国おこし・三重』を所轄する地域連携部の副課長と主幹、主査に、『城郭めぐり』と『宣長ウォーク』の紹介を行なって参りました。御存知のように、この地域力向上を主眼とする企画は、観光集客の為のコンテンツづくりとも重なる部分が多いので、もしも協働体制がとれるのならば相互プラスになること請け合いで、たとえ予算が無くても一人一人の力と権限が合わされば1+1が3にも5にもなって、真冬のセントレアに二日間で6万7000人を(それも場所代タダで)集める事だって出来るという事を、広く知っていただく機会を得る事ができると思います。
 
 さて、予定通りの行程で正午過ぎに入った奈良市内。今回は意外と言ってもいいぐらい、観光客の姿を見かけない状態でした。いくらオフシーズン、ノーイベントの日にしても、過去4年間で最も少ない印象を拭えません。見かけた観光バスも僅かに1台、奈良公園にしても人より鹿の方が多いくらいで、煎餅を買ってくれる観光客がいないからなのか、歩道脇の植え込みにある新芽をしきりに漁っている光景もありました。36万人都市の市民で賑わう駅前商店街とは対照的です。
 実は前日に大阪に出張中の大宇陀温泉の支配人から、(お客さんが)伊勢へ流れているとの話があると聞いていました。そこで私は翌22日、伊勢神宮にも行って確かめてみることにしました。時間は13:00 13:25にかけてで、正式参拝ならば外宮の方が賑わう筈の時間を狙ってです。
 しかし写真の如く、確かに内宮前については安いツアーバスと日帰り客で例年通りの賑わいを見せてはいるものの、今回の遷宮年肝入りの外宮の無料駐車場はこんな状況でした。とても奈良のお客さんを根こそぎ集める程ではないと言えます。
 では、市場は何処へ行ったのか。島根でしょうか。
 この年末年始の関空からの出入国は、LCCのおかげで過去10シーズン最高の44万3500人もありました。そして今は海外旅行が格安のシーズンでもあります。関西圏においても市場の海外流出が、続いているのではないかと思います。。
 因みに三重ではこの1日に、観光庁初代長官のインバウンドセミナーがあります。私はその席に以下の質問を用意しています。
 みんなで一緒に考えなければならない問題だからです。

【本質的な質問】

「今年も中国大陸や韓国へと旅行するつもりでいたが、領土問題を受け、国内旅行に切り替えた」
 昨年の秋よりこのような事例が増えてきた事は、ここにお集まりの皆様ならば既にお気づきの事と思います。中には、国内旅行では予算が余ってしまうので、とびきり上等の料理で頼むとの団体も実際に在ります。
 どうやら今、国内の観光サイトには『市場の回帰』が起きているようです。
 しかしこの事は、裏を返せば、空前の海外旅行ブームによる旅行市場の流出が、これまで如何に地域の観光産業を追い詰めてきたかという証しにもなると思います。
 昨年1月から12月までの海外旅行者数は概算で1849万人。特に領土問題が顕在化する前の上半期の伸びは前年度を上回る勢いでした。
 対するインバウンド数は半分にも満たない僅か836万8100人です。
 私はこの差が客単価と共に縮まれば、当面の淘汰危機は回避され、更にインバウンド数が海外旅行者数を上回れば、地域経済と雇用環境は大きな改善が見込まれる事になると思います。
 遡れば10年前、2003年の観光立国懇談会の提言を受け、2008年に創設された観光庁は、以下のような数値目標を掲げていました。

一 2010年までに訪日外客1000万人
二 2011年までに国際会議開催件数の五割増(252件以上)増し
三 2010年までに国内旅行の年間宿泊数を一割増しの四泊へ
四 日本人の海外旅行2000万人
五 2010年までに国内における観光消費額30兆円

 ご存知の如く、これらは何一つ達成されてはいません。
 比較的いい線だとされている国際会議も、その開催割合はアジア諸国の追い上げで、実のところ2割にまで下がってきているというのが実情です。それはそれでプロバガンダ上では問題ですが、しかし最も地域経済にとって見過ごせないのは、なぜ海外旅行による国内市場の送り出しが2000万人で、インバウンド目標がその半分だったのかという一点に尽きるかと思います。海外旅行による市場流出に対する補填人数がその半分しかなく、しかも来るのは国内旅行よりも低単価インバウンドで、場合によっては補填も要するとあっては『不平等貿易』もいいところだからです。
 ビジットジャパンの最終目標はインバウンド3000万人。ならば、その取引材料としての海外送客はさしずめ目標6000万人というところでしょうか。しかしこうなりますと、高齢化社会における観光市場の自然減も重なって、多くの地域では残骸観光施設を抱える事になると思います。
 ここ1年間で消えたホテル・旅館は全国で109軒にも上ります。お馴染みの『ホテル百万石』『琵琶湖温泉紅葉』も、もうありません。
 どうしてこのような本末転倒、手段が目的と化してしまうような目標設定が、発足当初から成されたのでしょうか。

【インバウンドセミナーレポート2013.0301全長版】

 時の趨勢か、それとも単なる偶然か、初代観光庁長官だった本保教授が昨年4月に創設した『インバウンド研究会』の参加府県は、北海道に山形、三重と、いわゆる民主の王国に、国交省と外務省、そして内閣府の大臣だった議員を輩出した京都でした。
 しかし、政治的意図のない教授の論理は科学的であり、私のデータ分析とも多くの点で整合性をみています。たとえば昨年3月のシンポジウムで申されていた「三重県は中国人(大陸の)インバウンドは不向き」云々のくだりは、長い間警鐘を鳴らしてきたO.H.M.S.Sレポートの心強い裏付けにもなりました。
 今回も楽しみです。
 ところが今回のシンポジウムは、私の質問に対して前年、参拝行動も観光客としてカウントしてもいい(異論があるのは承知の上で、である)とか、県南部の者が北部にあるジャスコへと買い物に出掛けるのも観光客だとか、はては三重県は知名度がないから伊勢で売って下さいとまで申されて聴衆をドン引きさせた、教授の弟子のY氏がコーディネーターでした。したがって内容も、岐阜県白川郷の成功例の紹介から、マーケティングでは常識であるコンテンツの選択とターゲットの集中論を経て忍者と海女、つまり北勢と南勢の連携提案に落ち着き、最も根本的な問題点である国の認識の欠如については、自身、観光庁に在籍していたにもかかわらず、かすりもしないものになっていました。そもそもインバウンド政策は、世界の中の日本、日本の中の紀伊半島、紀伊半島の中の三重県、三重県の中の自治体、自治体の中ののコンテンツとの整合性を求めなければならないものです。なのに国家間レベルの話は冒頭の、教授の短い挨拶の中で触れられた韓国のメディア戦略ぐらいで、何故インバウンドの国家目標がアウトバウンドの半分なのかとの【本質的な質問】も本題とはレベルが噛み合わず、それは根拠なき単なる数字の語呂合わせだったとの愚答を、再び聴衆の前に晒すだけでした。
 おかげで私は短い質問時間を借りて、実は新年度の観光庁の予算は僅か104億しかなく、韓国はその3倍をかけているという事も自分の口で語らなければなりませんでした。そして自治体レベルで勝てる相手ではない。これは『国家間レベルの戦い』なのだとも。
 ちなみに【本質的な質問】の答えとは、実はNo.61『地域振興と観光産業のかかわりについて2013』2月号の中に【観光立国を問う】と題して既に配信してあります。私はこの裏付けが欲しかったにすぎませんでした。みなさま御参照下さい。
 なお今回も、この質問状は休憩の合間に教授に渡す事ができました。
 教授は昨年の質問状【三つの質問】(No.51の4月号参照)についてもよく憶えておいでで、今回は受け入れ側と相手国との相性の問題から、ただいま進行中の『城郭めぐり』を少し紹介させていただき、昨年の講演内容にあったインバウンド1億人市場の可能性についてもお尋ねする事ができました。しかし今回は予想に反し、島国日本では地続きのヨーロッパのようにはいかないから、3000万人以上は無理だとの意外な答えが帰ってきました。
 はたしてこれは、大陸市場を引き算した果ての結論なのでしょうか。
 中間提言の形を借りたセミナーは、国交省から赴任した県観光次長と県内事業者とのトークセッションを経て、三重県コンテンツの絞り込みの結果として『海女と忍者』に絞るべきであり、他の地域はそのセールス期間は我慢せよとの結論へと進行して行きました。しかも教授も、かつての教え子でもある次長にこれを念押ししてもみせます。三重の事がまだよく分からない次長はたじたじです。
 確かに予算が限られている以上、選択と集中は必要なのかも知れません。しかしそれはあくまでも市町村間レベルの話ではないのかと私は思います。新年度からの三重のキャッチフレーズ『実はそれ、ぜんぶ三重なんです!』とも矛盾します。
 さて、トークセッションの佳境はレジュメに沿ってランドオペレーターの活用論へと落ちつきました。ランドオペレーターとは地域観光コンテンツの開発とツアー運営を受け持つ受け皿会社の事です。しかしこのビジネスについては問題があり、かつて観光販売システムズを退職した私の友人も事業の立ち上げにまでは漕ぎつけたものの、ターゲット国だった中国が急遽『一国一国営企業制度』となった為に、敢えなく頓挫した経緯があります。(3年前の『O.H.M.S.S.奈良なら訪問団』に御参加いただいた折、私は車中で警告もしたのですが)
 なぜならば、これは受け持ち国が少数偏向では労多くして実入り少ない事業であり、それ故リベート無しでは成立し得ないとも云え、それだけにスケールメリットを活かした団体集客が必然となって、後進国相手のツアー商品しかビジネスとしては成立し得ない宿命を持っているからです(営利目的でない行政ビジネスは別です)。しかも、受け入れ観光施設側にとっても客単価が抑えられ、Rが嵩む恐れもあります。送り出し側と受け入れ側の両方にRが発生するからです。 
 このバッドメカニズムについては、昨年【追跡!真相ファイル】でも取り上げてています。No.56の9月号に記録してありますので御参照下さい。
 最後に、この選択と集中案『忍者と海女』につき、津市観光協会からは支援要望、松阪市観光協会からは「松阪牛も」の発言があった事は、各市を代表する立場としては至極真っ当なものであり、私はその総括として最後の最後を待ち、時間超過も承知の上で、イアン・フレミングの話しをさせていただきました。これは聴衆席でサクラとして混じり込んで、質問のトリを取ろうとした無免許旅行社の発言の印象を落とすと同時に、観光次長への要望という形をお借りして、後ろのみなさまの耳こそ、深く届けば幸いかと思いまして。
 そのディティールは、No.59の12月号に詳しく記してあります。
 オールジャパンを目指すのならば、先ずオール三重が必要だからです。
 みんなで頑張りましょう。
 なお、後日O.H.M.S.S.岐阜に問い合わせてみたところ、確かに多少は持ち直してきてはいるものの、一番来て欲しい欧米人の戻りは相変わらず少ないとの事で、また、多くのアジア人のお目当てが『雪景色』にあるという事もきいた次第です。

【JNTOの集計による、2012年の訪日外客数 多い国順】
[ ]は2011のGDP順位 ( )は震災前2010との入込み比較

01位 韓  国[15] 204万4300人(ー16.2%)
02位 台  湾[25] 146万6700人( 15.6%)
03位 中国大陸[ 2 ] 143万0000人(  1.2%)
04位 アメリカ[ 1 ] 71万7300人(ー 1.4%)
05位 香  港[38] 48万1800人(ー 5.3%)
06位 タ  イ[29] 26万0800人( 21.4%)
07位 豪  州[12] 20万6600人(ー 8.5%)
08位 イギリス[ 7 ] 17万4200人(ー 5.3%)
09位 シンガポール[36] 14万2200人(ー21.4%)
10位 カナダ[11] 13万5600人(ー11.5%)
11位 フランス[ 5 ] 13万0600人(ー13.5%)
12位 マレーシア[34] 13万0300人( 13.8%)
13位 ドイツ[ 4 ] 10万9000人(ー12.4%)
14位 インドネシア[16] 10万1600人( 26.0%)
15位 インド[ 9 ] 6万9100人(  3.4%)
16位 ベトナム[52] 5万5200人( 31.9%)
17位 ロシア[10] 5万0200人(ー 2.4%)
   その他[※] 66万2600人(ー 0.3%)

   総  数 836万8100人(ー2.8%)      
  ※ブラジル[6]、イタリア[8]

 外務省経済局が毎月公表している日本産品の輸出入等関連措置レポートによると、震災関連で輸入規制をかけたままにしている国は、今年の2/12現在で、中国、香港、台湾、韓国、タイ、シンガポール、マレーシア、インドネシア、インド、アメリカ、ロシア、ブラジル、エジプト、そしてEU諸国となっています。
 これはJNTOが、放射能に係る風評被害の強い国としてあげた、韓国、シンガポール、EUとも合致します。
 しかし中国だけはその限りではありません(暴動迄ではありますが)。いまだに東京を含む10都県からの食品、農産品、飼料を輸入禁止にしたままである、にも関わらずです。
 不思議です。
 ですがこの風評の払拭は、日本の飲食の安全を担保する意味に於いて、今年のインバウンドの最重要課題である事は間違いありません。
 そして日本の食文化は、それを育んできた日本の歴史や文化といったエキゾチズムとセットで、GNIの高い先進国のお客さんにこそ重点的なプロモー卜を行う必要があると思います。なぜならば、人数ばかりが多くても後進国の低単価団体は薄利であり、雇用にまではなかなか結びつかないからです。
 以下に、先月『経済局国際経済課』から公表されました2011年の、一人当たりの名目GNI(国民総所得)の上位20カ国をあげておきます。ここに『成長著しい国』は一つもありません。

01位 ノルウェー  8万8890 US$
02位 カタール   8万0440 US$
03位 ルクセンブルク7万8130 US$
04位 スイス    7万6380 US$
05位 デンマーク  6万0390 US$
06位 スウェーデン 5万3230 US$
07位 オランダ   4万9730 US$
08位 アメリカ   4万8450 US$
09位 フィンランド 4万8420 US$
10位 オーストリア 4万8300 US$
11位 ベルギー   4万6130 US$
12位 カナダ    4万5560 US$
13位 日本     4万5180 US$
14位 ドイツ    4万3980 US$
15位 シンガポール 4万2930 US$
16位 フランス   4万2420 US$
17位 UAE    4万0760 US$
18位 アイルランド 3万8580 US$
19位 イギリス   3万7780 US$
20位 イタリア   3万5330 US$

【関税の必要性】(3/5夕刊三重掲載 オリジナル全文) 

 ありていに申せば、関税とは自国の産業を保護するものである。したがって、これを例外なく撤廃し自由競争に委ねれば、競争力の弱いものは淘汰される事になる。
 この事は、近年の地域観光産業が置かれている状況を見れば分かりやすいかも知れない。
 政府観光局によると昨年1年間の訪日外国人は836万8100人。これに対して邦人の海外旅行者数は1849万人もある。一昨年も、訪日外国人621万8752人に対して海外旅行者数は1699万人で、何れも年間1000万人を超える開きがある。これは、700万人から800万人とも云われる『団塊の世代市場』をも上回る人数でもあるのだが、その結果として国内では昨年一年間で109軒ものホテル、旅館がクローズしている。知られた所だと『びわ湖温泉紅葉』も『ホテル百万石』も、もう無い。これは歯止めなく割安な海外旅行を促進した結果として、JALの早期再建こそ果たせたものの、国内の旅行市場は減少し、低価格競争に拍車をかけたからである。
 本来ならば、海外旅行関税が必要だったのではないかと思う。
 そんな折しも、今年の1月末に50人の訪問団と共に韓国入りした日本旅行業協会の会長(○階衆議院議員)が、李大統領から韓国経済に寄与した産業人として、最高位の『金塔産業勲章』(一等級)を授与されたとの報。2002年の運輸大臣時代以来二度目の勲章授与である。
 この事から会長が(或いは日本の大手旅行業界が)、昨年の韓国の日本人集客目 標350万人達成に多大な貢献を果たしていたという事が分かる。
 この年の訪日韓国人は204万4300人しか来ていない、にもかかわらずだ。

【It, all in Mie Prefecture】

Dear. B 0213.0210

When your father came to Japan, can not be found, the enclosed picture is the castle which is surrounded by the sea. Ishigaki is a foundation two years ago that has been reproduced.Japan's central location is the city of Toba, Mie Prefecture.
This Mie Prefecture, which was written by Ian Fleming "You Only Live Twice" is everything.Ise Bay Ferry,Ryokan,Ise-ebi,Statue of Kokichi Mikimoto, Pearl, Shrine of Ise, Matsusaka beef, ninja,And, Basho's haiku.
Japan lies between the communist bloc and the liberal bloc is also referred to as spy heaven. I think it will be appropriate to the BOND nascent stage.

【それ、全部三重なんです】

同封の写真は、あなたの父が日本に来た時に発見できなかった、海に囲まれた城です 。
一昨年その土台である石垣が再現されました 。場所は日本の中部、三重県の鳥羽市です。
この三重県には、イアン・フレミングが 『007号は二度死ぬ』に書いたものが全て揃っています。伊勢湾フェリー、旅館、伊勢海老、御木本幸吉の像、真珠、伊勢神宮、松阪牛、忍者、そして、芭蕉の俳句。
共産主義圏と自由主義圏の間にある日本はスパイ天国とも言われています。新生ボンドに相応しい舞台になると思います。

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【Basho's haiku description in Ian Fleming's"You Only live Twice"】
イアン・フレミングの"007号は二度死ぬ"から芭蕉の句

 In the bitter radish
 that bites into me, I feel
 the autumn wind.
 身にしみて
 大根からし
 秋の風

 The Butterfly is perfuming
 its wings,in the scent
 of the orchid.
 蘭の香や
 てふの翔に
 たき物す

 In the fisherman's hut
 mingled with dried shrimps
 crickets are chirping.
 海女の屋は
 小海老にまじる
 いとゞ哉(カマドウマかな)

Bond also compose haiku there
そこでボンドも一句ひねる

 You only live twice
 Once when you are born
 And once when you look death in face.
 人生は二度しかない
 生まれたときと
 死に直面したときと

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No.63『地域振興と観光産業のかかわりについて2013』4月号

【Let's do it】

 20世紀後半の観光産業は、国の稼ぎ頭だった重厚長大製造業の、いわば受皿たる余暇産業として位置付けられ、観光に従事する業界自身も長らくこれに甘んじてきていた。盆正土日と祝日連休に来る比較的高額な顧客に加えて、平日は平日で、安価ではあってもスケールメリットがある団体客で、そこそこ潤っていた為である。多くの経営者は国内需要だけで充分であると、何の疑問も抱かなかった。
 しかし近年、団塊世代を中心とした海外渡航ブームのおかげで、宿泊を伴う国内旅行のパイは大きく減少、埋め合わせされるべきインバウンド数も海外旅行者数の半分以下と極めて少なく、少子高齢化によって新規マーケットは縮小の一途にある。日帰りドライブ客ばかりが増えても、昼食とお土産だけでは地元に落ちるお金は安く、発地は近場に限られ、滞在時間も短い。これが現状である。
 昨今各地で観光政策の見直しと推進が急がれる背景もここにある。
 昨年、観光庁の元長官は、日本は国と県と市町村との取り組みが皆バラバラなので、観光立国はなかなか進展しないと申されていた。とりわけ縦に長い三重県の場合、その温度差というか意識の開きは大きい。なにしろ本県の産業区分は北勢・中勢・南勢と明確化しており、その中で伊勢神宮と国立公園を有する南勢は、たとえモノづくりとは無縁であっても長らく県を代表する観光地として、リゾート法の施行いらい更にその輝きを増していったのだから。おかげで影となった周辺の市町村は『うちは観光地ではないですから』と、多気町は五桂池周辺だけを余暇ゾーンとして専ら大企業の立地推進に走り、大きな水田地帯を擁する明和町は農水の振興と遺跡の調査、街道の要所にあった松阪市も『ぶらりと3時間』だけ寄ってねと、非常に消極的なものになっていった。
 つまり観光産業に対する依存度や価値観といった温度差が、地域によって非常に大きくスタートラインも違う為に、これが今にちの知名度の差となっていまだ引きずっているのである。
 これが、県主導で『観光立県』できない理由の一つだと思う。
 したがってプロパガンダではなく、本気で観光産業による地域経済の活性化を目指すのならば、各自治体同士の『連携』が欠かせないという事になる。その中で必要なのは、何を各地の宝とし、いつ、だれを、どれだけ呼ぶのかのみならず、幾ら見込むのか、その為には何を創造して何を潰すのか、そして広報手段や、どこと連携するのが交通工学的に理に適うのかを解き明かす事になる。
 この点において、斎宮史跡を宝とし、内宮・外宮・斎宮として伊勢市との連携を決断した明和町は、歴史コンテンツの視点からみれば理に適った選択といえよう。
 たとえ斎宮が神社ではない、にしてもである。

 ちなみに三重県各地に点在する宝を、点から線、線から面へと結ぶと先月号で紹介した、私が007製作プロダクションへと写真付きで送った手紙の内容となる。ちょうど今はまだ新作のロケハン前なので、運良くロケ地候補の一つにでもなればみっけものと考えての事である。なにしろ国際的知名度のある映画なので、ロケ隊誘致としてはトップクラスであり1966年当時と同じ規模ならば、その人数は報道陣も含めると200人以上の1シーズン滞在となるからだ(詳細はNo.33『地域振興と観光産業のかかわりについて2010』の9月号補足、もしくはNo.59『2012』12月号の企画書を御参照下さい)。
 ただし三重県がメインの舞台にならなければ、国際的知名度は上がらない(『スカイフォール』に出てきた軍艦島をみて、一目で長崎だと分かるのは日本人の中の、それもほんの一部だけである)。

【耐震改修促進法案改正案】

 今はまだ小康状態ではあるが、少子高齢化による人口減少で、今後の国内マーケットは減少が避けられない。団塊世代の退職ラッシュも今年をもって一巡してきた以上、そのスピードは(韓国のように移民を大量にでも受け入れない限り)これからだんだん加速されてくるだろう。ゆえに、いつまでも小規模事業者を放置しておくと、中規模も大規模も伸びしろが制限されてくる。ならば国は、今のうちからハードルを上げつつ整理していく必要があると考える。
 かどうかは知らない。ひょっとしたらチェーンスーパーに席捲された商店街や、映画館、飲食業界、パチンコ業界、レンタルビデオ業界のように、圧倒的に個人経営者が多かったこの業界を、体裁よく株式上場の大手チェーンに収めて再編させるのが目的なのかも知れない。
 あるいはその両方か。
 何れにせよ、国土交通省が今国会に提出予定とされる、築後30年超の5000平方メートルを超えるホテル、旅館に義務づけられるこの法案は極めて唐突であり、その対象も600館と非常に多い事から、地域経済への影響はかなり大きいと思う。なぜならば焦点の一つとして、自治体がどれだけ(民間事業者に)補助できるのかというのが有るからだ。一軒や二軒ならまだしも、名だたる観光地にあっては、そのスケールたるや難しい注文になるだろう。
 3/16の報道によると、業界からの要望を聞いた自民党の観光産業振興議員連盟は、期限の延長や結果公表についての折衝を行なったようだ。だが、真意は耐震診断と改修にあるとする国土交通省は、検査期限の2015年は譲らず、診断結果の公表については期限は未設定なるも、自治体に対しては補助金制度が確立されるように行脚したいと述べるにとどまった。ちなみに5000平方メートル規模の耐震検査には600万、改修には2〜3億円がかかるそうだ。
 こうなると、人口減少下にあっても唯一右肩上がりのポテンシャルを持つ、インバウンドによる観光立国も間に合わない。儲けさせてくれない国も蹴るしかないだろう。
 そして、まったく設備投資を必要としない旅行業の業界も、他人の設備で長らく商売してきた以上、自らが手配する顧客の防災の観点からも、何らかの分担を持つべきではないかとも思う。

【数字の評価】 

 前年度1億5000万円アップの7億5000万円。
 三重県の観光予算が決まった。そのうち県観光キャンペーンには5億2792万円である。転ばぬ先の防災予算33億3855万とは違って、観光キャンペーンの予算は先行投資的な性格が強い。それだけに観光を科学するのならば、バラマキや県内需要の掘り起こしだけでなく、県外から何人来たか、また、費用対効果等の追跡調査と評価も必要になると思う。
 しかしその為には、先ず観光統計の見直しが必要だ。
 二年にわたって毎月まったく同じ入館者数を県に報告していた『○つつ木館』(H20版とH21版の推計報告書。12月だけ変えていた)のようなケースや、毎年同じような数字である祭りの動員数、そして、内宮参拝者数に外宮参拝者数も加えてもいいとする虚数の容認、面子の数字が有るからだ。
 どうしてこれらが統計法に抵触しないのか不思議でもあるのだが、そこから得られる数字は科学的と言うよりも、むしろマジックだといえる。
 過大評価を鵜呑みにして、迂闊に設備投資すると後が大変なのだ。
 これが官と民との感覚の違いである。

【議員の評価】(3/16付夕刊三重掲載)

⇨このギャップは、東日本大震災の記者クラブ報道とネット情報との差異にも鑑み多くの教訓と示唆を日本人に与えたが、これらは無償ボランティアや○○反対運動等、市民一人一人の学習意欲と行動力を呼び覚ますものになった。これは今回の未曾有の大災害無くしては決して表出するものではなかっただろう。
 その根底にある『もう、他人任せではいられない』との直接民主主義の目覚めは、日本人の進化と捉える事もできるかと思う。
 それだけに、この、誰かが何 とかしてくれるのを待つのではなく、市民みずからが直接アクションを起こそうとの考え方は、官僚のみならず、公費で活動している議員諸兄の、職分の進化も求める事になる。
 つまり市民有志レベルでできる仕事は、もはや評価には値しないという事であり、議員でなければできない、より高度な総括的な仕事に特化していく必要があるのではないかという事である。

【観光の概念】

 スカイツリーが有っても無くても、国内客、国外客問わず、日本で最も観光客を集めている都市は東京です。でも、東京都民にその自覚はありません。日本一の観光地だと云われても、ピンとはこないでしょう。
 ならば、この観光地との呼称自体に、何らかの思い違いがあると見るのが自然だと思います。
 ご存知の如く欧米では観光地の事を、Sightseeing ereaと呼んでいます。おそらく東京都民も、この『見どころエリア』という概念ならば、しっくり受け容れる事ができると思います。
 これは、イメージの問題です。
 したがって、我が町は観光地ではないとの言で観光産業が立ち上がらないというのであれば、それを市民誰もが抵抗なく受け容れられるようにするのが戦略だといえます。
 物見遊山の観光地ではない。サイトシーイングエリアだと。だからここにはドンチャン騒ぎも、傍若無人な振る舞いも、ポイ捨てもないのだと。
 さて、観光戦略を進めるには、先ず、遠くからわざわざ貴重な時間と費用を割いて我が町に来てくれるコンテンツとは何なのかを、市民総意で認識する必要があります。
 それが決まれば、それを内包するサイトがどのような性格のものなのか、つまり、リゾートの町なのか歴史の町なのか、遊園の町なのかギャンブルの町なのか、或いは、文学の町なのかサブカルの町なのか、避暑地なのか温泉場なのかといった、地域イメージは自然に決まってきます。
 業界31年の目で松阪市を見てみると、東京にはない日本コンテンツとして、歴史街道城下町出身の本居宣長と、海外的にも知名度のある食文化としての松阪牛、そしてローマ帝国やマヤ文明とも同期であった1600年も前の遺産、船型埴輪の三つが知名度メジャーだといえます。
 これらを中核に据え、知的好奇心に訴える歴史サイトシーイングエリアとすれば、松坂城や長谷川邸、御城番屋敷といった、どちらがと言えばマイナーなコンテンツも、関連性をもって脚光を浴びる機会が増えるものと私は思います。

【国内宿泊施設の利用に関する消費者意識と旅館業の経営実態調査から①】

 昨年2012年11月に、日本政策金融公庫が融資先に対して行なった『国内宿泊施設の利用に関する消費者意識と旅館業の経営実態調査』の結果を、某会計事務所から一冊分けてもらった。
 その調査対象は1987企業中、回答のあった799企業。これは昨年合併した日観連と国観連の日本旅館協会全3381軒のワンクォーターに相当するもので、消費者動向の方は、昨年一年間に国内の宿泊施設を利用した、個人へのネットアンケ5000名である。これらは、旧建設省系と運輸省系(北海道開発庁と国土庁も)が幅をきかす国交省外局である観光庁が、のんびり集計しているものよりも、調査対象が融資先事業者に限られているだけに、虚飾のないリアルなものだと思う。
 さて、全40ページからなるこの調査結果によると、震災年2011年に対する宿泊動向は、減少が増加を上回り、発地も近隣からの国内客、つまり安近短傾向が41.2%と最も多く、インバウンドに至っては僅かに5.8%にとどまっているとある。
 これでは昨年一年間で、実に109軒もの旅館が潰れたのも無理からぬ事だ。
 だが、その経営面へのマイナス影響として、いまだ47.5%が大震災をあげているのは事実誤認の点で問題である。同時に、円高をマイナス影響と答えたのも、『かなり』と『ある程度』と合わせても34.5%の認識しかなく、領土問題についてマイナス影響と答えたのは、僅かに17.8%しかない事も問題だ。
 なぜならば、確かに震災直後こそ出控えや自粛もあって、歓送迎会や花見等にもキャンセルが相次いだものの、無事な地域だけでもお金を使いましょう、それが日本の為になるとの政府広報が奏功し、被災地を除く多くの地では、早くもGWには完全に旧に復していたからである。
 未曾有の国難の中にあってもJALの早期再建は予定通り結実、円高喧伝のおかげで海外旅行も大盛況だった事も忘れてはならない。
 つまり、大震災以上のもっと大きなマイナス要因、それも政策的なボタンの掛け違えが隠れているわけで、アンケートの評価分析としては足りないという事である。
 はたして600万から800万人はあると期待されていた、団塊の世代市場はどこへ行ったのか。
 その最も大きなマイナス要因は、JNTO統計にある月別推計値の年間出入国格差を見れば誰でもすぐに合点がいく筈である。

  http://www.jnto.go.jp/jpn/news/data_info_listing/index.html

 残念ながらこの事は、広告主の意にそぐわないのか、新聞・テレビはアウトバウンド(海外旅行)過多による国内市場の海外流出については全く報道していない。NHKもである。
 また、インバウンドが不調なのも、何も領土問題だけが原因ではない。もっと大きなマイナス要因が外務省経済局や農水省のここにも出ている。

  http://www.maff.go.jp/j/export/e_info/pdf/130322.pdf

したがって、この認識不足によって生じたとも取れる選択質問は、ここから導き出される回答自体、事実誤認を追認させるばかりか、当然の帰結として、天災理由ならばいずれ時が解決してくれるであろうとの、誤った判断材料にさえなりかねないと思う。
 この事から国内にある宿泊施設は、自衛の為にも国内外へと視野を広く取ると同時に、富裕層国内客が減った分だけでも富裕層インバウンドで取り返すぐらいの気構えが必要であるといえよう。でなければ、インバウンドの必要性を感じないため集客取り組みも実施していないと答えた49.6%共々、融資対象としては不適格ではないかと思う。人口減少社会では市場の先細りが不可避だからである。
 しかしながらこの点にも鑑み、今後の経営者サイドの取り組みとして、41.8%の企業は情報通信技術の積極的な活用をあげている。これは的を射ているとみていい。なにしろネットエージェント利用は81.9%、自社ホームページ利用も47.3%の時代であり、その一方、純利益の三分の一近くを仲介手数料として持っていく大手旅行代理店からの利用は、既に22.9%にとどまってもいるのだから。
 インバウンドもそうだ。
 宿泊サイト経由による成約は45.3%、自社ホームページからも37.2である。国内にある旅行代理店経由は僅か8.1%、海外の提携代理店経由も僅か14%しかない。
 個人経営vs世界の時代は、言い換えれば個人vs個人の時代でもある。問屋の在庫調整機能や代理店のアイデンティティは大きく変わる。それだけに国交省の旧運輸省系の所轄にある旅行業界は生き残りを掛け、空港経営や航空会社の為にも、今後更に海外送客に力を入れる事はやぶさかではない。
 つまり、企業個々の情報発信能力が問われてくるのである。
 なお、バックグラウンドとして、地域文化と観光情報の発信能力とセンスも同時に問われる事になる。知情意に訴追しないカタログ的なホームページは、今や評価には値しない。これは年度予算僅か104億の観光庁が余りにも非力であるからで、その分しっかりと地域行政がプロデュースできないと、個々の努力も水の泡になりかねないという事である。

【付記】

 訪日外客数は836万8100人からマイナス228人の836万7872人へ、出国邦人数は1849万0000人からプラス638人の1849万0638人へと、まだ3月号に再掲した【本質的な質問】の執筆時点ではプレスリリース用の概算値だった、JNTOの昨年一年間の観光出入国数値が、確定値へと変わったのでここに記録しておく。

【国内宿泊施設に関する消費者意識と旅館業の経営実態調査から②】

 前年の2011年に比べ、インバウンドが増加したと答えた宿泊施設で、二割前後以上の増加をみた発地は、台湾からが38.6%、ヨーロッパが36.4%、香港が22.7%、そして米国の18.2%となっている。次点は韓国とオセアニア諸国のそれぞれ15.9%。そして13.6%のシンガポールを間に挟んで、中国と成長著しいとされるアジア諸国はそれぞれ11.4%。その他が2.3%。
 これにより、急回復マーケットがどこであるかが一目で分かる。上位4ヶ国だ。
 幸いにして台湾については、目下、国も各都道府県も集客に力を入れているので心配はない。ただ一点、人口が2300万人しかない事を除いては。
 それだけに、同じ自由主義圏にありながらも文化圏の違うヨーロッパは、領土問題による対立もなければ、放射能による汚染懸念も和らいだ感もあり、これからの最重要市場である事がここからも分かる。
 だが、この欧州圏は通貨危機ばかりが取り沙汰されて久しい。
 しかしながら、『地域振興と観光産業のかかわりについて3月号』補足の【JNTO集計による2012年の訪日外客数  多い順】にも書いたように、ヨーロッパ諸国のGNIは日本並み、あるいはそれ以上に高い(現に不景気日本からも、年間約1850万人が海外旅行に出掛けている)。加えて、もともと地球の裏側から来るビジターは中間所得者層から上であり、成長著しい国からのツアー客よりも客単価が高く、歴史文化観光を楽しむゆとりと『知情意』も身につけている。リスクは少ない。
 それゆえ、歴史文化サイトシーイング圏が、これから力を入れるべき市場であると言える。
 問題もある。
 紀伊半島に在りながらも中部経済圏に属する三重県は、セントレアが殆どアジア便ばかりとなった為にヨーロッパからの直接導入については期待が持てない。私の友人O.H.M.S.S.岐阜も、なかなか欧州客が戻らないという。
 それだけに、以前のようなブルーアイの再来を望むのであれば、宿泊施設個々や地域観光行政のホームページで『本物歴史文化コンテンツ』と共に、関空からの導線を再びクローズアップしていく必要がある。なぜならば、調査結果の言を借りるまでもなく、その殆どは旅行会社の仲介ではなく直接ネットで申し込んでくるからだ。
 この件にも鑑み今回の調査には、旅行代理店へのヒアリング結果も参考資料として添えられている。
 そこには成田からのゴールデンルートに加えて、関空からの第二ゴールデンルートやエメラルドルートの直島、姫路城や厳島神社、日光といった世界遺産の人気ぶりを示唆すると同時に、日本の旅行社には介在の余地がない為、できれば宿泊施設事業者からの逆提案を期待するといった本末転倒ぶりまで書かれている。
 どうやら大手旅行社が、交流促進事業などの自治体向けビジネスに噛んできた真意もここにあるようだ。
 ちなみに中国インバウンドについては、送客・受客ともに中国系の会社を使う為、日本の旅行会社は全体の一割程度の受け入れしか与れないともある。
 ドラゴンルート(昇龍道)も、そうならなければいいのであるが。

【国内宿泊施設の利用に関する消費者意識と旅館業の経営実態調査から③】

 さて、消費者意識の項によると、最近一年間に行った旅行先で最も多かった都道府県は東京都となっており、調査対象5000人のうちの20.5%を占めている。次点は北海道で14.2%、以下、京都府12.0%、大阪府11.9%、神奈川県11.7%、静岡県10.9%、長野県10.7%の順に続く。これ以後は一桁台である。
 ところが、これを地域別で見ると、関東圏39.8%の次点には中部圏の35.4%が入って、その次が近畿圏32.4%、九州圏18.6%となり、北海道圏14.2%は五番目にしかならない。
 この事から、訪問者が多かった上位都道府県は、実は隣接人口密集地からの安近短導線客で底上げされているとみるのが妥当であると云える。
 次に、今後行ってみたいとする旅行先だが、最も人気があるのは北海道の54.5%で、次が沖縄県の50.3%となっている。だが現実に訪問したとの回答は、前出の北海道が14.2%で、沖縄県も6.7%でしかない。
 果たして、このギャップは何なのか。
 そもそも旅行とは、費用と時間さえ許せば、できるだけ生活圏から離れた非日常的空間を求める傾向が強い。それだけに、この差は単に人気と現実とのギャップではなく、旅行市場が旧運輸省寄りの政策と円高のおかげで、大きくアウトバウンドへと流されている事を裏付けている。
 北海道や沖縄旅行が高くてパスされるのではない。海外旅行が過度に安すぎるのだ。
 そういえば、今年の初めに観光経済新聞が報じた自治体アンケの中で、沖縄県は悩みとして海外旅行との競合をあげていた。
 JNTOによると昨年一年間のアウトバウンド数は実に1849万638人。今年に入ってからも、既に2月末の時点で279万人台である。インバウンドはその半分しかないマイナス収支だ。
 しかし一般にこの認識は全くない。大口公告主への配慮かどうかは知らないが、商業新聞が触れたがらないからである。おかげで不景気だからお客さんが減ったとの勘違いも起き、その結果、デフレよろしく価格競争が生じる事になる。
 これは地域観光経済にとって、由々しき問題である。
 なお、この調査結果によると、三重県へ行ってみたいとの回答は8%の一桁である。実際に昨年行ったとの回答も6.1%しかない。と言うことは、中部圏へ行ってみたいとの回答者32.9%のうちの24.9%は、余所へ行ってみたいという事になる。これは出入国格差以前の困った問題だ 。

【国内宿泊施設の利用に関する消費者意識と旅館業の経営実態調査から④】

 今回の調査では、最近増加傾向にある一人旅の動向についてもピックアップしているが、そのユーザー達の指向は、地域の歴史と文化に触れる『史跡めぐり』が37.9%でトップである。
 こういう客層の多くが、地域の食文化にも関心がある事は、やぶさかではない。
 にもかかわらず、この『おひとりさま』の旅館利用率は僅か16.4%にとどまり、ホテル利用が84.1%にものぼる。
 31年間の経験からみれば、これはお客さんの好みと云うよりも、どちらかと云えば旅館側の問題ではないかと思う。なぜならば、旅館は団体集客上『一部屋なんぼ』で売っている施設が多かった為に、長らく『おひとりさま』を敬遠してきたからである。
 例えば、標準タイプの平日二名一室5万円売りの部屋ならば、一泊二食で一人あたり2万5000円、三名利用ならば1万8750円、定員いっぱいの四名利用ならば1万2500円になるが、『おひとりさま』利用ならば2万8750円から最大5万円(料理ランクは上がるが)と高額になる上に、繁忙期予約に関しては、まだ空室があったとしても締め出す状態にあったからである。
 客層は時代と共に変化する。集客コンテンツが地域の歴史文化なのであれば、小規模旅館やホテルのように、休前日割増料金もない積み上げ式を採用し、『おひとりさま』割増も撤廃したほうが、フロア稼働率が向上する時代になってきたと思う。
 インバウンドならば、尚更である。

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O.H.M.S.S.
(大宇陀・東紀州・松阪圏・サイトシーイング・サポート)代表 井村茂樹
ohmss700@gmail.com