2012年11月12日月曜日

No.51〜No.59『地域振興と観光産業のかかわりについて2012』4〜12月号総集編

No.51『地域振興と観光産業のかかわりについて2012』4月号から

【シンポジウムレポート 抜粋】

 3/9に開催された『観光みえシンポジウム』では、最初の講演者である初代観光庁長官、本保教授のお話しだけが示唆に富んでいました。
 観光庁創設当時の理念の中に外交政策的な側面があった点や、フランス人インバウンドが集中するタイを例に、日本を含むアジア圏には世界を相手に4億人もの市場性があるとの貴重な提言、そして三重(伊勢)のコンテンツは、中国人インバウンドに対しては不向きであるとの鋭い指摘に加え、国・県・市町村といった我国固有の三層構造がバラバラの観光施策を引き起こす等の興味深い話も多く、氏の指摘する民間による観光行政監視の必要性もあらためて認識した次第です。
 さいわい休憩時間に教授に御挨拶する事ができましたので、例の【三つの質門事項】のプリントアウトは直接お渡しする事ができました。さっそく目を通してくれた氏はシンポジウムの締めくくりの段で、ミシュランガイド三ツ星のくだりを引用し、20年に一度である来年の遷宮に向けた(3年越の)プレプロモーションを三重はやっているのかとも質してくれた次第です。

 一方、『三重』では知名度がないから『伊勢』で売って下さいとは日本総研の研究員を勤める矢ヶ崎紀子氏の提言。伊勢は観光地としての知名度が高いから、そこから近隣市町村へと枝葉を広げていけばいいとは、明らかに伊勢の過大評価を前提としたご託宣です。
 そこで私は伊勢市民の立場から伊勢神宮は観光施設ではない旨と、常に市民(伊勢の)や近隣の市町村からも沢山の訪問者があるが、これも(参拝行動も)観光客なのかと問いかけてみました。これは観光経済を語る上で、特に重要な問題だからです。
 しかし観光業を生業としていない研究員は、観光庁の統計上はと前置きすると『そうです』との答えです。それどころか伊勢市民や松阪市民が北勢のジャスコへとショッピングに行くのも、統計上は観光だとも申されていました。
 この実態に則さない統計が、如何マーケティングを狂わせてきた事か。
 なお、知事は冒頭の挨拶で『三重は観光を科学する』との事でしたが、『みえの観光振興に関する条例』に則した具体案等はありませんでした。

【観光経済振興の為の問題点1】

 ところで教授のいう外交政策とは、単にどこの国にもみられる安全保障的な役割だけを指しての事なのでしょうか。それとも我が国には日本独特の役割として、経常収支の均衡をとる調整弁としての役割も担っていた事をも示していたのでしょうか。
 と申しますのも、31年振りの赤字マークした貿易収支と違って万年赤字であるサービス収支の原因は、日本の外貨獲得政策が工業製品の輸出一辺倒であるが為に、その収支均衡をとるべく観光が利用されてきたのではないかと思うからです。
 この事は、外客誘致政策が始まると同時に貿易拡大政策も始まり、何故か対象国への海外旅行ばかりが増えて本末転倒になる事に由来します。この逆進性は円高だけが原因だとは思えません。すなわち尖閣事件勃発までみられた戦略的互恵の、100人貰えば(中国人を)200人送る(日本人を)式の図の事です。これは相手国との送集客協定において、常に我が国が劣勢に置かれているのが原因なのではないかと思います。
 これでは外貨獲得政策にはなりません。特に新興国相手では物価の差が大きいからなおさらです。新聞によると上海万博による経済波及効果で上海経済は今後70年間にわたって安泰と記されていますが、このような事は物価均衡の状態にある先進国間では、普通あり得ない事だと思います。
 当時の報道によりますと、同万博への邦人入り込み数は全体の2割にものぼるとしていますが、未だ政府は上海万博への邦人動員数を明らかにはしていません。

【観光経済振興の為の問題点2】

 生産性の低い地方にとって観光客とは、可処分所得の高い都会の人を指すようです。たとえそれが日帰り客であったとしてもです。そこで多くの自治体では日帰り客向けのイベントを開催します。
 しかし着地型の宿泊喚起を念頭に置いたものはそう多くはありません。何故ならば日帰り客向け観光イベントの方が、宿泊を伴う本当の観光客よりも来客数を多く見込む事ができますし、事前告知も近距離にとどめる事ができるのでコストも安く、同時に地元客による動員人数のかさ上げで体面を保つ事もできるからです。しかしこれらのイベントは低単価であり、エリア内でお金が回る余地は殆どありません。民間の観光業界からみれば、このようなイベントは観光政策ではなく、単なる大判振る舞いの市民サービスやパフォーマンスにすぎないと思います。
 これは観光庁が近隣都市へのショッピングや参拝、神事も広義の観光行動とみなしているのが原因のようですが、このように国の観光客の概念が観光経済の現実には必ずしも則さない以上、民間企業は各自治体に働きかけて、客観的にも主観的にも観光であるお客さんを集める必要性と、市場性を問うことが求められると思います。

2012.0325

再掲載【三つの質問事項】

 私は観光業界30年の経験を生かて「大宇陀・東紀州・松阪圏・サイトシーイング・サポート」を立ち上げ、文化観光の交流促進による紀伊半島東部観光経済圏形成を意図する観光マーケティングの調査分析と、街道導線情報の交換と共有を推進する、ボランティア情報ネットワークを創りました。
 ここで得られた情報は、オープンソースインテリジェント情報と共に研究、それに基づく提言として、随時あるいはメールマガジン『地域振興と観光産業のかかわりについて』にて、県内外に広く配信(約90)、世論形成に努めています。
 また、一昨年2/6-7には宇陀市、紀北町、津市、松阪市、そして奈良市とその協議会と共に広域連携キャンペーンを中部国際空港にて開催、翌年は2/26-27に三重県初の奈良プロモーションを津エアポートラインにて開催し、11/3の氏郷まつり50thでは地域交流ブースを設けてもいます。

 さて、政府観光局によりますと、昨年1月から12月の海外旅は1699万3000人で、インバウンドは621万9300人にとどまっています。
 また、主要旅行業者58社による昨年1月から12月末までの海外旅行の取扱高は2兆1746億971万9000円で、インバウンドの取扱高はその僅か47の1の462億9963万8000円、国内旅行は3兆6371億5237万7000円となっています。
 つまり海外旅行取扱高が国内旅行の60%相当にも及ぶという事は、もはや国内旅行の取扱いだけでは旅行業経営が成り立たないという事と、インバウンドが儲からないという事も示唆しています。なにしろ昨年2011年度の旅行業者の倒産は、前年比40%増加の49件、その8割が国内旅行の取扱比率の高い中小業者となっています。それだけに歴史的円高を背景に、昨春『日本を元気に、旅で笑顔に』とのスローガンを掲げ、海外支援の御礼として海外旅行の推進宣言をおこなった日本旅行業協会の苦しい立場も分からないではないです。また国交省も、再建途上にあるJALを失わずに済んだ上に、国際空港戦略において、減ったインバウンドを海外旅行で賄う事もでき一石二鳥だったとも思います。
 しかし、その一方、震災直後の自粛と出控えに泣いた地域経済の一翼を担う日本の多くの観光地では、その後も放射性物質による汚染懸念等で苦境に立つところも多く、インバウンドもいまだ停滞気味となっています。先般も、佐渡市にある江戸時代後期創業の老舗旅館『喜八屋』さんが破産との事でした。報道によりますと行き過ぎた価格競争の果てにとあります。

①では、なぜ価格競争が生じる程にシェアは減少してしまったのでしょうか?

 デフレだからでしょうか、不景気だからでしょうか?
  私は違うと思います。
 すなわちそれは、富裕層のみならず中産階級層までもが気軽に海外旅行に出かけるようになったおかげです。これに国内の宿泊を伴う旅客のシェアが減り、相対的に安近短傾向客の比率が上がった為です。もし海外旅行で使われた2兆1746億971万9000円が、国内観光、つまり内需としてまわっていたらと思うのは、私だけではないと思います。

 ところで一口に観光客といっても、それは宿泊を伴うものから日帰りまであり、その価格差は約10倍もの開きがあります。

②では地域経済としては、どちらに重きを置いた方がいいのでしょうか?

 宿泊客として外来客が増えれば、昼食処やお土産の需要も増えます。しかしその逆は有り得ません。
 ならば、すそ野の広い市場性を持つ宿泊客を見込む政策を、如何に官民一体で取組む事ができるのかを問う事の方が、地域経済の振興と雇用創出には必要だと思います。
その為にはB級よりもA級振興、動員人数を数えるよりも客質向上、つまり『安近短』よりも『高遠長』を増やすべきであり、その為には地域文化コンテンツの積極的な紹介が必要になります。

 最後に『昇龍道』ですが、もともとこれは、この度の増便ラッシュで国際線におけるアジア便の割合が過去最の80%にも達したセントレアを発地とし、能登半島を着地点としたもののようで、主に中国人観光客を対象としています。しかし、三重県には名鉄グループの鉄道が通っていませんし、三重県の歴史文化コンテンツは、必ずしも大陸の方々にはマッチするとはいい難いと思います。

③ならば三重県は、異文化圏エキゾチズムにお金を出してくれる成熟した欧米圏のお客さんを、関空からご案内した方が市場性としては有望なのではないかと思います。いかがでしょうか?

 私は遷都1300年祭の前後3年間、毎月奈良へと通いましたが、歴史と文化を国際観光コンテンツとするこの隣接県は、フランス、イタリー、スペインの富裕層に人気があります。
 マーケットとのマッチングは大切ですが、それでは伊勢神宮が三星観光地としてミシュランガイドに紹介されている事を覚えている向きがここに何人いるでしょうか。そして今年の三が日は、過去12年間の中でも最も少ない参拝者数(52万3721人)だった事にお気づきでしょうか。
 来年は式年遷宮です。ジャパネスクに敬意と興味を示すお客さんがもっと必要だとは思いませんか。

 ちなみに今年1月の出国日本人数は133万3000人で、訪日外国人はその半分の68万人と、今年ものっけから出入国格差は狭まらず、夏ダイヤも始まるというのに『昇龍道』の具体論はまだ見えてはきません。このプロジェクトは既に震災前の昨年2月から動いていたようですが、いまだ河村発言で一進一退となるとしたら、セントレアは送客一辺倒の送り出し空港になってしまいます。
 昨年は貿易収支が31年振りのマイナスとなりましたが、サービス収支の方はそれ以前からマイナスです。国内観光関係者は、この事をもっと認識すべきだと思います。

No.52『地域振興と観光産業のかかわりについて2012』5月号から

【観光庁政策】

 先般、閣議決定されました『観光立国基本計画』に於ける主な数値目標によりますと、国内に於ける旅行消費額は30兆円、インバウンドは1800万人、そのリピート率は45~60%、国際会議誘致は5割増し、国内旅行は一人間2.5回、宿泊リピート率は25%、海外送客は2000万人となっており、その達成は2016年度としています。
 果たしてこれからどんな政策が飛び出すか、しかしこれらの政策が必ずしも地域観光の振興に結び付くかどうかについては疑問です。なぜならば、観光政策を取り仕切る『観光庁』が『国土交省』の傘下にあるが為に、どうしてもハーウェアや交通政策からのアプローチが主流となり、現在、国際観光コンテンツの主流たる歴史や文化、世界遺産といったソフトウェアの扱いが管轄外(文部科学省傘下の文化庁)にあるからで、その結果どちらかといえば、交通、旅行業界寄りの政策になってしまうからです(たとえば海外客2000万人目標はその典型で、旅行業界と航空産業寄りであるこの政策は明らかに地域振興とは逆行しており、かつ国際サービス収支の黒字化を鑑みますとあってはならないものではないでしょうか)。
 この事は、観光庁の創設以前も以後も余り変わらず、旅館業界だけが突出した急落をみている過去20年間の推移をみても明らかです(資料集『地域振興と観光産業のかかわりについて2011』号外グラフ⑤参照)
 つまりところ地域の歴史文化を観光コンテンツにまで昇華させる事ができるのは、地域の文化界と観光業界、そして地域行政だけだと思います。

【奈良に注目】

 ご存知のように、20世紀のモノづくり大国ニッポンに於ける外貨獲得といえば、工業製品の輸出一辺倒でした。
 しかしこの産業は、米国から我が国へとシフトしてきた家電や自動車産業を例にみるまでもなく、必然的に来る人件費と物価の上昇で、どうしても輸出競争力にブレーキがかかり、いずれはローコストの後進国に席を譲らなけれはならなくなって、残るは内需のみとなってきます。
 これが日本の現状だと思います。
 ではモノづくりの次に来る外貨獲得産業とはいったい何なのか、勿論それは欧米先進国の先例をみれば明らかなように、ソフト産業とインバウンド産業である事は言うまでもありません。この点においてO.H.M.S.S.では、もう4年も前からこのテーマで情報発信を続けてきましたが、最近とみに目立ってきた工業製品製造業の凋落と失業率の上昇、そして経済停滞によるデフレの進行は、既にこれを証明する段階に差し掛かろうとしているかのように映ります。
 なぜ奈良なのか。
 それはこの地が20世紀の工業製品輸出政策からは最も遠いところにあったにも関わらず、今やその県庁所在地は政令指定都市をも目指すだけのポテンシャルを有するにまでなり、乱開発がなかった事が今世紀になって幸いし、今や世界遺産の探訪を目指す富裕層インバウンド向けの歴史文化コンテンツの宝庫となっているからであり、且つ同じ紀伊半島文化圏にある三重県とは古くから街道つながりで、歴史的コンテンツが共有できるからに他なりません。
 今年は古事記編纂1300年です。三重の県名の由来一つを取ってみてもそれを物語っていると思います。

【4/8鳥羽と伊勢】

 鳥羽市初の城郭まつりである『しろやま嘉隆まつり』の開始時間に合わせ、名古屋から鳥羽へと向うJRの臨時列車(快速)に乗り込んで、私は数年振りに電車で鳥羽へと向かいました。
 天候には恵まれたものの、それだけにこの日は県内外の各市町村ででも花見がてらのイベントが目白押しとなっているだけに、どうしても行楽客の分散化は避けられない難しい日でもあります。果たしてどれだけのお客さんが訪れるのだろうかと、実は少し心配なところもありました。生活圏外からの外貨導入がなければ、単なる振る舞いイベントに終わるからです。
 しかし結論から申しますと、確かに市民のウェイトは高いものの生活圏外からのウォーカーの取り込みにも成功したようで、この点についてはタイアップの上手さに感心した次第です。市長さんも一日中九鬼嘉隆に扮して場内で頑張っていたところから、地域の歴史文化コンテンツの観光資源化に向けた鳥羽市の思いが充分伝わってきた次第です。
 鳥羽市内を少しウォッチングしてから伊勢に戻り、同日の午後からは『せんぐう館』にも寄ってきました。
 なにしろオープンは昨日の事です。さぞや伊勢市駅前も混雑している事かと思いきや、意外にも外宮へと続く参道で目にしたものは固く閉ざされたシャッター店舗とまばらな人影だけで、人がたかっているのは外宮内宮循環バス停広場特設の『即売市』だけでした。
 しかしそこで売られている物は、観光参拝土産というよりは近所の伊勢市民向けの軽食おやつに今晩のおかずの類といったミスマッチもので、出店業者も石巻や志摩など市外の業者も目につくところから、経済波及どころか市民の懐狙いで外貨導入の逆をやっているように見えます。
 おまけに横断歩道をわたって外宮の敷地に入り、せんぐう館とは反対方向にある駐車場を覗けば、観光バスは2台のマイクロと豊橋からの『吉野桜と伊勢神宮』の2台口だけでマイカーはまだ空きがある状態です。時計を見ると午後の3時前。まだ陽は頭上です。
 奉納舞台で演奏されている軽音楽を横に見て、期待の『せんぐう館』に進みますと、並ばずとも入れること拍子抜けで、且つ展示についても、華なし、エンタメ性なし、英語なしで、流石に6つある各展示室とも学芸員の配置はあるものの典型的なハコもの博物館の域を出ない、地域経済の起爆剤には程遠い印象のものでした。

No.53『地域振興と観光産業のかかわりについて2012』6月号から

【GWの松坂城址】

[4/29松阪市営駐車場12:30 136台]

三重ナンバー112台、名古屋3台、奈良3台、宇都宮2台、なにわ2台、豊田2台、多摩、岐阜、大阪、広島、札幌、山梨、神戸、大宮、山口、尾張小牧、沖縄(軽)、富山(キャンピングカー)各1台。市内への県外来松率17.65%
※12:10ベルファームP満車

[5/3松阪市営駐車場12:20 141台]

三重ナンバー116台、名古屋4台、奈良4台、京都3台、神戸2台、大阪2台、和泉2台、静岡、一宮、川崎、松本、滋賀、石川、足立、鈴鹿、各1台。市内への県外車来松率17.73%。
※12:00ベルファームP90%
※伊勢玉城間2キロ渋滞表示

[5/4松阪市営駐車場12:00 127台]

三重ナンバー95台、大阪3台、鈴鹿3台、滋賀3台、名古屋2台、奈良2台、京都2台、姫路2台、豊橋2台、品川2台、浜松2台、和泉、湘南、習志野、なにわ、尾張小牧、広島、大宮、福井、各1台、神戸ナンバーのマイクロ1台。市内への県外車来松率25.2%
※ベルファームP満車
※伊勢IC出口6キロ渋滞表示

[5/5松阪市営駐車場12:20 111台]

三重ナンバー87台、大阪2台、名古屋2台、岐阜2台、旭川2台、京都、群馬、習志野、豊田、浜松、堺、鈴鹿、山梨、奈良、札幌、練馬、福井、春日部、宮城、神戸、各1台、横浜ナンバーのキャンピングカー1台。市内への県外車来松率21.6%
※12:00ベルファームP満車※伊勢玉城間3キロ渋滞表示

[5/6松阪市営駐車場12:15 76台]

三重ナンバー66台、大阪2台、名古屋2台、奈良2台、札幌、岐阜、尾張小牧、鈴鹿、各1台。市内への県外車来松率13.2%
※12:00ベルファームP60%
※12:40強風と大雨

【伊勢神宮】

    内宮 今年4/28~5/6 25万6353人(前年4/29~5/6 27万739人)
    外宮 今年4/28~5/6 12万0328人(前年4/29~5/6 10万3261人)
 せんぐう館4/28~5/6  1万5041人

鳥羽市旅館街 今年4/28~5/6  6万3979人(前年4/29~5/6  6万8208人)

 来年は『式年遷宮』の年である。にもかかわらず、今年のGWの伊勢神宮への入り込みがこれほど減るとは驚きである。期待の『せんぐう館』効果も、僅かに外宮への入り込みを底あげしたに過ぎない。
 松阪市営駐車場へのツアーバス立ち寄りが全くみられなかった事から、参拝ツアーが集まらない事が分かる。はたしてこの三重県不入りの原因は、一体何なのか。
 関西マーケットからの西行きは好調だったようだ。また、富裕層のみならず中間層までもが海外旅行へと数多く出掛けた以上、カレンダーの並びのせいなどにもできない。名古屋圏からは新東名の走りぞめに出掛けた向きも多く、潮加減に恵まれた御殿場海岸へは安近短レジャー客が、津市観光協会によると約12万人も(前年は7万人でしたので実に1.7倍だ)押し寄せた。だから天候のせいにするのも非論理的である。
 観光を科学するのならば、傾向を正確に掴み対策を立てる必然があるのではないか。

【国際観光と雇用経済】

 昨年のインバウンドは東日本大震災と原発事故の影響で、前年比マイナス29.2%の大幅な減少となり、観光庁の『2011年(年間値)訪日外国人消費動向調査結果』によりますと、インバウンド旅行消費額も8135億円にとどまり、そのうちの約4分の1、推計額1964億円は中国人(本土)とされています。
 しかし、今の中国人観光客の入り込みは僅かな富裕層を除くと実に76.3%もの入り込みは団体ツアーであり、消費行動も家電製品や化粧品などといった日本製品のまとめ買いが目的となっています。だから行程も経済成長期の日本人観光客によくみられたおのぼりさん的都市観光指向が強く、歴史や自然、伝統文化の探訪あるいは癒しを求める余暇活動とは、かなり趣きが違います。したがって観光コンテンツにしても歴史認識のギャップから神社や戦国武将は使い難く、宿泊施設や観光施設が儲かる、つまり設備投資や雇用促進のレベルにはまだまだ到達しそうにありません。
 先般、初代観光庁長官の本保教授は三重県に中国人インバウンドは無理だと指摘していました。全くその通りでだと思います。仮にも伊勢神宮を擁する三重県に、中部運輸局のお情け(?)で『昇龍道』の尻尾に甘んじろとは論外であり、世界遺産をはじめ多くの歴史文化コンテンツを有する伊勢の國としましては、中部経済界と迎合するのではなく、政策にしてもマーケットにしても紀伊半島文化圏の一員として振るまうべきではないでしょうか。
 たとえば、訪日ロシア人3万人の、団体ツアーによる入り込みは僅か11.3%、しかし88.7%の富裕層は個人旅行で来日していますが、経済成長と社会成熟度が観光行動に進化をもたらす事を鑑みますと、三重県は歴史や自然、伝統文化の探訪あるいは癒しの余暇活動を求める先進国向けに狙いを定めた方が、マーケット選択としては合理的ですし、事実ほんの少し前まではそうでした。
 ちなみに現在、日本人アウトバウンドなみの高支出がみられる国は、ロシア人の21万2641円を筆頭に、オーストラリア人の19万8429円、フランス人の16万696円、英国人の15万8340円となっており、20%以上、つまり5人に1人の選択率で、ホテル泊まりでなくてもいいとされる国はインド、英国、ドイツ、フランス、ロシア、カナダ、米国の7ヶ国があります。このうち和室の選択率が最も高いのがフランス人の30.9%、次いで英国人の23.7%、カナダ人の20.4%となっています。
 なお統計上、訪日客数が最も多い国は韓国人の165万8067人となっていますが、旅行支出額は7万5626円で、訪日上位15ヶ国の中でも最低となっています。とかく行政は入り込み人数だけを評価の対象としがちですが、国際サービス収支の黒字化や雇用経済につなげるというのであれば、人数よりもコストパフォーマンスの評価に重点を移すべきだと思います。

【ガラパゴス統計】

 5/24の報道によりますと、2011年の三重県内観光客は3565万1000人で前年比0.1%の増加とし、最も多かった観光施設は伊勢神宮で788万6000人との事でした。
 先般の観光シンポジウムで、私は「レジャー客や参拝者まで観光客としてカウントするのはおかしい」と指摘しましたが、元観光庁参事官は異論がある事は認めるものの、仕分け不能を理由にそれも認めるところだと答え、隣り町のジャスコへと買い物に出掛ける客すら観光行動だと極論していました。
 このガラパゴス的ともいえる日本でしか通用しない認識のおかげで、とんだ水増し結果です。
 統計とは現状を認識して問題点、改善点を洗い出し、対策を講じる為の指針です。
 誤った数字の認識は自分で問題点を洗い出そうとしない方々の誤解を招き、判断を誤らせるだけだと思います。
 なお、2003年7/7の中日新聞によりますと、この年から『伊勢神宮』の入り込み数は外と内宮の合算となりました。その理由は「伊勢神宮は三重県の目玉となる観光地。数字にボリュームがあった方がいい」としています。

No.54『地域振興と観光産業のかかわりについて2012』7月号から

【知らなかった事によって生じる不利益】

 6/21付中日新聞朝刊11版の第一面に『金シャチ横丁』の記事がありました。
 これは10/28付同紙朝刊11版の一面トップで『名古屋版おかげ横丁』として報じられ
たものの続報で、今回の記事によりますと名古屋市は、期間限定の社会実験としての『仮横丁』を、ただいま復元工事中である名古屋城本丸御殿の一部公開に合わせて、来春の実施を目指すとあります。
 伊勢市の『おかげ横丁』にヒントを得たと明記されたこの横丁構想は、『どえりゃあおもしれぇナゴヤ』大作戦の中核事業に位置づけられ、本年度には1000万円の調査費が盛り込まれているともあります。
 はたしてこの社会実験とやらは、名古屋市流の遷宮対策なのか否か。
 問題はこの記事が10/28付同様、またしても伊勢市で配布される中日新聞10版では不掲載になっているという点です。
 これは6/15夕に首相官邸前で起きていた大規模な大飯原発再稼働抗議デモ(1万1000人以上)が、既に予兆があったにもかかわらず、知らなかったとしてメディアが全く取り上げなかった件と、あまりにも絶妙のタイミングで執行されたオウム捕物劇の件、放射能汚染懸念の為に世界各国が日本産品を規制してい件、瓦礫焼却問題にかんがみ『知見なし』と公言した環境省の件、中国の経済状況悪化で『楽天』が早々に撤退していた件等々、『知らなかった事によって生じる不利益』に通じると思います(そのいくつかは、知らぬは日本人ばかりなりです)。
 株価同様、情報一つで利害関係は動きます。前途の『仮横丁』も、開催されればその市場性は三重県中勢部にまで及びます。つまりこれは『おかげ横丁』の日帰りマーケットそのものであり、それだけに一部の地域にだけ判断材料を伝えない事は、未見の故意同様、悪質な事だと思います。

【大手旅行会社の2011年総取扱高から】

 2011年度の大手旅行会社59社の総取扱高が出揃いました。
 前年比を見てみますと農協観光が95.3%、近ツーが93.9、日旅が98.6、読売旅行が83.7、KNTが84.2と、各社とも震災と原発事故の影響を受け減収入やむなしか、と思いきや、業界一位のJTB100.7や二位の楽天トラベル115.4、エイチ・アイ・エス109.1、ANA100.5、名鉄観光102.0、阪急阪神102.0などの海外旅行にウェイトを置く多くの会社では、逆に前年並みや前年プラスが当たり前になっている事が分かります(リクルートじゃらんは旅行業者ではないので入ってはいません)。
 これは、昨年4/19に『全国旅行業協会』が全国紙に、「被災地支援の為に海外旅行を促進する」との訳のわからん理屈をつけた全面公告(Visit World Campaign)を出していたことからも合点のいく結果です。
 どうやら大手の旅行業者には国内観光地で地域経済をまわして、共に利益を出そうといった発想にはないようです。
 2011年の旅行業界全体を見渡せば、国内旅行が3兆7670億7106万3000円で前年比が98.6%、海外旅が2兆2345億9083万1000円の102%となっています。これにより海外旅行の取扱比率が国内5:海外3にまで進捗してきた事が分かりますが、その一方で、国内観光地が潤う事になる筈のインバウンドは、震災と原発の影響をまともに受け、473億7450万3000円にまで落ち込んで前年対比は74.7%となり、海外旅行との取扱差は実に47倍以上の開きとなっていますが、おかげで売上高1兆2048億、営業利益2419億円をたたき出したJALの再上場は間近となりました。これにより5200億円もの債権放棄に加えて、企業再生支援機構へと追銭までしてきたメガバンクも、資金回収のメドが立ってほっとした事でしょう。
 ならば観光当局は、そろそろ海外旅行の規制もしくは課税の強化ぐらいははかるべきではないかと思います。なにしろ日本人マーケットの野放図な海外流出をこのまま放置した場合、貿易サービス収支は永遠に赤字のままどころか、これからの地域雇用経済を担う事になる筈の国内の文化観光と関連産業が、国際競争力を培う以前に消滅しかねないからです。

【最後のフロンティア】

 いま全国各地では半導体や電子部品の工場閉鎖が相次いでいますが、それらは中小零細だけではなく、TDKやパナソニックといった大御所に加えて、シルトロニック・ジャパン(新日本製鉄系)や米国のテキサスインスツルメンツといった外資系大手の名もみられます。これらはいずれも500人~1500人規模の解雇が避けられず、ルネサスエレクトロニクスにいたっては11工場を売却、閉鎖、1万4000人の削減とも報じられています。これによる地域経済へのダメージは計り知れないものになるでしょう。
 何故そうなったか。
 それは後進国の台頭を前に、未だニッポンがモノづくりだけを基幹産業として推進しようとしているからに他ならないと思います。それゆえ経団連は、成長著しいアジアの成長力を取り込もうとの『根拠なきスローガン』を掲げ、前世紀からの産業政策の延命をはかろうとしています。
 しかしみなさん、思い出してみて下さい。我が国の高度経済成長期に、私たち日本人は、いったいどれだけの外国製品を買ったでしょうか?
 買ったのは洋画に洋楽、原子炉と航空機だけで、殆どは国産品ばかりだったのではなかったでしょうか?
 これは経済の成長過程に於いては保護的な貿易政策も、ある程度は国際社会が容認していたからなのですが、ならば同じ事が今後のアジアンマーケットにも充分起こり得る事という事を、経団連はリスク想定の中に折り込むべきだと思います。
 当たり前の事ですが、工業製品の単価が賄える経費というものは、その品質が同等もしくは極めて近しいものである限り、常に低賃金国の方が有利になります。これは安い方がシェアが広がるからなのですが、この点に於いて日本は、とうの昔に世界の工場を卒業していたのだと思います。
 ということは、先進国の一員としての価値観や社会制度の現状維持を図りたいのならば、いつまでも幼稚園の大将に居座り続けるのではなく、進級生らしく新しい次の産業へとステップアップしなければならないのではないかという事であり、その産業とは、言語の壁と、長らく内需だけでも満足できた国内シェアのおかげで先進国中、唯一日本が出遅れたインバウンド産業だといえます。
 現在アジアには、世界を相手に年間4億人のインバウンドが訪れていると言われ(これは低物価の中国市場の事ではありません。たとえばタイへの御得意さんは日本の物価レベルに近いフランス人です)、日本観光の潜在マーケットも、初代観光庁長官によりますと1億人はあると見積もられています。
 1億人。一人10万円を日本で使えば10兆円です。
 にもかかわらず、こういった事が大手メディアで語られる事はあまりありません。
観光庁の集客中期目標も年間1800万人と、かなり低めです。はたしてこれは如何なる訳か、日本の産業構造そのものが制動をかけているのではないか、たしかに観光を貿易収支のバランス取りに利用してきた経団連にとって都合のいい話ではありません。しかしお隣り韓国では、今年の日本人観光客集客目標を320万人と定め、また、経済成長著しいシンガポールは、自国の人口の倍以上のインバウンドで外貨を稼いでいます。なぜこれが日本にできないのか疑問です。
 少子高齢化に地震と原発、増税と、悲観論が蔓延する中、この事を日本で知る者はあまりにも少数です。それだけに、これらが周知されてインバウンド産業が諸外国なみに活性化すれば、直接的にも間接的にも多くの地域経済と雇用環境は改善され、延いては被災地復興の財源や社会保障の担保にさえなると私は思います。

【2012.0607奈良】

 2009年の春から開始いたしましたO.H.M.S.S.奈良訪問団も6月7日の回で40回目。今回は、午前中に鳥羽城跡と松坂城址そして上野城による共同企画【城郭めぐり三重】の三市初顔合わせもありましたので、上野城を経由してからの奈良入りとなりました
。ご同行は、前月の宇陀市にかわって、常連の紀北町、津市、松阪市に加え、今回初参加の鳥羽市です。
 おなじみとなった『奈良市観光センター』では、今年度より揃って交代となった観光協会専務理事と局長に、そして『平城京歴史館』では今回新たに着任された館長にご挨拶。車中からではありましたが、遠足や修旅に沸く奈良公園の現況もみる事ができました。
 ご存知の如く奈良県は、1993年に姫路城と共に『法隆寺と地域の仏教建築群』が日本で最初の世界遺産登録となり、5年後の98年には東大寺、春日大社、平城宮跡が『古都奈良の文化財』として、また、2004年には三重県、和歌山と共に『紀伊山地の霊場と参詣道』つまり『熊野古道』がそれぞれ文化遺産として世界遺産に登録されています。
 とりわけ奈良市は前局長の言葉を借りると、『開発から取り残されて良かった。おかげで、町中が博物館』であり、その文化も含めた継承と活用、集客ともてなし、地域経済への波及効果と、文化観光都市である奈良県の取り組みは、必ずしも同じ経緯を経なかった京都よりもずっとグローバルスタンダードに近いと思います。
 お伊勢さんを擁して数多の街道がクロスオーバーする三重としても、相互市場を念頭においた異経済圏(中部と関西)交流にとどまらず、一つの文化観光圏として、つまり『北海道』や『九州』のような『紀伊半島観光圏』としての対外的な認知度を上げるべきであり、ひいてはそれが21世紀後半の人口減少加速社会における、半島経済のサバイバルにつながると思います。

2012.0701

【城郭めぐり三重】

目的 遷宮と遷宮後対策

概要 伊賀上野城、鳥羽城跡、松阪城址を主軸に三重県の三つの城郭をクローズアップして街道と移動手段、アクセス経路を紹介。歴史ウォーカーおよび観光集客をはかる。

事業背景 来年の来県者のすべてが参拝目的だけではない。現代人の傾向に合わせた新たな『中・長期的な文化観光コンテンツ』開発が必要である。

テーマ 城郭めぐりin三重

競合状況 来年は出雲大社の大遷宮(*本殿遷座祭)とも重なるので、関西以西の商圏が分断され、名古屋城も類似コンテンツを整備中。

独自性 国史跡の上野城、松阪城址、そして稀有な海城である鳥羽城跡は、鳥羽市に宿をとったお客さんならば一日で巡る事も可能な近接位置にある。

優位性 伊勢神宮の御遷宮により三重県コンテンツの注目度が高くなる。

将来展望 西洋市場に向けたインバウンド向けコンテンツ化。日本人が西洋の騎士物語に魅かれる事は欧米人にとっても同じである。三重県も観光コンテンツの一つに戦国コンテンツを加える事により圏内商圏への引き込み強化をはかる。

市場 第一段階 街道導線(お隣りの奈良、和歌山、そして大阪、三田市の順)

   第二段階 西日本導線(大阪以西から九州圏までの新幹線導線)

   第三段階 欧米圏(戦国武将ものは、コリアンとチャイニーズは不向きです) 

   第四段階 関東圏(外人がくるようになれば、関東人は放っておいても来ます)

広報 三重県外へのパブリシティ展開

予算 鳥羽市、松阪市、伊賀市(順不同)拠出可能

課題 遷宮後数年間の急激な観光客減少にも耐え得るように、段階的に持続成長させる必要がある。また、各市におけるお城まつりに相互参加する事は可能だろうか。

協議記録 5/13 5/24

*出雲大社の本殿遷座祭
1744年(間隔65年)1809年(間隔72年)1881年(間隔72年)1953年(間隔60年)2013年

初稿 

No.55『地域振興と観光産業のかかわりについて2012』8月号から

【土曜の祝日】

 観光振興策として政府は、祝日が土曜日にあたった場合の振替休日を、金曜か月曜にずらす案を検討している。
 これは震災前からの懸案であった、地域毎に休日を分散化する案よりも現実的だとして、産業界からの抵抗も少ないようだ。
 しかしながら『観光振興』の四文字は同床異夢でもある。我が国では日帰りレジャー客やショッピングすらも広義の観光客としているので注意が必要だ。三連休が増える事によって、このような県内だけで小ガネがくるくる回るだけの少額消費行動よりも、地域観光経済にとって波及効果の大きい『宿泊を伴う(文化)観光行動』が増えるかどうかは疑問である。
 先の消費税増税法案による景気悪化が過分に懸念され、もし仮に観光客が増えたとしても、安価な海外旅行との競合によって、国内の旅館・ホテルの薄利多売傾向に拍車がかかる可能性の方が大きい。
 リスクなしで恩恵があるのは、国交省お抱えの国際空港と航空会社、そして海外旅行を取扱う大手旅行会社だけになるだろう。
 この事は、未曾有の国難の下にあってもJALに1兆2048億円を売り上げさせる事ができた、フラッグキャリア復活劇からも類推は容易である。
 

【高コスト負担】

 今では規制されていますが、以前の内宮前観光バス駐車場では、ドライブインや真珠店の営業マンが、参拝中で乗客が出払っているバスのドライバー目当てに入れ代わり立ち代わり訪れていたものでした。
 目的は自店への立ち寄りを促す事にあり、彼らは乗客がいなくなるのを見計らうと、バス全面に掲示されている団体生名を確認してから(修学旅行や遠足のバスには寄り付きません)車内にいるドライバーに声をかけます。
 まず初めに確認するのは、行程に割り込む余裕と決定権がドライバーにあるかどうか。
 されどドライバーも心得たものであり、「このバスには添乗員が同乗者しており、予め立ち寄り先も決めているから駄目だ」とか、「このお客さんは保険外交員の慰安旅行だから、くばり物を沢山買うぞ」などと吹かすものもいれば、
「○○店は幾らはずむと言っていたが、あんたの店は幾らだ」などと煽ったり、
「この添乗員はまだ若い。わしから話しておいてやるから弾んでくれ」と豪語する者までいたものでした。
 これはチップ(正規のR=リベートとは少し違います)の話です。
 私の知人が経営していた真珠の立ち寄り店における、当時の相場はドライバー単独で総売上の約20%。
 ガイドさんがいればその中から5%ぐらいが渡り、添乗員をも抱き込んで三等分といったケースまでありました。
 しかも、立ち寄って何も買わない場合でも、数千円の心付けが乗務員たちに包まれたものでした。「今度こちらへ来たとき宜しくね」との意味でです。
 当時の、バス1台あたりの売上高は真珠店は真珠店ならば平均40万円、海産物ドライブインならばその半分はありました。さきの保険外交員の団体ならば100万円オーバーもざらです。
 つまり観光バス常務のチップ収入は1日で20万円以上になる事もあり、会社申告なき場合、すべてが臨時収入となってい
たわけです。
 店は、モノによっては地元の真珠養殖業者だけでなく、格安の輸入卸商からも『玉』を仕入れます。これに自店で加工した工賃も踏まえて、おおよそ10倍掛けを目安に価格を設定しています。だから20%の支払いも織り込み済みです。
 結局、高コストの負担は電力会社同様、消費者だったというわけです。

【ニュース9】

 国際収支速報によると、5月の経常収支の黒字額は前年同月比62.6%減の2151億円になるとの事。100-62.6=37.4だから、前年は2151億÷37.4%で5751億円。引き算すると前年比3600億円の減少になるという事だ。
 その原因はLNGと原油の輸入増加とされ、1月からの赤字総額は8482億円と悪化、旅行や物流のサービス収支の赤字も928億円に拡大している。つまり海外旅行の送り出し過多、そして訪日外客の少な過ぎである。
 この月の、日本政府が観光立国の頼みの綱とする『中国人インバウンド』は、過去最高の11万3000人を記録とある。
 7/9放送の【ニュース9】のNHKによる電話調査によると、中国人団体ツアーの取扱いを今後『中止』と答えた業者は11%、『控える』と答えた業者は65%に上るとの事。
 これは、中国の送客業者を介さなければ日本の旅行会社は中国人インバウンドが扱えない参入障壁がある事(1国1制度に則りJTBだけが例外である事には触れていない)と、中間所得者層向け価格帯の増加によって競争が激化し、今や5年前の半額になってしまっている事が原因だとしている。
 つまり損益分岐を割っているという事であり、たとえ中国側の言い値で受け入れ側が無理をしたとしても顧客満足度は必然的に低下して15ヶ国中14位、これがまた不評の原因になっている。日本の物価で1泊2食5800円ならばこの程度である当然だと思うものも、彼の国の物価からみれば5万円近くに相当するのだ。
 この満足度の低下には他の原因もある。日本国内にある中国や台湾系の旅行業者の台頭と、儲からない格安ツアーを黒字化せしめる免税店との取引実態だ。
 今回の報道では触れられなかったが、おそらく『陸援隊』のような輩も群がっていたのだろう。
 今回の報道では、隠し撮り映像(シャンプー3本セット特価1万円)や、内部資料も踏まえて法外なキックバック額にも迫った。定価3万2000円/割引価格3万400円(といっても5%引)の『富士山溶岩パック3箱セット』の業者へのキックバックは実に1万6900円。これには観光業界30年超の私も驚きだが、これも国交省下に於ける観光庁政策の問題点の一つだと言える。
 ニュースキャスターは、人数だけでなく『質』も問うべきだとコメントしていた。
 当然だ。

【日本再生戦略】

この度の、2020年度を達成目標とした『日本再生戦略』は、平均成長率を名目で3%、実質で2%を目指すとある。
しかしである。
 白物家電から最先端技術に至るまで、もはや日本は世界の工場ではないはずだ。鳴り物入りであったIT技術にソーラーパネル、そして薄型テレビすらも持続的には発展し損なった経緯もある。はたして前世紀のようにモノづくり産業だけで日本経済の再生がなし得るのかどうか、大いに疑問である。
この日本再生戦略には、我が国唯一の発展途上産業である訪日外国人を扱う観光産業にも一応の目標割り当てはある。
 2020年度までに年間2500万人だそうだ。
 しかしこれは、世界からの旅行者4億人の極東市場全体の僅か16分の1にすぎないばかりか、いきなり2000万人台から1800万人台へと緩和した今年度目標と比較しても『手緩い』としかいえない 数値である。
(まさかとは思うが、この数字は震災と原発事故で底を打った昨年の訪日外国人観客621万9300人を単純に3倍しただけでなのではないだろか)
 経済効果についても触れてはいない。
JNTOの統計によると、昨年一年間の海外への旅行者数は1699万3000人で、同時期の大手旅行業59社の海外旅行取扱総額も2兆2345億9083万1000円にものぼるとある。
(ちなみに7/13付の朝日新聞によると、今年の海外への旅行者は過去最高の1900万人に迫るそうだ)という事は、海外旅行における一人あたりの平均的な直接的支出が13万1500円になるということであり、これに現地でのショッピングや飲食、観劇などのオプションも加えると、一人一旅行あたりおおむね20万円の消費と見積ることができる。
 1699万3000人×20万人は3兆3986億円だ。
それだけに、たかだか年間2500万人程度の目標に甘んじているようでは×20万円でも5兆円の外貨獲得にしかなりはしない。
シンガポールを例にとるとこの国では、モノづくりのみならず外国からの観光客受け入れによる外貨獲得にも積極的で、実に自国の人口の倍以上の外国人観光客を毎年受け入れている。
ならば日本も人口の倍を目指せば、2億5000万人の訪日外客で年間50兆円の外貨獲得となり(ただし、これは相手国との物価均衡が前提条件ではあるが)、その恩恵は旅行業界や交通機関、宿泊施設、観光施設のみならず、二次的経済波及としてもエネルギー産業から地域の食材納入業者やクリーニング屋さんに至るまで、その裾野は内需プラスアルファとして拡がりをみせ、更には陸海空のインフラ整備事業、外国語や文化教育の現場、そして世界市場を相手にするソフト産業コンテンツにとっても、浸透がしやすくなるだろう。
(かつて日本人がローハイドに熱狂したように、水戸黄門が欧米や中東でブームになっても決して不自然ではない)
製造業を全否定するつもりはないが、国際競争の場において日本の労働力では採算が合わないのが21世紀の現実である。
 一方、我が国に於けるサービス業は先進国の中でも格段に地位が低く、万年赤字のままのサービス収支が黒字に転じる余地は、ほとんど見えてはこない。
いよいよもって、産業の転換が必要な時だと思う次第である 。

【おたのしみ地域交流ブース】

 三重県と奈良県は同じ紀伊半島には在るものの、所属する経済圏が違う為に運輸局の管轄が別々で、既存のメディアによる情報提供もありません。
 だから、世界遺産『熊野古道』がいい例なのですが、いま隣県で何が開催されているのかは殆ど分かりません。
 これは相互ともに100万人台の市場開拓の余地が、まだ残されているという事だと思います。
 たしかに隣接県である以上、関東圏からの集客においてはライバルなのかも知れません(本保教授の言葉をお借りすれば、例えば東京からの集客においては45道府県が皆ライバルです)。
 しかし紀伊半島を一つの文化観光圏とみなせば、インバウンドもふくめた、遠方からのお客さんの周遊観光促進の為には、極めて合理的な枠組みになると考えられます。
 なにしろ両県は幾つもの歴史街道でつながる上に、紀伊半島は東西に国際空港を擁してもいるのですから(先般、津市に宿をとったインバウンド団体は、入出国ともに関空だったそうです)。
 8/4の夕刻に、松阪駅前商店街で開催されます『七夕まつり☆鈴の音市』の『おたのしみ地域交流ブース』には、今回はじめて奈良県さんも入ります。皆様のお越しをお待ちしています。
 

No.56『地域振興と観光産業のかかわりについて2012』9月号

【七夕まつり☆鈴の音市】

まつり前日の金曜日までは猛暑が続き、まつり翌日の日曜の晩はなんと雨の予報。
しかし、今年で10回目を数える『七夕まつり☆鈴の音市』の開催日にあたった4日の土曜日は、適度な風と雲にも恵まれ、まさに絶妙のタイミングともいえる日和となりました。おかげで人出の方も昨年を上回ったようで、商議所によると前年比プラス1000人(27000人)。『八千代』さんちの天巻きも402本が完売です。
今回の『O.H.M.S.S. 地域交流ブース』のトピックスとしましては、今やブース常連となりました紀北町と津市の観光協会、本居宣長記念館、アイブレーン、NEXT2000に加え、鳥羽市観光協会と明和町の斎宮(いつきのみや)、そして奈良『県』が初参加となったことで、とりわけ『七夕まつり☆鈴の音市』同様のナイトイベントである斎宮の『十五夜観月会』や、世界遺産である平城宮跡の『平城京天平祭』を、松阪の夜祭り好きの客層に、初めてインフォメーションできた点で有意義だったと思います。
また、鳥羽市観光協会が、よいほステージで披露した、鳥羽物語倶楽部22人によるダイナミックな踊りも、現在企画進行中の鳥羽城、松坂城、そして上野城との『三重の城郭連携』を見据え、多くの松阪市民にお見知り置きいただいた点で大きな収穫でした。
もちろん常連も頑張ります。本書のタイトル『地域振興と観光産業のかかわりについて』の、いわば名付け親とも云える紀北町観光協会は『夏祭りKODO』のPR、津市観光協会とNEXT 2000は物販だけでなく、今年もシロモチくんの着ぐるみをサプライズで投入。本居宣長記念館は小読本200冊の頒布、アイブレーンは30人もの似顔絵を一人黙々と描ききりました。
今回の『地域交流ブース』は過去最大の、3ブース分のスペースとなりましたが、これも商議所が、観光産業がこれからの基幹産業足り得る事にご理解いただいたおかげです。何かとご尽力いただきました事に感謝すると共に、入れ替わり立ち替わりブースをお訪ねいただきました市長、市当局、県職員、新聞社、旅行会社にも厚く御礼申し上げます。

【続・七夕まつり☆鈴の音市】

実はこの4日後に『奈良歴史学会』さん15名が来松いたしました。
ご一行は奈良市内から一気に斎宮の歴史博物館まで行って、そこから折り返して松阪に入り、八千代さんで中食後、本居宣長記念館を見学し、松坂城址を見て帰る、といった行程でした。
ご存知のように奈良と三重は、隣県ではあっても所属する経済圏が違う為に、メディアを介した情報疎通が殆どありません。それだけに、奈良のチラシやパンフレットが目の前に置いてあることに、お客さんや奈良交通の乗務員は不思議がり、その訳として先般のまつりのくだんをお話ししますと、たいそう喜んでくれました。
奈良県の人口は140万人。三重県の人口は185万人。行き交う潜在的観光需要も似たようなもので、両県は五つの歴史街道で繋がってもいます。相互市場開拓をすすめる余地と方法はまだまだあると思います。
しかも、広域的な歴史文化観光圏を形成してコンテンツを整え、首都圏よりも先に英語で海外へと発信すれば、それが他国にはない歴史文化を扱う以上、外国人の目による評価が進む事はやぶさかでなく、その結果として首都圏を含む国内集客も自ずと後からついてくるに違いありません。なにしろ日本人は、海外からの評価にとても弱いのですから。
ただし、3月の『観光シンポジウム三重』の席上、O.H.M.S.S. メモランダムで本保教授に代弁していただいたように、ミシュランガイドで三ツ星にあるにもかかわらず、それが生かせないでいる伊勢のように『孤高』にいては意味がありません。
インバウンド戦略は、『歴史文化をモチーフとした紀伊半島の横断的な連携』が不可欠になるからです。

なお7/21に奈良『市』は、鎌倉市との間で『観光交流宣言』を締結したそうです。
目的は自然・文化遺産の活用と連携誘客、両市間の交流人口拡大による経済活性化で、文化遺産の被災調査等の支援といった『災害時相互応援協定』なども盛り込まれています。
しかし奈良市の人口36万5000人に対し、鎌倉市は17万人しかありません。
ということは市場性をみた場合、鎌倉市側が近隣市町村との連携をすすめなければ、対等交流はならないのではないかと思います。
ちなみにその翌日の7/22には、会津若松市と新潟市との間でも同様の宣言がなされています。

【ネバギブアップ】

奈良県全体で1700万人の来場者を数えた一昨年の『平城遷都1300年祭』における、奈良市とその周辺にある宿泊施設の稼働率は、その殆どが90%台にあったときいていました。
それだけに期間修了後の入り込みは、震災と原発事故による出控えも重なり、非常にシビアな状況が続いていたと思います。
7/20に公表された、事業継続断念の『天理観光ホテル』の破産申請。これもそのあおりでしょうか。ながらく観光業界に身を置いてきた者として他人事ではありません。
実は私も、前回の遷宮イヤーの翌年にあたる94年1/25の『榊原グランドホテル』が倒産した折りに出くわしたのですが、当時の売価で50万は下らない商品群の売掛が未収となり、ショーケースの中やバックヤードにある在庫も既に赤札が貼られていた為、回収できない事があったからです。
JALを引き合いに出すまでもなく、損をしてでも後から政治力で得がとれる金融機関とは違い、多くの地元の出入業者はそうはいきません。その損切りは、雇用も含めた地域経済に確実なマイナスとして跳ね返ってきます。
また、夏休みさなかの8/1、今度は知多半島で二つの旅館と31階建ての白亜の高級リゾート『スカイヴィラ』を運営する『海風』が、民事再生法を申請したともあります。同社には『中部国際空港』直近という好条件にある『スカイヴィラ』があるにもかかわらずです。
これは、地域観光経済にとって最も肝心である遠来のお客さんよりも、送り出し客の方が多い今の空港の在り方に、根本的な原因があると思います。
帝国データバンクによりますと、昨年一年間のホテル・旅館の倒産件数は129件(負債総額1000万以上)。今年上半期も既に55件。一方、国交省の庇護の下にある主要旅行業者58社と国際空港、航空会社は海外旅行の販促政策で皆さん黒字をマークしています(詳細は 『地域振興と観光産業のかかわりについて』のバックナンバー参照)。
そろそろ観光に携わる全ての業界は、いつまでもライバル館の値付ばかりに気を取られずに、地域観光行政と一丸になって独自の集客作戦を展開すべきだと思います。

【観光業界と領土問題】

8/12、当初見込みの入場者数1080万人に対し、その約3分の2にとどまった『麗水万博』が閉幕した。
新聞TVの前宣伝もあり、その入場一番乗りは日本人。世界104ヶ国の参加という事で、日本も200億もの巨費をパビリオンに投じていた。
しかし開幕後は、(私の予想にも反して)『麗水万博』への送客PRは鳴りをひそめ、そればかりか従軍慰安婦問題ばかりが大きく取り沙汰される事態となり、閉幕早々、遂には現職大統領の竹島上陸を許す結果となった。
日本政府はその理由を、大統領選を前にした『国内事情から』とし、日本のメディアも今のところはそれに追随している。
が、それならば同じ与党の対立候補からも同じ戦術が取られる筈だがそうではない。8/17の報道によると対立候補は大衆迎合だともいっている。
ならばこの間に『何か』があったとみる方が論理的である。
気になるのは、『上海万博』の時のような日本側の、国をあげての送客動員が『麗水万博』になかった事だ。これは韓国側の、今年の日本人観光客集客目標320万人政策に与するものでは明らかにない。
『上海万博』の場合、当時日本は日本旅行業協会あげて100万人単位の送客目標を掲げ、結果的には9月初旬の尖閣諸島における漁船体当たり事件勃発迄には、既に373万人の送客がなされていた実績(前科)がある。
おかげでこれは、JALの早期再建にも役立ったのだが、このような動員につき韓国側が、同様の期待を日本に寄せていたと考えるのは無理からぬ事である。しかし既にJAL の再建は軌道に乗っており、韓国側も福島原発事故による汚染懸念で長らく日本への送客および輸入に関してはシビアな立場をとるものでもあった(この7/1からは、新たに三重県産の海産物にも放射性物質検査証明を要求するようになった)。しかも自国生産品の心臓部であった日本製半導体も、エルピーダメモリの寡占態勢が崩れたことにより見限ってもいる。
この事が日本経団連の反発を喚んだ事は想像に難くない。韓国からは中国のOD05のような国家規模の大口投資もない。
したがって経団連も韓国に対しては、もはやライバル視以外のなにものでも無くなったとみるのが論理的であり、昨今の音無の構えからもそれがみてとれると思う。
折しも韓国はこの6月、移民政策が奏功し悲願の人口5000万人をクリアした。これは先進国の仲間入りを果たしたという事と、内需政策の見込みが立つようになったということである。
このような意識の変化は、つまるところ覆水盆に帰らずであり、ならば我が国に於けるインバウンド戦略も、たとえそれがビジネスとはいえ、ナショナリズム・リスクを民間の観光業界と地方自治体に押し付け、外務省と国交省、そして大手旅行業界だけが高見で見物とならないよう是正されて然るべきだと指摘する。
観光業界は外交官ではないからだ。

No.56『地域振興と観光産業のかかわりについて2012』9月号つづき

【ウサギとカメ】

 土曜日が隔週の休日になったかと思えば、程なく今度は完全週休二日制へと移行して、祝日がない月には新たに『国民の休日』までをも生み出し、揚句、震災前には連休の地域分散化案までもが飛び出す始末。
 もはや労働時間の抑制政策は、いつの間にやら内需拡大政策として焦点は、『如何にして効率的に金を使わすか』へと移っていった。
 しかし、その結果はレンタルビデオ店の繁盛と、爆発的なパチンコと海外旅行人口の増加であり、当初政府が建前としていた筈の『地方への富の再分配』については、僅かに高速無料化の恩恵として、可処分所得の少ない層のいわゆる『安近短』客を増やしただけにとどまり、宿泊を伴う高額客を海外旅行へと持って行かれた事によって 、多くの観光地では逆にダメージを被る事となった。
 もともと労働時間の抑制は、主に米国からの『日本人は働き過ぎの儲け過ぎ』との指摘を受けた80年代の貿易摩擦問題回避策に端を発するものだったが、日本から失われたものは単に労働時間にとどまるものではなかった。時間削減による効率化偏重が、長らく経済成長を支えてきた『ゆとりと勤勉性』を阻害すると共に、教育現場からも義務教育の質を喪失させていったのだ。
 今にちの後進国との摩擦は、ウサギとカメの比喩を借りると分かりやすい。つまり日本は、寝過ごしたウサギになっていったのである。
 だが全ての産業がそうではない。まだ日本にもカメは居る。
 それは盆や正月、土日に祝祭日と、日夜、人が休んでいる時にも職分を尽くす地域の観光業界である。
 政府はこれが絶滅危惧種とならぬよう、せめて先進国並みの集客ぐらいは完遂してもらいたいものである。その為には世界に向けて『歴史と文化』を誇るしかない。この事は諸外国の取り組みをみても明らかである。
 無論、中にはミスマッチを起こす国もあるだろう。これは往々にして社会成熟度の違いによって引き起こされるものである。日本人もそうだった。
 ならばそれらの国には、未来に託した正しい選択としても、『大人になったら出直しておいで』とした方が余程お互いの為になる筈だと思う。
 
【OD05 オムニバス】

 JAL 広報によると再上場は9/19に決定、5000億から1兆円規模になる見込みとの事。
 この件にかんがみ8/3の中日新聞は、企業再生支援機構に投入してきた税金が、国民負担なしで回収できたとだけある。しかしこれは、機構に政府と同額を出資してきたメガバンクを含む金融機関130社とその株主達にも同じ事が云えると思う。
 この日の経済面には『OD05』の紹介記事も、さりげなく掲載されている。
 左右両端に分かれたその紙面構成は畳むと重なる位置にあるが、それはまるでJALの株がここへと流れる事を示唆しているかのようでもある。
 リストをあたってみると、この中国財務当局による大口投資が、既に日本の大手企業、金融機関に広く及んでいる事が分かる。3月末時点で238社、TOPIX500銘柄だけでも145社もあり、その中にはANAや地域独占企業である電力各社の名前まである。
 ひるがえって,、昨年一年間に日本の主要旅行業者が扱った海外旅行取扱高は約2兆2346億円。JNTO によるとその数は1699万4200人にものぼる。
 この、2011年度にギリシャを訪れた観光入国者数1650万人をも上回る海外送客の数は、国交省のJAL支援政策で海外旅行をどんどん促進してきたからだが、同時にこれは内需に廻らなかったカネとお客さんである。つまり、国内観光の犠牲の上で復活したとも言えるJAL を、中国の術中に落としては元も子もないということである。

【追跡!真相ファイル】

 8月号の【高コストの負担】と【ニュース9】の項でも書いたが、中国人団体客へのぼったくり問題の実態が、8/21夜放送のNHK 『追跡!真相ファイル』でも大きく取りあげられていた。
 原価2000円の健康食品が、外国人経営者が日本で開業している『免税店』で2万円で売られている件(一例)だ。このうち5000円づつが受け入れ旅行会社と通訳ガイドの取り分となっているが、おかげで日本は詐欺国呼ばわりである。
 だが番組の焦点は、不法就労の外国人通訳ガイドの問題にすり替わってしまい、システムとしての旅行業界の問題点は矮小化されてしまった。
 3.11以降、多くの国内観光地では旅館やホテルの倒産が相次いでいる。自粛キャンセルも多かった。これは今年に入っても尾を引く、地域雇用経済の大問題だ。
 ところが大手旅行会社はそうではない。この業界だけは海外旅行の販促と中国人観光客受け入れで、前年並み売上ぐらいはマークできるのだ。おかげでJALの更生もはかどった。一石二鳥である。
  取材方法としての尾行や隠し撮り、待ち伏せは評価できる。だが番組終盤にディレクターが観光庁に問うべき問題は、このアウトローどもの駆逐ではなく、それと同額の手数料をせしめている旅行会社の方だと思う。
 韓国のように、たとえ水際で違法ガイド(64人)を摘発したとしても、十中八九いたちごっこになるに違いないからだ。
 
2012.0901

No.57『地域振興と観光産業のかかわりについて2012』10月号︃

【日中国交40周年】

 領土問題が燻り始めた8/28。この日、日中国交正常化40周年の交流式典を行うべく500人の観光業界使節団が西安市へと訪中した。
 その面々は、親中派の○階衆議院議員と、氏が会長をつとめる全国旅行業協会、日本旅行業協会、日本観光振興協会である。
 しかしこの訪中は、日中国民交流友好年実行委員会の取り扱う主催事業や認定事業ではない。本番の北京での記念式典は9/27だ(こちらも9/23に、事実上中止となった)。従って、この事が大手メディアで報じられる事もなかった。
 記念講演で○階氏は、ウィンウィンの関係を築くべく、観光業界に事態打開をはかる知恵を出そうと呼び掛けたと言う。だが、仮にもこのような外交的大任を、我が国で最も弱小なる業界に押し付けること自体、認識違いがあるのではないだろうか。そこには、相手国への思いの違いと、取引上の二つの大きな問題点があるからである。

①戦略的互恵がいつまでたっても互敬にならないのは、国交正常化以降40年間、中国政府が親日教育を怠ってきた結果なのではないのか。

②日本人観光客が中国で1万円使えば、あちらでは10万円の価値になるが、その逆は10分の1である。したがってこの不平等物価差を互恵とするならば、日本人の中国送客10人に対して、中国からは100人を送客すべきなのではないか。

 この根拠は、9月の反日デモの映像に若年層が目立つ点と、訪中日本人373 万人に対して、訪日中国人は僅か104 万人しか来なかった、震災前2010年当時の報道に基づくものであるが、平たく申せば、日本人中産階級層の大量送客の結果として国内観光経済がマイナスとなる以上、本来ならば3730万人の訪日中国人が来なければ、我が国の観光経済は引き合わないという事である。

【この夏の鳥羽市から】

 鳥羽市の調査によると、この夏8/10~8/18にかけての宿泊者数推計値は8万5870人とのことで、前年比では6.3%のマイナスであるとの事だった。
 一方、日帰りを含む主要観光7施設の入場者数は8万7928人で、前年比は5.7%のプラスとある。
 交通機関に注目してみると、伊勢湾フェリーがマイナスの5.9%で1万3292人、近鉄利用も同じくマイナス5.9%の2万6620人、JR利用がマイナス5.6%の2626人で公共交通機関がオールマイナスに対し、逆に主要駐車場のマイカーは2万645台でプラスの6.3%とある。相対的に日帰り低予算客が増えた結果だろう。
 この宿泊を伴う観光客の減少原因について、中日新聞の記事では、スカイツリーや東北観光への関東圏マーケットの流出ではないかとしている。が、そこに空前の海外旅行者数があることも私は書き加えるべきだと思う。なにしろセントレアからの中部圏マーケットの海外流出だけを見てみても、8/10~8/19の出国数は、前年プラス3.4%の7万6300人もあったのだから(そのうち韓国行きは1万8700人、中国+香港行きは2万3600人にもなる)。
 これは、震災後の景気悪化を食い止める為の『内需振興』から逸脱しているばかりでなく、貿易収支の面からみても、サービス収支のマイナス幅を拡大するものだといえる。

【外資】

 先日ある新聞社の方にお話したのだが、各地で業績不振の旅館やホテルが中国資本に次々買収されてチェーン化してしまった場合、光熱費こそ現地調達であれど、食材や従業員が中国からの大量送り込みとなった場合、価格競争面では激安優位となって従来からある地域観光産業を駆逐してしまう恐れがある。
 8/3付の中日新聞では、日本の有力企業に3兆円を投資している『もの言わぬ大株主』OD 05の正体が『中国国家外為管理局』ではないかと報じていたが、中国資本は直接的にではなく香港やイギリス領のバージン諸島やケイマン諸島、台湾などを経由するものも多い為に、その全体像の把握は難しい。
 しかし中国系企業の、観光や飲食業界への進出は、ツアコンやツアーバス会社以外にも既に顕在化してきており、大きいところでは北海道の山田温泉ホテルや日本ハーモニーリゾート、『どさんこチェーン』のホッコク、熱海の花の旅館染井などがよく知られている。
 予測される中国バブルの崩壊懸念から、今後日本買いの加速が予測されるが、このような中国資本によるチェーンの進出だけは、日本ブランドの維持と地域観光産業の保護育成の観点からも、厳重なる警戒を要するところだと云える。
 なぜならば地域の歴史文化観光産業こそは、唯一よそには真似のできないオンリーワンコンテンツだからであり、特に外貨獲得面においては、日本では未だ発展途上にある有望分野だからである。

【二律背反】

 報道によると9/15、韓国からの団体ツアー観光客40人が福島空港へと降り立った。
 歓迎セレモニーを用意した福島県は、県産の日本酒やナシ、ブドウを乗客に提供したとある。
 これは、韓国側の7月の渡航制限緩和措置を受けた県が、知事の提案で大韓航空の子会社LCCの『 ジンエアー』をチャーターした上での事である。
 現在、福島県では国際線が就航していた上海かソウルに限って10名以上の国際線利用者には『国際線再開等利用促進事業補助金』を公布しているが、その対象は県内の企画立案団体となっており、営利目的は駄目だが旅行会社はO K とし、一人あたり1万5000円の上限30万円で補助するとの事である。
 40人ならば2組に分ければ、ちょうど30万×2で収まる勘定だが、このような大盤振る舞いによってでも、日本の風評が一日でも早く払拭されんことを切に願うばかりである。
 だが、9/10に外務省が発表した『東日本大震災輸出入等関連措置』レポートによると韓国は、神奈川、千葉、群馬、栃木、茨城の特定産品と共に、福島県産の葉菜類、果実、米、キノコ類等も『暫定輸入中断措置』を継続したままであり、そればかりか、新たに三重を含めた15都道県の水産品にも『放射性物質検査証明書』を要求、ほかの府県についても『産地証明書』の提出を要求していると書かれている。
 ここに二律背反の危うさが在る。

【非力】(9/21夕刊三重掲載投稿 加筆) 

 日本にも少し前までは『舶来品信仰』というものがあった。日本製は駄目で、欧米製品は優秀でカッコいいというものである。
 だがそれは、物真似時代と高度経済成長期を経て完全に覆り、今や日本製品は裕福となった中国人も、こぞって求める世界ブランドとなった。
 その中国で起きた反日デモ。メディアを通じて刻々と報じられた傍若無人な振る舞いは、もはや暴動の域に達すると言っても過言ではない様相を帯びていた。
 ところが外務省は何故か渡航制限を出さなかった。最も危険視されていた18日にも、中国ツアーからの帰国客があったぐらいである。
 今にして思えば、これは20日から上海で開かれる予定だった『日中グリーンエキスポ』への日本経団連の訪中を控えていたからではなかったのだろうか。なにしろ経団連はぎりぎり18日まで訪中の意向を示していたからだ。
 だがこれも、19日の中国側からの延期要請であっけなく潰えてしまったのだが。
 上得意国との経済関係が絶たれると、日本の損失は計り知れないという。
 されど、こうして最新の環境技術を紹介する事が、果たして国益にかなうかどうかは今となっては疑問である。なにしろ家電製品や新幹線技術同様、遅かれ早かれ真似される事は明らかであり、国威発揚と内陸部の振興で、いずれ保護貿易まがいに走る事もやぶさかではないからだ。かつて我が国もそうだった。
 それにしても、幾つかの大手旅行会社がまだ懲りていないのには畏れ入る。9/19の中日新聞朝刊によると、名鉄観光サービスとJTB中部だけはキャンセル等の目立った動きがないとして、中国への送客は継続する意向を示している。さすがはセントレアの大株主である。
 しかし一昨年の巡視船への漁船衝突事件の際には、日本の商社マンが中国人船長が釈放されるまで拘束された事もある。再びこのような事態が起きないと、いったい誰が保証できるというのだろうか。
 今回のデモでは比較的親日だと喧伝されてきた若年世代にも反日教育が浸透している事が露見したが、取りも直さずこの事は、過去40年間の現役世代の如何なる民間交流も非力だったという事である。

【連携】

 50の山城と17の平城を紹介した、福井さんの『三重の山城ベスト50』のあとがきにもあるように、三重県は近畿と東海の「はざま」にあって東西文化が混在し、せめぎ会う所にあります。
 しかし三重の観光サイトは中部経済圏に組み込まれており、関西圏とのつながりは僅かに近鉄さんの広報の届く範囲に限られています。これは国交省の管轄する道路、PA、SA、JR、空港、大手旅行会社の支社がすべて中部だからであり、従って直近の大都市圏も名古屋市という事になります。
 その名古屋市の人口は226万6700人。人口742万3200人の愛知県民の約3割がここに住んでいます。(これは267万6500人が住む大阪市よりも40万人程少なく、県も886万3700人の住む大阪府よりも144万人少ないという事になります)。しかし、そのすべてが三重の観光サイトへと目を向けているわけではありません。当然ながらこのマーケットには、名鉄沿線の観光サイトと北陸方面や静岡方面といった選択肢もあるからで、更には名古屋城とその城下における名古屋版おかげ横丁も控えているからです。
 という事は三重の歴史文化観光を語る場合、中部財界の意向に沿うマーケットだけでは足りないという事になります。その端的な例になるのが、どういう訳か中国人民の集客に重きを置いていた『昇龍道』だったと思います。
 もともとこの『昇龍道』は、石川県の温泉旅館『多田屋』さんの社長が会長になって石川・富山・岐阜のホテルや料理店といった10事業者がつくったものであり、セントレアを起点に東海北陸道に沿って北陸の観光促進を意図するものでした。それが、いつの間にやら会長が中電の三田会長に替わって中部運輸局が音頭を執る事となり、この時点で龍の尻尾が初めて三重へと届いた経緯があります。
 この『昇龍道推進協議会』では9/18に、来日予定だった中国政府代表団との交流会を予定していました。が、反日デモによる影響でこれが流れた事は報道の如くです。三重県は10月に予定していました河南省への訪問も延期としましたが、むしろこの事は三重の観光サイトにとっては、以下の三つの点で幸いだったのではないかと思います。
 一つ目は、伊勢神宮を筆頭とする三重の文化観光コンテンツは中国人民にはミスマッチである事。二つ目は、名鉄が大株主であるセントレアからの観光ルートが、三重にも対等に及ぶ可能性が極めて薄い事。そして三つ目は、集客数よりも送客数過多になる為に起きる国内マーケットの弱体化が回避された点です。
 間もなく三重の鳥羽市と伊賀市そして松阪市では、城郭をランドマークとして、三重の歴史文化を広く紹介していこうという広域連携事業が始まります。國の光は『お伊勢さん』だけではあらへんでとの遷宮対策の一つです。
 それを支持してくださるマーケットは、街道を通じ同じ歴史文化圏にある紀伊半島つまり西関西と、自国にない歴史と文化を知的好奇心とエキゾチズムで楽しんでいただける欧米圏が適しており、物見遊山の買物団体ではないと思います。
 なお『三重の山城ベスト50』にある伊勢上野城や紀伊長島城といった山城跡も、物語を紡ぐ上でいい題材になると思います。街道に沿って広げれば『紀伊半島広域観光圏』形成のポイントにもなるからです。

No.58『地域振興と観光産業のかかわりについて2012』11月号 

【三人の宇宙飛行士】

 子供の頃にみた白黒のアメリカ製のTV番組に、こんなエピソードがありました。

 三人の宇宙飛行士を乗せた円盤型宇宙船が難破する。
 三人は、遭遇した遊星に不時着を試みるかどうかを議論する。
 遊星の表面には瞬く光点。
 何があるのだろうかと、三人は腹を決めて着陸を決行する。
 だが、地上に降り立った彼らが目にしたものは、大破した自分達の船と三人の亡骸だった。
 その上空には、三人の宇宙飛行士を乗せた円盤型の難破船が再び出現。
 三人は、遭遇した遊星に不時着を試みるかどうかを議論している。

 つまりこの話は、既にこの世のものではない事に気付かぬ三人の宇宙飛行士が陥った無間地獄(むげんじごく)を、それを客観視できる視聴者だけが最後に分かるというプロットで、主観と客観を逆にすれば分かる『本当の事』と、それを認める重要性を示唆するものでした。

 さて、福島原発事故から572日目にして二つの大きな報道が複数の新聞社によって報じらました。一つは10/3に毎日新聞電子版が報じた『秘密会』の記事。もう一つは10/4の中日新聞が紙面で報じた、昨年3/12の最初の水素爆発の前に既に毎時1590マイクロシーベルトもの放射が始まっていたとの記事です。
 とりわけ前者は、福島の健康県民調査につき、政官学が一体となって『がん発生と原発事故に因果関係はない』とする過小評価を、実に1年以上にわたって申し合わせてきたという事を、写真や役場とのやり取りも踏まえ二回に分けて早朝に配信したスクープでした。
 ところがです。にもかかわらずこの記事は、同日の夕刊には載りませんでした。それどころか翌日の朝刊には載りはしたものの、その扱いは小さなベタ記事となり、しかも10/10には、(今回は)申し合わせの事実はなかったとする県側の調査報告を東京版の紙面で報じるのみ、翌10/11には電子版で、この県の調査報告を疑問視するとの記事を入れるとゲームセットとしました。
 もちろんこの『秘密会』の件は他紙にはありません。TVも僅かにテレビ朝日が報じただけのようで、10/6の朝刊で、福島のモニタリングポストの数値が意図的に低く押さえられているとの記事を扱った朝日新聞も、『日本がん協会』と共に福島の子供たちに過小評価を教育して回る『ドクタービジット』を主催している為か触らずじまいでした。(因みにテレビ朝日は10/16、2億7000万円の申告漏れが明るみに出もしました。)
 果たして、こうまでしてでも政府が報道を抑制させなければならない理由はいったい何処にあるのでしょうか。そこには補償にまつわる不可避の問題があると思います。
 すなわち歳入不足です。
 たとえば、もし仮に福島原発事故による被曝状況がチェルノブイリ並み、或いはそれを上回るものだったとしたら、果たして我が国の国力は、長年にわたるその補償に堪え得る事ができるのかどうか。
 またシビアリスクの国際社会への露見によって、国債や株価、円相場にどのような影響が表れるのか。
 ソ連邦の崩壊が原発事故によるものだとまでは申しませんが、事故自体が当初隠蔽状態にあった事、それがきっかけとなってポーランドを筆頭に東欧諸国の独立を促した事も事実とされています。NHKのETV特集によるとウクライナでは、実に国家予算の二割が除染と補償の予算として計上されているともありましたが、日本経済新聞の福島支局長が『公益社団法人日本経済研究センター』へと寄稿した『チェルノブイリ原発特別報告』によると、完全履行では国が破綻しかねないため現在は6%くらいしか補償していないとの事です。
 日本はモノづくりを後進国に譲り始めた上に、少子高齢化と人口減少で内需縮小の中にもあります。このような歳出過多の問題は、日本経済にとっても看過できない大きな問題だと思います。
 にもかかわらず起死回生の外貨獲得政策は、どの政党も示し切れてはいません。それだけに今、財源もないままに被曝状況を素直に認めれば、日本経済は破綻する事にもなりかねないジレンマです。
 しかし結局のところ露見は早いか遅いかだと思います。チェルノブイリにしても、急に子供の甲状腺がんの増加が認められたとする4年後の1990年とは、ちょうどベレストロイカによるグラスノスチの時期とも一致しています。
 果たして三人の宇宙飛行士のような無間地獄に、日本が陥らない為にはどうすればいいのか。節約も大事ですが富国政策はもっと大事だと思います。
 たとえばシンガポールのように自国の人口の倍のインバウンドがあれば、日本の場合(1億2000万人×2)×一人平均18万円で43兆2千億円の外貨収入になります。
 これは先進国中、唯一日本だけが発展途上である『歴史文化観光』の見積りです 。
 年間で2億4000万人。(初代観光庁長官の本保教授は、アジア圏には欧州からだけでも年間3億人の観光客があると申します)もし仮にこれが47都道府県に均等に訪れるとなると、1県あたりは年間で500万人の勘定にもなります。
 ですがこう申しますと、『そんなに観光客が押し寄せてきたら、町や交通インフラは外人で溢れかえって大変な事になるじゃないか』と申される不勉強議員さんもいるかも知れません。しかしこの500万人は、何も大挙して一度に押し寄せて来るわけではありませんし、2005年の『愛知万博』開催時期半年間の入場者数2205万人の僅か22.67%にしか当たりません。治安にしても、よほどの反日団体客でも来ない限り支障をきたす事はないでしょう。
 ひるがえって今年の日本のインバウンド数値目標は、風評をかんがみ僅か年間900万人に下方修整されています。これはニューヨーク市一都市の年間970万人をも下回るちっちゃな数字です。にもかかわらず今の観光庁は、経団連が敷いたエアルートを使って比較的安易に『人数だけは稼げる』中・韓に大きく依存していた為に、それすらも領土問題を受けた今にちでは達成困難な状況となっています。10/19にJNTOから発表された統計によると、9月の訪日外客数は 66万 500人(1月~9月トータル632万8500人)で、日本からの海外旅行者数は162万5000人(1月~9月トータル1415万3000人)です。
  10/20の中日新聞によると日本旅行業協会の菊間会長※(ワールド航空サービス)は、今年の海外送客は過去最高に達するとご満悦ですが、その陰では先月の『ホテル百万石』に続いて先日は『びわ湖温泉紅葉』の閉館等、国内観光産業の苦境も続々報じられています。
 貿易収支のバランスとりとして、日本からの観光客をインバウンド数以上に送り込めばメイド・イン・ジャパンを沢山買ってくれた時代はもう過去のものです。今の日本は前世紀の常識を覆す産業革命が必要です。観光立国は原発被災者のみならず、グローバル競争時代における明日の日本の雇用・経済の切り札になるでしょう。まだ日本観光の国際ランキングは30位です。
 その為には、まず『希有な国日本』を自覚すると同時に、地域各々の『世界に通用する歴史文化』と『観光政策の融合』から始めなければならないと思います 。

※全国旅行業協会の方の会長は、○階衆議院議員です。

【地方の時代に向けて】

 ○○で町おこし、地域活性化、賑わいを取り戻せとの掛け声を各地できいて久しいが、それでも昔の活気を取り戻すのには程遠い。
 費用持ち出しで安売りや振る舞いイベントを仕掛けたとしても、多くの場合賑わいを取り戻すのはその時だけで、平日はまた格段に静かである。
 さもありなん、日本は急速に少子高齢化が進行中なのだ。その影響は人口の少ない郡部から始まり、地方都市を経て、遅くとも四半世紀後には国全体へ波及すると云われている。つまりこれは、内需が加速度的にどんどん失われていくという事である。
 その対策として大企業はいち早く海外へと展開した。だが、町が丸ごと外国へと引っ越す事はできないし、その意味もない。
 つまり恒久的な町おこし、地域活性化、昔の賑わいを取り戻すには、どうしても外客誘致が必要なのである。
 しかし履き違えてはいけない。外客とはいわゆる『都会の人』ではなく外国人の事である。東京人をいくら追い回しても競争倍率は46(道府県)分の1であり、もし仮に赤ちゃんから寝たきりまでの東京都民1300万人全員が年一回、各県へと均等に国内旅行に出掛けたとしても、一県あたりには28万人しか当たらない。しかも、時を同じくしてこちらも減少に転じてしまう。さもなくば周辺が限界集落だらけなってしまうからである。
 したがって戦中のような『産めよ増やせよ政策』を今すぐにでも行わない限り、地域が恒久的な賑わいを取り戻すには、外国人観光客の増加以外に方法はないとの結論に到達するわけである。
 されど訪日外客誘致も、のっけから中・韓に依存したのはいけなかった。報道によると、ダブル領土問題によるキャンセルで、当てが外れた土産店や観光施設も多いときく。どうやら上手くいったのはJALの早期再建と、100周年目のメンツを保ったJTBぐらいのようである。
 では何故こうなったのか。それは社会成熟度合いからみれば当然だったとは言えまいか。
 つまり両国は、最も集客に必要な三大要素である『物欲』『体験欲』『知的好奇心』のうちの、まだ前者にしか興味を示さない、かつての日本のような若い国だったからである。しかもその間には、近隣国であるが故に歴史・文化の『相似と相違』のギャップも横たわる。
 それならば、全く異質の歴史・文化圏こそが逆に相性があるとは言えまいか。この事は、長年観光産業に従事していた者ならば経験としても持っている筈である。
 つまり非日常的な感情である『異国情緒』というものは、物理的な距離が遠ければ遠い程その思いも強くなるものである以上、我が国の観光集客はアジアン親日国のみならず、全く異なる文化圏である欧米にこそ拡大せしめるのが論理的な選択だと云える。
 そして地方の時代ともなれば、その実証を、地域観光圏や自治体レベルで競う時代が来るに違いない。
 このたび、先ずは三市連携でスタート切る『三重の城郭めぐり』は、遷宮と遷宮アフターのみならず、『紀伊半島観光圏』形成の為のコンテンツ作りの1つでもある。

【紀伊半島文化コンテンツ】 

 大宇陀の観光協会会長が10月をもって辞任なさるとの事で、今回10/12の奈良行きはその労をねぎらうべくプライベート単独行となり、同時に奈良県との交流を更に深める為に、『平城京歴史館』と『奈良県ビジターズビューロー』へと足を延ばして参りました。
 この世界遺産平城宮跡に在る『平城京歴史館』は、この夏の松阪市の『七夕まつり鈴の音市』にも『まちづくり推進局』と共に『地域交流ブース』に加わっていただきましたので、松阪市の市長さんをはじめ市民の方々の記憶にも新しい事かと思います。
 すすきの穂がなびく秋晴れの下、朱雀門の横手に広がるパーキングには遠く徳島県からのバスも台数口で入って来ており、青い官服姿のせんとくん人形が沢山の来訪者をお迎えしていました。
 されどこのパーキングも近々アスファルトを剥がし、宮跡の一部として復元しなければならないとの事。隣接している積水化学工業敷地も既に買収がなされたそうです。
 ことのほか世界遺産の維持管理と観光客との共存は大変なようです。
 なお『天平祭』秋バージョンは、11/10~18に開催されるとの事でした。
 さて、奈良県知事を代表に置く『奈良ビジターズビューロー』は、国内外のコンベンションを誘致・開催支援で、奈良全域の国際化と経済活性化、文化の向上を目的とする県のマネージメント機関です。
 ここでは、現在O.H.M.S.S.活動にご賛同いただいている市町村の文化と観光のパンフレットと共に、遷宮とそのアフター対策とした松阪市と鳥羽市と伊賀市の三市連携で先ずは先鞭を切る『三重の城郭めぐり』の取り組みをお話して参りました。
 この連携案は大震災1日前の2011年3/10に投げ掛け、『地域振興と観光産業のかかわりについて2011』4月号にも再録して広域配信してきて以来、実に足かけ一年以上にもわたった構想で、今年4月の『しろやま嘉隆まつり』を受け、5/25の企画書初稿以来ようやくこの秋、三城跡が並ぶパンフレットが陽の目を見る事となりました。
 これも各市各人の御尽力の賜物です。
 11/3の『氏郷まつり』で御披露できれば幸いで、早々に奈良県さんと関西圏マーケットにもご紹介、再来年の熊野古道10周年も踏まえ、紀伊半島文化コンテンツへと発展させていきたいと思います 。

10/25夕刊三重掲載の【B級グルメは民業圧迫と紙一重】のオリジナル原稿

 10/20から始まった第7回B-1グランプリin北九州。
 B級グルメが全国から集まるこのイベントには、二日間で61万人が訪れたとの事。
 報道によると単価は300円から500円。という事は、1人一品食するだけでも500円×61万人で3億万円を超える売り上げとなる。大会関係者はこれを地域経済への波及だと言っている。
 しかし、北九州市小倉西区2268軒の飲食店の側になってみたらどうだろう。逆にこれは売り逃した金額であるとは言えないだろうか。店だけではない、そこに勤める調理人や出入業者にとってもだ。何しろ多くの飲食店にとって土日のお昼はかき入れ時でもあるのだから。
 このような飲食の伴うビッグイベントは、民業圧迫と紙一重であるという事も忘れてはならないと思う。

【日観連と国観連の合併】

 例年どおりならば、 今年も間もなく厚労省から前年度(2011)の旅館軒数が公表される筈である。『百万石』や『紅葉館』のリタイアも記憶に新しいところだ。が、実のところ現在公開されている数字『約4万7000軒』は、前おととし2009年の新型インフルによる出控え禍と、おととし2010年の海外大量送客を経た『2010年度4万6906軒』の事であり、震災と原発事故による昨年度の減少もまだ反映されてはいない。したがって昨年4月に営業を停止して、今年破産した江戸時代後期創業の国の有形文化財でもある『喜八屋旅館』も、まだ入っているという事になる。だからというわけでもないだろうが、10/18に発足した新団体『日本旅館協会(JAPANRYOKAN&HOTEL ASSOCIATION)』の会員数は僅か3381軒にしかならない。これが長年の紆余曲折を経て、日本観光旅館連盟と国際観光旅館連盟が合併した結果である。
 報道によると祝典に出席した来賓の一人JTBの田川社長は、「旅行業と観光業が本当のパートナーシップを発揮できれば、日本の観光業界はもっと発展する」と語ったとある。
 この『上から目線』は、明らかに観光業界が旅行業界の下請けであるとの前提に立つ発言と受取れる。なぜならば日本の観光業界は旅行業界に比べて圧倒的に中小零細が多く、政治力も無いに等しいからだ。この事は、震災と原発事故の影響で多くの国内観光業界がマイナスに転じていたにもかかわらず、大手の旅行業社だけは海外送客キャンペーンを張って、前年なみ或いはプラスをキープしていた昨年度の年間取扱高を見ていただければお分かりいただけるだろう(7月号参照)。
 今やネット集客の発達で、国内旅行における旅行業社介在率は二割を切って久しい。それゆえ旅行業界にとっては、まとまった人数で売れる中/韓は魅力的だ。JALの早期再生もうまくいった。
 そんな時代である。だからこそ、今や地域文化をモチーフとした観光集客は自治体が主役となりつつある。ならば『日本旅館協会』が旅行業の団体と対等に渡り合えるだけの会員数を獲得する為には、『経済政策としての地域文化観光』が後ろ盾として必要になってくる筈である。でなければ早晩『日本旅館協会』は、旅行業団体の下部組織になり下がるであろう。
 即ちこれは、図らずも『中央集権対地方分権』の縮図になってくると云う事でもある 。

補足

 厚生労働省から2011年の旅館軒数が出ました。前年よりも710軒マイナスの4万6196軒です 。

2012.1103

No.59『地域振興と観光産業のかかわりについて2012』12月号

【O.H.M.S.S.レポート天平祭】

 2012.1116。『城郭めぐり』等の三重県側パンフのお届けと共に、文化観光の参考にと今回の訪京では『平城京天平祭・2012』をみてきました。
 『平城京歴史館』前には巨大なせんとくんエアドーム、『朱雀門』の近くでは天平衣装の体験コーナーや3D巨大迷路といった子連れでも楽しめるアトラクション、そして県民文化祭のステージでは、宮城道雄が1921年に発表した卓上琴のような楽器『17弦の箏(そう)』と尺八による演奏会が行われていました。この珍しい楽器は1929年にフランス人女流ヴァイオリニスト、ルネ・シュメーと競演した『春の海』で世界的評価を得て、1932年には日仏米でレコードも発売されたそうで、今回の演目も記念のこの曲からのスタートでした。

 踏切を渡って『大極殿』前へと移動しますと、ここでは巨大ステージの組立て真っ最中でした。明日はバロック音楽の演奏会、明後日は杏子をゲストに迎えたコンサートや、インドネシア総領事館共催のバリの舞踏と民族音楽の演奏会が開催されるとの事です。この『大極殿』をぐるりと取り囲んだ木製の塀と門の中は、二日間、巨大な野外コンサートの熱気に包まれる事になるでしょう。
 しかしこの塀と門、『大極殿』と同色に塗られて景色に溶け込み違和感もないのですが、ガイドさんによりますと、国は史実に則った廻廊ではないとの事で難色を示しているとの事。もちろん宮跡内にある大駐車についてもです。そこで県は、門左手側にある工場を買い取って駐車場にするという訳です。

 因みに国道から門までの正面の土地は奈良市の所有で、門右手側は国の管轄だそうで、ここには国交省の管理事務所も建つとの事。はたして国・県・市の文化と観光の連携・連動モデルと相成りますか、それとも否か。
 ところで3・11の折には、震源地から遠く離れたこの『大極殿』も大きく揺れて驚いたそうです。
 1998年に完成した『朱雀門』の方はそうでもなかったという事ですので、『大極殿』(2010年完成)に備えられた最新型の免震装置が、逆に共鳴現象を増幅したのではないかと思います。
 なお、明日は島根県から『松江城』のPR武将隊も来るそうです。来年、出雲大社で60年ぶりに行われる『平成の大遷宮』を前に、人口20万人余の文化観光都市の、観光誘致にかける思いが伝わってまいります。

【スカイフォール】

 耳目を集める中長期的観光コンテンツとして、文化とその歴史をモチーフにするのは大事である。一般論として、次世代に対して普遍性を持たない一過性のモノは、飽きられると同時にその役割を終えてしまうからだ。
 しかしこのモチーフとしての文化と歴史も、現代の若者の視点に立ってみたらどうだろう。思い返せば、経済成長の最中に私たちがみた夢も、『過去』をモチーフにしたものよりも『よりよき未来』指向の方が多かった筈である。
 やはり若者には、現代トレンドと共に目指すべき明るい未来が必要なのだ。
 だが、今の政治にそれを期待しても無理なようである。三党合意による赤字国債法案にしても体のいい将来へのツケ回しに違いないのだが、やれ維新だの、やれ太陽族だのと、時代錯誤政党の台頭も危なっかしい限りである。なぜならば過去のアナロジーの行き着く先は、結局のところ精神論しかないからだ。下手をすれば再び「欲しがりません勝つまでは」である。その一方で国富を説く政党は一つもない。
 お気づきのように、今の日本経済は成長してきた後発国の台頭によって、戦後以来邁進してきた工業製品輸出による外貨獲得政策が行き詰まってきている。それと同時に、人口減少による内需の衰退にもこれから直面する事になる。
 これは、いよいよもって20世紀モデルが陳腐化してきたという訳だが、今のところ経済産業界はそれを公けに認める度量はないようだ。それどころか半世紀前の日本製品の国際評価も忘れ、未だに外国製は日本製よりも下にあると見ている節もある。そもそもこの驕りこそがガラパゴス化の原因とも云えるのだが、おかげで今や国民の国民による国民の為の経済政策は危機的状況にある。巷にはクビ切りが横行している。
 すなわち、今の政治に欠けているのは儲ける対策を練らなければならないという事だ。21世紀経済の新しい柱は何か、という事である。
 はたしてそれは航空宇宙産業なのか、それともロボットやサイバネティクスだけなのか。
 確かにこれらはお家芸には違いないが、いずれにせよそれが工業界オンリーだとすれば、後発国が同じ道を目指したところで、白モノ家電や液晶テレビと同じ末路を辿るだらう。これだけで『よりよき未来』が担保されるとは到底思えない。
 かねてから私は、我が国唯一の発展途上産業として、本格的な外国人観光客誘致政策がまだ残されている事を多方面に呼びかけてきた。何しろ43兆円産業である。そして、そのコンテンツとしては他所の国にはない独自性から『地域文化とそれに伴う歴史観光』としてきた。だが、歴史上の人物にも客観的に見れば優劣もあり序列もある。伊勢海老にしても伊勢湾だけに居るとは限らない。つまり、唯一無二の地としての国際的評価を三重県が得るのには、これらだけではまだまだ競争倍率が高いと言わざるを得ない、という事である。

【ならば他には国際的に有名な映画の招致しかない】

 タイのプーケットは、1973年にこの映画の撮影隊が入る迄は誰も知らない島でした。
 また、セントソフィア寺院、イグアスの滝、熊野那智大社、メテオラ山、水の都ベニス、タージマハルといった世界遺産もこの映画のシリーズの舞台となっています。そして新シリーズ3作目、通算23作目にして50周年記念を飾る最新作では、産業遺産である長崎の軍艦島が敵のアジトとして登場しています(長崎県フィルムコミッション様ごくろうさまです。でも設定上はマカオ沖なので集客効果は余りないかも知れません。シリーズ第10作目に於ける沖縄の水中ロケの時もそうでした。誰も知りません)。
 つまり三重県には、この映画の原作者であるイアン・フレミングが、来て、見て、聞いた通りに書き留めたコンテンツが、まだそっくりそのまま手付かずで残されており、これがそのまま国際フィルムコミッション・コンテンツになるという事です。
 この事は、若者の興味を喚起するのみならず、三重を世界に知っていただく為のきっかけづくりになってくるという事です。

[フィルムコミッション案007 2012]

目的

 国内外からの観光客誘致。恒久的な観光産業の活性化と持続的な雇用環境の改善をはかる。

内容

 海外ロケ隊の誘致。近年、英国の007シリーズのリメイクがスタートし、最近ではイアン・フレミングの原作第一作Casino Royalとその続編も製作されたが、日本が舞台となっているYou Only Live Twice (邦題『007号は二度死ぬ』早川書房)も、1966年-67年に一度映画化されたきりである。
 だが、当時のものは原作者の詳細な取材旅行に基づいた三重県コンテンツである伊勢湾フェリー、鳥羽の旅館、伊勢海老の活け造り、御木本幸吉の像、真珠、外宮、和田金牧場における松阪牛の肥育のくだり、伊賀と甲賀忍者と城、芭蕉の句が全てカットされてしまっている。
 これは、製作者と監督がチャーターヘリで日本の海岸線をくまなくロケハンしたものの、とうとう原作にあるスペクターのアジトである海に囲まれた城(鳥羽城)が分からなかった事から、ストーリーの大幅な書き直しに至った為である。
 本案は、リメイクにおけるロケ隊の誘致と、現代的にアレンジされつつも原作内外の三重県コンテンツを最大限盛り込む事により、国際的な興行力をもって恒久的なインバウンド・コンテンツせしめ(前例 プーケット島)、世界を相手とした三重の観光産業の活性化と、持続的な雇用環境の飛躍を意図するものである。

事業背景

①現在Danjaqでは、新作Skyfallのクランクアップにつき、次回作の検討段階にある。
②ソフトコンテンツの輸出により、海外におけるジャパンコンテンツへの関心が格段に向上している。
③我が国における海外からの映画のロケ隊来日は年に1度あるかないかの状況。ロケハン後、昭和41年7月29日から9月13日まで滞在したロケ隊は、秋目、霧島、神戸港、姫路城、那智大社、蔵前国技館、ホテルニューオータニ他をまわり、内外200人もの報道陣を引き連れていたとの記録あり。

テーマ

 三重県経済も、
 You Only Live Twice:
 Once when you are born
 And once when you look death in the face.

 After BASHO(Japanese poet 1643-94)

競合状況

 欧米市場からみるとオリエンタリズムの点で韓国、中国と競合。

独自性

 海、山、城、文化、世界遺産、食文化とコンテンツ豊富。

優位性

 日本の真ん中。紀伊半島は関西国際空港と中部国際空港とのアクセス至便。

将来展望

 商品タイアップや記念館等、二次的利用も見込める。(例 007せんべい等)

市場

 国内と映画公開国。

準備

①Danjaqへの情報提供。
②紀伊半島文化東西導線の確立。
③官民合同で受け入れ態勢づくり。(通訳、通行規制、宿舎手配、エキストラ手配、風評対策)

④海外メディアへの情報リリース。

課題

①英国には自国産業の保護政策により、海外スタジオの使用はない。
②費用対効果の算出システムの構築。
③地名の国際化。
④観光庁のスクリーンツーリズム(ロケハン支援100万円、ロケ隊誘致500万円)事業は継続するのか。韓国、中国、台湾、香港だけでなく欧米圏も対象とはならないのか。

11/10夕刊三重掲載のオリジナル【氏郷まつり2012】

 例年、文化の日は晴れの日が多かったのですが、今年の11月3日は暗雲立ち込める一日となり、強風の上に気温も低く、昨年と比べると人出の方も若干少ないように感じました。外宮前の『三重県観光キャンペーン』から駆けつけてくれた紀北町観光協会や、『高虎楽座』と掛け持ちでご参加いただいた津市観光協会によりますと、伊勢も津も同じような天候だったそうです。どうも過去の気象パターンは、あまり参考にはならなくなってきたようで、そういえば磁場反転の途上にある太陽活動が、周期的に弱まる時代に来ているとの報道もありました。相次ぐ大型台風に突風や竜巻、そしてニューヨークを襲ったスーパーハリケーンもそうなのですが、この事は、突風で支柱ごと吹き飛ばされた仮設テントを目の当たりにして、より身近に感じた次第です。
 さて今回の『地域交流ブース』への参加は、いつもの似顔絵おじさんに、津市さん、紀北町さん、大宇陀さんとなりました。特に町村合併前の1990年に大宇陀町の教育委員会が発行した『宇陀松山城跡発掘調査成果』と同城の虎口調査を記した『大宇陀文化財ライブラリー』を携えた元会長さんはお孫さん連れでのご来松。残念ながら今回は、鳥羽市さんといつきのみやさん、奈良県さんは地元イベントと重なって不参加となりましたが、そのぶん紀北町の『きーほくくん』が、子供達の人気を一身に集め、会場狭しと飛び回っていました。
 ところでこの文化の日は、住民を対象としたおまつり日としては最適な日なのですが、文化観光経済にとっては疑問の多い日だと思います。何しろ多くの自治体では歴史や文化関連のイベントが行われて他所を見に行く暇(いとま)がなく、各地各々のミュージアムでは特別展なども開催されています。それだけに市外からのお客さんに、全国数多の選択肢の中から松阪を選んでもらえる確率も否応なく下がってしまう日だからです。
 したがって『観光まつり』としての昇華を望むとすれば、肝心かなめの駐車場や誘導プランといった交通政策や、団体
集客の為の前宣伝期間を設けると同時に、開催日程の方も再考を要する事になると思います。
 普通このような方針転換は、住民減少や歳入不足などでまつりの存続が危ぶまれるようなきっかけを必要としますが、あらかじめ市場を把握しておき布石を打っておけば危機に陥る前に転換が可能です。
 これこそが本当の『観光計画』だと言えます。

11/15夕刊三重掲載のオリジナル【地域ジャパネスクの衰退】

 厚労省によると、2011年の旅館件数は4万6196軒。
 前年と比べますと710軒ものマイナスです。
 帝国データバンクも、震災発生から10/26までの595日間におきた震災関連倒産の内、最も軒数が多かった業種は旅館・ホテル業としています。しかしその数は僅か61軒とし、その理由も前年比(2010年)マイナス30%となった外国人観光客の減少によるものとしています。どうやらこれは、直接的な震災関連の倒産と認められたものだけのようです。
 思い出してもらいたいのですが、政府観光局の数字によると2010年の外国人観光客数は861万1500人で、2011年は621万9300人となり、確かに大きく落ち込んではいます。しかしその差は僅か239万2200人しかなく、これは東京スカイツリー半年間の入り込み数とほぼ同程度の数字に過ぎません。
 むしろ問題視すべきはこの年の日本人海外旅行者数の方であり、その数は前年を35万人上回る1699万3000人もいた事です。この旅行市場の海外流出のおかげで、いわばJALは早期再建を果たしたとも言えますが、同時にこの事は、帝国データバンクの間接被害理由の項目で最も回答数が多かったとする『消費マインドの低下』については、説得力を欠くと云わざるを得ません。なにしろテレビは『円高メリット』をしきりに喧伝し、日本旅行業協会も2011年4/11付朝日新聞朝刊の全面広告で、元気な日本をアピールするため海外旅行を促進しますとの宣言を謳ってもいたのですから。
 つまり、国交省と財務省の『戦術』勝ちという訳で、そのしわ寄せは観光庁と地域観光業界が受けたといっても過言ではないと思います。
 その結果、2011年の主要旅行業者59社の取扱高は6兆490億3639万7000円となり、未曾有の災害年であったにもかかわらず前年対比も僅か5%のマイナスに留まりました。しかも前年比プラスの大手旅行会社が29社もあります。
 200人を解雇して9月に休業した『ホテル百万石』や、年明けに閉鎖が決まった『琵琶湖温泉紅葉』に続き、今月は三重でも老舗旅館の一つが暖簾をたたみました。
 こうやって一つまた一つと廃館が増えますと、どうしてもその地域のイメージダウンになってしまいます。今や、先進国、発展途上国問わず外貨獲得には外国人観光客が不可欠なのですが、それだけに国際ランキング30位の日本にも、いずれはインバウンドの全盛時代が訪れると仮定しても、こうもジャパネスクの衰退ペースが早すぎますと、果してそれに間に合うのかどうかさえ疑問に思う次第です。
 
【儲ける事を考えましょう】

 昨年12月に、無責任に原発事故収束宣言を出した野田政権が、これまた無責任に解散した。
 おかげで、被害の矮小化を意図していたとしか思えないような情報も、少しずつではあるが報じられるようになってきた。衆院解散で報道のたがでも外れたのだろうか。
 たとえばNHKの指摘を受けた東電は、11/19になって3/15から4/3にかけての未公表データの公開を始めた。そこにある毎時80マイクロSVの数字は脅威であるが、おそらくこれは更なる国の支援の追加を求める為でもあるのではないかと思う。11/8の中日新聞によると、13年から14年までの中期経営計画では10兆円超が賠償と除染に必要との事。「一企業だけでは到底対応しきれない規模」との東電側の主張も報じられている。
 また同じ19日には、福島県が住民の被曝検査に際し、尿検査を求める内閣府の意向に反しガンマ線しか測れないWBC検査に固執してきた事も報じられた。こちらは毎日新聞による先月からの続報でもある。
 目下のところ議員諸兄は、政策もそこそこにして数合わせに忙殺されているようだ。だが、そこには消費税を上げたり借金を重ねる事よりも、国家事業で儲けようという政党は殆どない。にわか人気のあの政党ですら消費税11%だが、これでは財源不足を理由に、安心安全が蔑ろにされる懸念はいつまでたってもも拭えない事だろう。
 はたして年43兆円の外貨収入が見込めるインバウンド産業に、日本だけが着手できない本当の理由は何なのだろうか。単に産業構造の問題だけなのだろうか。日本の観光ランクは先進国中最下位で、後進国からも追い越されたままなのだが、これは異常な事なのではないのだろうか 。

【遷宮効果って?】

 前々回の第60回式年遷宮は1973年、昭和48年の事でした。当時の三重県商工労働部観光課が作成した三重県への年間入り込み数によりますと、この年の前年比は13.4%のアップ、人数にして351万1000人の増加となっています。
 ところが前回の1993年平成五年の第61回式年遷宮年は、増えるどころか前年よりも2万2000人のマイナスとなっています。
 つまり前回の遷宮に関し、大幅な増加をみたと多くが記憶するのは遷宮年ではなく、実はその翌年の平成六年の方です。前年比で514万1000人も年間入り込み数が増えています。
 ただしこれは『三重まつり博94』の351万人と『志摩スペイン村』開業の375万5500人の増加分によるもので、前年にはなかったイレギュラーです。ご存知のように両施設は終日滞在施設ですので、遷宮効果を問うのならばこれを差し引いて考える必要がありますが、そうしますと対前々年比および対前年比ともに、県内入り込み数はマイナスに転じます。平成六年は平成四年に対して214万7000人、平成五年に対して212万5000人のマイナスに転じます。
 この県の統計数字からも、遷宮効果に過度の期待を掛ける事が大変危険だということがお分かりいただけると思います。近隣都市は、おこぼれ狙いよりも独自集客策が必要です。

【JNTO統計から『外国人旅行者入国数』国際比較ランキング】

震災前2010年 上位30

1位〜10位 フランス7680万人、米国5974.5万人、中国5566.5万人、スペイン5267.7万人、イタリア4362.8万人、英国2813.3万人、トルコ2700万人、ドイツ2687.4万人、マレーシア2457.7万人、メキシコ2239.5万人

☆この年のフランス人口は6074.2万人ですので、人口以上の観光客が来ている勘定になります。

11位〜20位 オーストラリア、ウクライナ、ロシア、香港、カナダ、タイ、ギリシャ、エジプト、ポーランド、マカオ

21位〜30位 オランダ、サウジアラビア、ハンガリー、クロアチア、モロッコ、シンガポール、デンマーク、韓国、スイス、日本861.1万人

【旧基準 三重県商工労働部観光課資料から『観光入り込み数』】

1970年 昭和四十五年 2371万8000人    
1971年 昭和四十六年 2498万3000人
1972年 昭和四十七年 2620万3000人
1973年 昭和四十八年 2971万4000人 式年遷宮 
1974年 昭和四十九年 3074万0000人
1975年 昭和五十 年 3028万0000人 三重国体

【9月の主要旅行業者取扱状況から】

 好調だった全国主要旅行業59社の海外旅行取扱高が、ダブル領土問題を受けた9月に急減速をみせた。
 辛うじて前年並みをキープあるいは微増となったのは僅かに12社。残る47社は軒並みマイナスであり、10月は更に悪化の見込みだとの事。
 特に二割以上の減少幅を見せたのがジェイティービーの前年対比12.8%(つまりマイナス87.2%)、ANAセールスの77.3%、クラブツーリズムの73.6%、日本通運の74.2%、読売旅行の68.5%、KNTツーリストの76.6%、東武トラベルの73.8%、阪急阪神ビジネストラベルの77.4%、内外航空サービスの48.7%の9社。
 これにより減少幅の大きいエージェントが、中・韓への依存が特に高かった事が浮き彫りになると思いますが、昨年破綻したアメリカン航空とは違い、未曾有の大災害の中にあっても計画通りの早期再建を果たす事ができたJALにとっては、神様のような会社であると言えます。
 しかしこれが日本旅行業協会が震災直後に掲げたスローガンの一つ『日本を元気にする為に海外旅行を促進します』の真意だったとすれば、窮地にあった国内観光地は大いなる矛盾の中にあった事になります。
 震災による出控えや、不景気による買い控えで仕方がなかったと思っていたあなた、昨年一年間の日本人の海外旅行者数を覚えていますか?(バックナンバーを御参照くださいませ)

2012.1201

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O.H.M.S.S.
(大宇陀・東紀州・松阪圏・サイトシーイング・サポート)
代表 井村茂樹

【宇陀松山城レポート2012.1129】 Uda Matsuyama Castle report 2012.1129

 豊臣政権下(天正13年-慶長8年)に『大和郡山城』と『高取城』と共に大和国支配の要であった『宇陀松山城』は、元和元年に廃城。『松坂城』と同じくこちらも『国史跡』に指定されています。9/12に来た時に下調べをしておきましたので、今回はその登坂です。

"Uda Matsuyama Castle" in Toyotomi regime era (1585-1603) was a defense bases of "Yamato Province", along with the "Takatori Castle" and "Yamatokoriyama Castle". the abolition is 1615.
This castle ruins has also been designated as "country historic sites" similar to "Matsusaka Castle".
This time, I have came in order to climbing. this was preliminary inspected already on September 12.

『史跡宇陀松山城』の石碑の立つ『春日神社』右手の登り口から、人ひとり分の幅しかない登り口に差し掛かりますと、そこには丸木の手摺りと階段が有って、初めての訪問者でも取り敢えずは登ってみようとの気にさせます。[写真①②③枚目]

"Historic sites Uda Matsuyama Castle" monument stands near the "Kasuga Jinja (Shrine)". The trailhead is the left side. Its width is minute only of one person. there is made log stairs and handrails. So, looks at relatively easy to climb even for beginners.  [Photos ①②③]

 しかし、ものの5分も登りますとその手摺りは無くなり、斜面も急坂となって、あとはもうひたすら鬱蒼とした林の中の登坂となります。その行く手は蛇行と薄暗がりで殆ど先が読めず、降り積もった濡れ落葉も足元をすくおうとします。杖が必要かも知れません。[写真④⑤枚目]

However there is no longer this handrail in the place that walk about 5 minutes. slope also becomes steep slope. and, then will be to climb between the dense vegetation. this road will not be able to almost look-ahead for dim meandering. foot is about to slip in wet fallen leafs. might be better to have prepared a cane. [Photos ④⑤]

 ですが、麓から約半時間の地点に差し掛かりますと突然目の前が開け、『虎口』西側の石段に遭遇する事ができます。ここまで来ますと『本丸御殿』のあった頂上はもう少しの所です。[写真⑥⑦⑧枚目]

But, my visibility is opened at the point where come to about Half an hour from the starting point suddenly. this is the stone steps of west side "koguchi". is a little more to the top if came up here. "Honmaru Castle" stood in the here. [Photos ⑥⑦⑧]

 されど、風雨にさらされ切り立った斜面はここから更に急となり、息も絶え絶えともなれば、手摺りの代わりに張られた細いロープだけが頼りの登坂となります。そうやって私が標高473メートルの本丸跡から撮った天守跡のシルエットには、何やら柱のようなものが数本。[写真⑨枚目]

That said, steep slopes that have been exposed to the wind and snow, become more steep from here. shortness of breath was followed. because is high altitude. the altitude 1568.24 feet. thin rope is the only support is provided on behalf of the handrail. as a result, silhouettes of pillars several on the top of the mountain castle that I have taken. what are these? [Photo ⑨]

 奈良県の文化財保存課に訊ねてみたところ、これは山の所有者がむかし建てた展望台の名残だそうで、ゆくゆくは撤去の予定との事でした。
 なお、松阪市の『松坂城』もそうなのですが 、国史跡ともなりますと、正確な図面や写真でもない限り、どの時代のものとするのかも含め、再建再現は難しいとの事。整備は継続すると申されていました。

According to the Nara Prefecture's cultural heritage preservation Division, This was the wreckage of the viewing platform the owner of the mountain was built. it will be removed someday.
In addition, When becomes the country historic sites, was that the Reconstruction or Reproduction becomes difficult if do not have the exact drawings and photos,  including may choose the era of any. Mie Prefecture Matsusaka's Country historic sites "Matsusaka Castle " is also the same conditions. development was that to continue.

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O.H.M.S.S.
(大宇陀・東紀州・松阪圏・サイトシーイング・サポート)
代表 井村茂樹

 

再録【中部国際空港⇦⇨関西国際空港サイトシーイング導線】The sightseeing conduct route of between in the Chubu Centrair International Airport with the Kansai International Airport

 2010年には、二つの大きなツーリズム・イベントがあった。一つは、中国が国家の威信を賭けた『上海万博』。もう一つは、日本の国のはじまりを祝った『遷都1300年祭』だ。Ohmssではその前年の秋より1300年記念事業協会の広報を本格的にサポート、明けて二月には『中部国際空港』で、奈良と一緒にプロモーション・イベントを2日間にわたり開催した。空港調べによると、来場者は初日が3万1000人、二日目が3万6000人。我々は中部メディアが広告を控えたこのビジネスを、広く知らせる事ができた。
 これは、その際に事業課長に提案した、中部国際空港と関西国際空港間のサイトシーイング導線の企画素案である。その背景には、関西圏と中部圏との間の情報障壁がある。

In 2010, there were two the major tourist events. that one is the "Shanghai Expo" the China had been betting the national prestige. the other one is the "Capital relocation 1300 festival" that celebrated the beginning of Japan's national.
In Ohmss, supported earnest the public relations of the "1300 anniversary business association" than fall of that previous year.  February of new year, we held for two days a promotional event together with Nara in Chubu Centrair International Airport. according to the airport's examined, visitors of first day is 31000 people, the second day is 36000 people. We were able to be advertising this business, which the chubu media has refrained from advertising.
This is the planning draft of the sightseeing conduct route of between in the Chubu Centrair International Airport with the Kansai International Airport I've  pass to the business manager those days. It the background, there is an information barrier between the Kansai region and the Chubu region.

 

『中部国際空港⇦⇨関西国際空港サイトシーイング導線』
                            2010年5月10日

  目的 ①国内及びアジア圏の客層については『歴史街道導線』としてのサイト紹介
     ②欧米系およびアラブ系インバウンド導線としては、中部国際空港⇨関西国際空港間の『紀伊半島縦断エキゾチズム観光導線』としての確率化。

  概要 中部国際空港とエアポートラインでつながる津市・松阪市を東からの登竜門として、伊賀圏ではニンジャ、津・松阪圏ではマツサカウシ、東紀州はエキゾチズムを中心とした食文化や歴史、文化を紹介、日本の古代文化圏である奈良市をディスティネーションとして位置づけて紀伊半島を東から西へと縦断するサイトシーイング・コースを提案。

事業背景 国策としてのインバウンド集客の推進と空港間の囲い込み競争の激化。

 テーマ 津/松阪圏⇨奈良⇨大阪 街道広域地域間跳躍連携。

競合状況 羽田空港のハブ化によるインバウンドの関東圏一極集中見込み。

 独自性 民間の知識と経験で地域間の特徴をクローズアップ、テーマを同調させたうえで、インバウンド誘導に適切な施設でパブリシティの展開ができる。縦に長い地理的条件を持つ三重県の場合、国道導線でもアクセス可能でインバウンド・コンテンツを有する伊賀市、津市、松阪市、東紀州のみが、民間と各々の都市との連携によって広域観光圏の形成が可能となります。

 優位性 国際空港間の公共交通手段の充実と、2泊3日〜4泊5日に適している。

将来展望 導線上におけるインバウンド向けサイトの拡充。

事業特徴 街道ネットワークの構築による相互送客システム。

  市場 紀伊半島の中心、つまり街道ターミナル機能を有する古都『奈良』を中心に、各街道や自動車導線に沿った各隣接サイト、および中部国際空港と関西国際空港経由の国内外来訪客。

  流通 情報発信としては、ネット集客、あるいはKUのKITやソレックス・インサイトといったメディア媒体、誘導案内経路としては道の駅、観光協会案内所、ドライブイン、観光施設、テーマに該当する博物館などの施設。

  課題 ・関西運輸局管轄である近鉄、中部運輸局管轄のNEXCO中日本高速道路と、三重県は関西圏と中部圏のはざまに位置しています。が、だからといって中部国際空港から海上アクセスを利用して三重県入りまでの理解は得られても、それを飛騨高山および伊勢志摩方面ではなくて、関西圏へと流すなどという事は、20世紀型産業構造が色濃く残る中部経済界の総意を得るのが難しい。したがって連携可能とするエリアは必然的に限定される。
     ・PA、SAなどにおける民間パブリシティの設置規制。
     ・海外へのPR手段の拡充。
                           以上 原文のまま 未翻訳